「ギルド」は1950年代に発足したブランドです。
重くてゴツい、バキっと鳴る、といった特徴が「男性的」と解釈され、支持を集めました。
特に勢いのあった1960~70年代にはマーチン、ギブソンと並んでアコースティックの「三大ブランド」と呼ばれました。
また、工場の移転で北アメリカ大陸を3回横断したブランドでもあります。
今回は、このギルドに注目していきましょう。
森 恵 / 残酷な天使のテーゼ COVERS Grace of The Guitar+ トレーラー(Vol.8)
ギルド女子代表、森恵(もり・めぐみ)女史は、日本人として初めてギルドとエンドースメント契約を締結したアーティストです。演奏技術、アレンジ力、歌唱力、そして美貌に恵まれており、「天は二物を与えず」という格言の信憑性が疑われます。
ギルドの歴史は1952年、ミュージックショップを経営するアルフレッド・ドロンジ氏と、エピフォンの副社長だったジョージ・マン氏によって「Guild Guitar Company」が立ちあげられたことから始まります。
当時のエピフォン社内は、1943年に社長のエピ・スタソプーロ氏が亡くなって以来バタバタしていました。
1951年には長期のストライキが起こり、その後エピフォンはニューヨーク(クイーンズ)の工場をペンシルベニア州フィラデルフィアへ移転します。
この混乱のなかでエピフォンを離れた職人たちを迎え、ニューヨークに新たな工房を構えて立ち上げられたのがギルドだったわけです。
フラットトップもアーチトップもすぐに人気が出て、生産体制を拡大しなければならず、1956年、工場をニュージャージー州ホーボーケンへと移転しました。
移転から10年経過した1966年、ギルドはアヴネット社に買収され、生産拠点はロードアイランド州ウェスタリーへと移ります。
1969年に開催された「ウッドストック・フェスティバル」のオープニングで伝説的なステージを見せたリッチー・ヘヴンス氏がギルドのD-40を使っていたことから、ギルドの注目度は一気に上がります。
多くのミュージシャンがギルドを手に取り、ギルドは「三大ブランド」の一角と呼ばれました。
Richie Havens Sings “Freedom”
フォークシンガー、リッチー・ヘヴンス氏は、親指で押弦する独特のスタイルを持っています。ウッドストックの現場は、交通渋滞のせいでヘヴンス氏の次がまだ到着していない、という修羅場でした。氏は次の出演者が来るまで、ステージを引っ張るのを余儀なくされました。観客からのアンコールに恵まれつつ、持ち曲を全て使い果たし、最後の最後で即興的に歌ったのがこの「フリーダム」です。
1995年にはフェンダーがギルドを買収、ウェスタリー(東海岸)の工場は2001年にカリフォルニア州コロナ(西海岸)へと、また2004年には同じ西海岸のワシントン州タコマへ、2008年にはコネチカット州ニューハートフォード(東海岸)へと移ります。
2014年にはクラシックギター/ウクレレ大手、コルドバ社がギルドを買収、工場はカリフォルニア州オックスナード(西海岸)へと移動し、2015年末から生産を始めました。
2023年にはヤマハ・ギター・グループがコルドバ社を買収し、ギルドはヤマハグループの一員となっています。
現在ではハイエンドモデルをUSA工場で作り、低価格モデルは全てアジアの提携工場で作っています。
国内ではヤマハミュージックジャパンが取り扱っています。
Goo Goo Dolls – Iris [Official Music Video] [4K Remaster]
この曲「アイリス」は、ニコラス・ケイジ氏主演映画「シティ・オブ・エンジェル」にて挿入歌として使用され、グーグードールズ最大のヒットとなりました。
ギルドのギターには「ゴツい」「いかつい」といった硬派なイメージがあります。
これは1960~70年代のギルドが、まさにそういう楽器だったことに起因しています。
直線や鋭角を多用した意匠に加え、アーチバック機ではバックに合板を使い、ブレーシングはスキャロップしない、という頑丈で重たいギターだったのです。
特に70年代以降は工法の改定によって、その頑丈さが跳ね上がったと言われています。
頑丈なギターは新品状態だとまだ渋い鳴りですが、弾き込んでいくにつれて力強い音が豊かに響く素晴らしい楽器へと成長します。
コレがギルドの魅力でした。
とはいえ現代では、新品の時点である程度の鳴りが得られることが求められています。
現代のギルドではそうしたことからブレーシングにスキャロップを入れ、またサイド&バックに単板を使用するなどのアレンジで、現代の感覚で受け入れやすい、軽くて鳴りの良いギターもリリースしています。
ギルドは1950年代、エピフォンを離れた職人たちが作るブランドとしてスタートしました。
それゆえギルドのギターは、エピフォンで見られる都会的な雰囲気を受け継いでいます。
ギルドのルックス上の特徴を見ていきましょう。
OM-240CE:ヘッド
ギルドのロゴは縦の線が並ぶような、大変印象的なデザインです。
このロゴが好きでギルドを選ぶ人もいます。
この平行な直線を利用したクッキリとした意匠は、50年代におけるアメリカのデザインの特徴だといわれます。
ヘッドロゴの直下に輝く「ピーク&シールド」インレイも、ギルドの象徴です。
逆三角形とギルドの「G」を組み合わせたシンプルさですが、印象に残りやすい、たいへん秀逸なデザインです。
現在のラインナップではメイドインUSAの55系と512系でのみ採用される、最高グレードを象徴するアイコンとなっています。
D-40E:ピックガード
大型の「D」と「F」では、ブリッジとピックガードのデザインが特徴的です。
ダウンベリー型のブリッジは、ふくらみ部分の両脇にツノを持つ、他とは違う形状です。
また、ピックガードはボディ外周を意識するかのような、ヘッド側が張り出した形状です。
これらはシンプルでありながら印象的で、ギルドを象徴するデザインとなっています。
合板をプレスしてアーチ状に仕上げたバック面「アーチバック」は、ギルドUSAの「F-55E Maple」「F-512 Maple」、ウェスタリー・コレクション200番台、そして「Travel」で見られます。
ギルドはジャズ用のアーチトップからスタートしており、そのノウハウをフラットトップに応用した形です。
しっかり成型されたバック材はそれ自体で形状を保持でき、バック側にブレーシングを必要としません。
そのためバック面が骨組みに邪魔されず大胆に振動し、迫力のあるサウンドが得られます。
この構造はヴィンテージ・ギルドに見られる特徴でもあり、それゆえこの「アーチバック」はかつてのギルドを現代に伝える構造だと言えるでしょう。
DS-240 MEMOIR
ギルドは、ドレッドノート(D)とジャンボ(F)、および12弦が特に支持されたブランドです。
それゆえ定番の「D」およびボディ幅17インチという大型の「F」がギルドの看板で、この2モデルで12弦モデルや木材を変更したモデルなど、バリエーション豊かなラインナップが展開されています。
Guild F-512 Maple Demo by Trevor Menear
サイド&バックにフレイムメイプルを使用した「F-512メイプル」。ギラっとしたギルドのサウンドに12弦のキラキラ感が加わった、力強くも美しいサウンドです。
ギルドの主要4タイプの寸法は、ライバル企業のギターよりちょっと大きめです。
ここで4タイプのボディ寸法をチェックしてみましょう。
アジアで生産される「ウェスタリー・コレクション」200番台の寸法を先に紹介しますが、USAでは若干異なります。
最大幅と最大厚のみのシンプルな比較ですが、有名なギターとも比べてみましょう。
ギルドは総じて、でっかいギターだということが分かりますね。
なお100番台は、OMが幅15 1/4″(387mm)、Fが幅16 5/8″(422mm)と、200番台より一回り小さく作られています。
特にUSAの「F」は、有名メーカーのレギュラー生産機としては世界最大級のサイズです。
DやFでは重量のあるダブルアクションのトラスロッドが使用されることも多く、「デカくて重い」ギルドは健在です。
弦長については、Mが24.75インチ、ウェスタリーのOM、D、Fは25.5インチ、USAのD、Fは25 5/8インチです。
では、ギルドのラインナップを、シリーズごとに見ていきましょう。
歴史のあるブランドだけに現状でかなり膨大ですが、整理して見ていけばだいたい大丈夫です。
なお、モデル名に添えられる「C」はカッタウェイあり、「E」はピックアップ&プリアンプを備えるエレアコ仕様を意味します。
アコースティックギターは、USA工場製の「GUILD USA」、アジアの提携工場で作られる「ウェスタリー・コレクション」の100番台・200番台を軸に、古風なスタイルの「メモワール」、手頃な「300シリーズ」、持ち運びやすい「トラベル」で構成されています。
| シリーズ | ボディシェイプ | トップ材 | サイド&バック材 |
|---|---|---|---|
| GUILD USA 55/512 |
D F |
シトカスプルース単板 | インディアンローズウッド単板 フレイムメイプル(アーチバック) |
| GUILD USA Traditional/Standard |
D F |
シトカスプルース単板 | アフリカンマホガニー単板 インディアンローズウッド単板 |
| GUILD USA 20番台 |
M、D | アフリカンマホガニー単板 | アフリカンマホガニー単板 |
| Westerly Collection 100番台 |
M OM D F |
シトカスプルース単板 アフリカンマホガニー単板 |
ローズウッド単板 アフリカンマホガニー単板 |
| Westerly Collection 200番台 |
M OM D F ジャンボジュニア |
シトカスプルース単板 | マホガニー フレイムメイプル ストライプド・エボニーなど(アーチバック) |
| Memoir | DS(スロープショルダー) | シトカスプルース単板 | マホガニー |
| 300シリーズ | D OM |
スプルース単板 マホガニー単板 |
マホガニー |
| Travel | ミニ・ドレッドノート | スプルース マホガニー |
マホガニー(アーチバック) |
《屹立する、老舗のプライド》GUILD(ギルド)のエレキギターの特徴 – エレキギター博士
南カリフォルニア、ヴェンチュラ郡のオックスナードにあるギルドUSA工場は、2015年末に稼働を始めました。
立ち上げにあたっては、名工レン・ファーガソン氏(元ギブソン・マスタールシアー)がコルドバの副社長として生産を統括しました。
世界中からオリジナル・ギルドの金型やヴィンテージ・ギルドを探し出し、以前の工場から機械を運び込み、最新鋭のシステムも導入することで、名工の積み上げた経験、ギルドの歴史、最新のテクノロジーが融合するギター生産がおこなわれています。
USAのラインナップはM、D、Fに絞られ、カッタウェイモデルもありません。
総単板のモデルが多くありますが、ヴィンテージ・ギルドの例にならって合板を使用するモデルもあります。
近年は、装飾を抑えたUSA製の「スタンダード」シリーズも加わりました。
| モデル | ボディシェイプ | トップ材 | サイド&バック材 | ナット幅 |
|---|---|---|---|---|
| D-55/D-55E | D | シトカスプルース単板 | インディアンローズウッド単板 | 43mm |
| F-512/F-512E(12弦) | F | シトカスプルース単板 | インディアンローズウッド単板 | 48mm |
| F-55E Maple | F | シトカスプルース単板 | フレイムメイプル(アーチバック) | 43mm |
| F-512 Maple/F-512E Maple(12弦) | F | シトカスプルース単板 | フレイムメイプル(アーチバック) | 48mm |
| D-40 Traditional | D | シトカスプルース単板 | アフリカンマホガニー単板 | 43mm |
| D-50 Standard/D-50E Standard | D | シトカスプルース単板 | インディアンローズウッド単板 | 43mm |
| D-40 Standard/F-40 Standard(E仕様あり) | D、F | シトカスプルース単板 | アフリカンマホガニー単板 | 43mm |
| M-20/D-20(E仕様あり) | M、D | アフリカンマホガニー単板 | アフリカンマホガニー単板 | 44.5mm(M)、43mm(D) |
USAの最高グレードとなる55系と12弦のF-512は、ヘッドロゴ直下の「ピーク&シールド」、ロゼッタのアバロンインレイ、そして指板の「Vブロック」といった各インレイの美しさがそれを象徴しています。
スプルース単板トップ、インディアンローズウッド単板サイド&バック、エボニー指板という贅沢な木材構成もあり、最高級機の名にふさわしいスペックです。
エレアコ仕様機には、L.R.バッグス社の最高グレード「アンセム」が備わります。
サイド&バックにフレイムメイプルを使用した「Maple」モデルは、「F」でのみリリースされています。
こちらはアーチバック仕様で、骨組みに影響されない豪快な鳴りが得られます。
「スタンダード」シリーズは、USA製でありながら装飾を抑えたラインナップです。
ヘッドインレイはピーク・ロゴのみ、指板インレイはパーロイドのドットで、エレアコ仕様機にはL.R.バッグス「エレメントVTC」が備わります。
全モデルにハードシェルケースが付属します。
USAの20番台は、ボディのトップ&サイド&バックにアフリカンマホガニー単板を使用、ネックもマホガニーというオールマホガニーのモデルです。
豊かな音量と、低域の整理された軽やかな響きが持ち味です。
ヘッドにはブランドロゴのみ、指板インレイはドット、バインディングなし、という飾り気のない意匠は、素朴さや親しみやすさを演出します。
エレアコ仕様の「E」には、L.R.バッグス「エレメントVTC」が備わります。
「ウェスタリー・コレクション」は、ギルド黄金時代を支えた工場のあるロードアイランド州ウェスタリーにちなんだネーミングです。
アジアの提携工場で生産されることに加え、装飾を抑え、ほぼ全てのモデルでドットインレイ採用という仕様に絞ることで、スペックとは不釣り合いなほどの、手に入れやすい低価格を達成しています。
120、140、150各シリーズを擁する「100番台」は、総単板の上位グレードで、ヘッドロゴ直下の「チェスターフィールド」インレイがそれを象徴しています。
このインレイは「ピーク&シールド」に次ぐギルドの代表的な意匠で、USAのトラディショナル機にも採用されています。
しかしそのネーミングには、煙草メーカー「チェスターフィールド」のロゴに似ているからという、目を疑うような由来があります。
番号によってボディの木材構成が決められていますが、全モデルで指板とブリッジにはローズウッドが使用されます。
エレアコ仕様機には、ギルドとフィッシュマンが共同開発した「GT-1」ピックアップが備わります。
| モデル | ボディシェイプ | トップ材 | サイド&バック材 |
|---|---|---|---|
| D-150CE | D(カッタウェイ) | シトカスプルース単板 | インディアンローズウッド単板 |
| OM-150CE | OM(カッタウェイ) | シトカスプルース単板 | ローズウッド単板 |
| F-150CE | F(カッタウェイ) | シトカスプルース単板 | インディアンローズウッド単板 |
| D-140 D-140CE |
D | シトカスプルース単板 | アフリカンマホガニー単板 |
| OM-140CE | OM(カッタウェイ) | シトカスプルース単板 | アフリカンマホガニー単板 |
| M-120 | M | アフリカンマホガニー単板 | アフリカンマホガニー単板 |
| OM-120 | OM | アフリカンマホガニー単板 | アフリカンマホガニー単板 |
| D-120 D-120CE D-1212(12弦) |
D | アフリカンマホガニー単板 | アフリカンマホガニー単板 |
「150」の「シトカスプルース単板トップ、ローズウッド単板サイド&バック、マホガニーネック」は、鋭い立ち上がりと迫力のある低音を兼ね備える、最高級レベルの木材構成です。
「140」は、シトカスプルース単板トップ、アフリカンマホガニー単板サイド&バック、マホガニーネックという構成です。
120番台との違いはトップ材で、この影響で勢いのある立ち上がりが得られます。
「120」は、トップ&サイド&バックにアフリカンマホガニー単板を使ったボディにマホガニーネックを挿した、オールマホガニー仕様のラインナップです。
「オープンな鳴り」と称されるマホガニーの軽やかなサウンドを、各タイプで楽しむことができます。
「ウェスタリー・コレクション」の200番台は、サイド&バックが合板となり、バック面にアーチを設けた「アーチバック」仕様のラインナップです。
コストパフォーマンスに優れていますが、この価格帯だからこそ可能な実験的なモデルもあり、選ぶ楽しさがあります。
また、そもそもギルドは合板の重くて頑丈なボディで名を馳せたブランドです。
それゆえギルドというブランドを気に入った人が、胸を張って抱えるべきグレードだと言えるでしょう。
全モデルがエレアコ仕様で、M-240E Troubadourを除き、ギルドとフィッシュマンが共同開発した「GT-1」ピックアップを備えます。
トップ材は全モデル共通でシトカスプルース単板です。
| モデル | ボディシェイプ | サイド&バック材 |
|---|---|---|
| M-260E Deluxe | M | ストライプド・エボニー |
| F-250E Deluxe/F-250CE Deluxe/F-2512E Deluxe(12弦) | F | フレイムメイプル |
| F-2512E Maple(12弦) | F | メイプル |
| Jumbo Junior Mahogany/Jumbo Junior Reserve Maple | ジャンボジュニア | マホガニー/フレイムメイプル |
| F-240E/D-240E/OM-240E/OM-240CE/M-240E | F、D、OM、M | マホガニー |
| D-240E Limited Flamed Mahogany | D | フレイムマホガニー |
| BT-240E(バリトン) | F | マホガニー |
| BT-258E Deluxe(8弦バリトン) | F | ローズウッド |
ウェスタリー・コレクション「デラックス」は、サイド&バックの木材に変化を付けた、バリエーションモデルです。
こちらもバック面にはアーチがかけられた「アーチバック」仕様です。
スプルース単板トップ、マホガニー合板サイド&バックという木材構成が基本ですが、違った木材を使用するモデルもあります。
「伝記(Memoir)」を冠する「メモワール」は、1930年代の楽器をイメージした古風なスタイルで仕上げたラインナップです。
ヘッドロゴも古風なスタイルが採用されています。
30年代にはまだギルドはなかったのですが、そういった遊び心も楽しめるモデルです。
「300シリーズ」は、ギルドのアコースティックを手頃に楽しめるラインナップです。
単板トップにマホガニーのサイド&バックを組み合わせ、ヘッドにはニッケルのピーク・ロゴ、ボディには黒のバインディングを備えます。
番号の「320」はマホガニー単板トップ、「340」はスプルース単板トップを意味し、ギグバッグが付属します。
ピックアップは全モデルとも搭載していません。
| モデル | ボディシェイプ | トップ材 |
|---|---|---|
| D-340 | D | スプルース単板 |
| OM-340 | OM | スプルース単板 |
| D-320 | D | マホガニー単板 |
| OM-320 | OM | マホガニー単板 |
ギルドのアコギを…
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