アコースティックギター初心者向け入門講座

YAMAHAの「サイレントギター」ってどんなの?

サイレントギター

自宅でのギター練習には、「音の問題」が付きまといますね。エレキならまだしもアコギで深夜は練習できないし、夜間でなくても家族に迷惑がられることもあるでしょう。逆に、自分の練習を聞かれたくないと言う人もいるでしょう。スポンジを利用した「消音器」や音量が小さくなる特殊なピックなどのグッズはかなり有効ですし、エレキギターに持ち替えて弾くのもまあまあ有効ですが、抱え心地や弾き心地、ピッチ感やタッチのニュアンスでかなりの違和感を感じる、と言う人も多いですね。こういう厄介ごとの解決策として発明された、

  • 周りには聞かれず、
  • 自分には良い音が聞こえ、
  • しかも通常と大差ないフィーリングで練習できる、

そんなギターがYAMAHA の「サイレントギター」です。今回は、練習用としても本番用のエレアコとしても使える、便利なサイレントギターに注目していきましょう

YAMAHAの「音の問題」への取り組み

「周囲に気兼ねなく音楽を楽しみたい」という演奏者の望みに対し、YAMAHAはいろいろな形で応えています。音量を落としたり無音化したりする楽器/器具としては、

  • ギター(ナイロン弦、スチール弦)
  • 弦楽四重奏(ヴァイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバス)
  • ピアノ(及び、通常のピアノをサイレント化するユニット)
  • サイレントブラス(消音装置)

がリリースされており、このほか防音室や調音パネルといった大規模なものまで開発されています。これらの製品は、周囲への心配なく練習したい人にとっても、ライバルよりもたくさん練習したい人にとっても、たいへん心強いパートナーとなるでしょう。

サイレントギターの特徴

では、サイレントギターがだいたいどういうものなのか、その主な特徴をチェックしていきましょう。

「通常の1/10」と言われる静粛性

「サイレント」と自称するくらいで、サイレントギターは楽器の生音が大きくならないようにできています。本来アコギの音がでかいのは、弦振動をボディに共鳴させて増幅するからです。これに対してサイレントギターはボディをトップもバックもない、フレームだけにして、共鳴する部分を排除した設計です。ボディ中央部にも共鳴用の空洞は設けない、という徹底ぶりで、弦をはじく音しかしません。


Yamaha SLG200 Silent Guitar Demo – Feel the Silence
YAMAHA代表機種とサイレントギターとの、生音での聞き比べ。本当に小さな音ですね。これなら何の心配もなく夜遅~~~くまで練習できそう。

リッチな音で練習できるピックアップシステム

サイレントギターは楽器の生音を増幅しない、ヘッドホンやケーブルをつないで演奏するギターです。「共鳴胴のないアコギの音なんて、ヘッドホンにつないだところで良い音のはずがない」というのは常識的な正しい考え方です。しかしピックアップシステムに組み込まれている「SRT」は、

  • 響きの良いスタジオで、
  • とてもグレードの高いギターの音を、
  • 高品質なマイクを使って、

録音したサウンドを再現し、骨組みだけのギターでは本来あり得ない豊かな響きを作ることができます。この音をヘッドホンで聞いたり、ライブ会場に流したりできるわけです。SRTについては、当サイト記事「ヤマハのエレアコについて」を参照してください。

普通のエレアコに搭載されているSRT(System 63)は、いろいろ操作できる多機能な設計です。サイレントギターに内蔵されているSRTはこれをキュっと絞った比較的シンプルな設計ながら、エフェクターやAUXを追加することで気持ちよく練習できるようになっています。電源は手に入れやすい単三乾電池か、別売のACアダプターでコンセントから給電できます。

場所を取らず、軽い

ギターは音の問題のほかに「置き場所の問題」に悩む、という人も多いいことでしょう。サイレントギターの本体は普通のアコースティックギターより薄く、しかも低音側のフレームを外してコンパクトに収納することができます。フレームはネジで固定するので、不意に外れてしまうこともありません。また、本体の重量「約2.1kg」は、他の追随を許さない圧倒的な軽さです。「軽いから壁のフックに吊るす」という大胆な収納法を採用するユーザーもいるようです(あくまでも自己責任で!)。

なお、付属のケースはフレームを外して収納するように設計されています。持ち出すたびにいちいちネジを回して着脱するのを面倒に感じる人は、エレキギター用のギグバッグなどを利用するといいでしょう。

普通のギターとして扱える

サイレントギターは特殊な楽器ではありますが、演奏はもとより調整やメンテナンスも普通のギターと同じようにできます。ボディはフレームだけでできていますが、1弦側にフィンガーレスト(指置き)がついているので、ボディトップに指を置いてピッキングするという奏法にも支障がありません。カッタウェイもあるので、高音を攻めるプレイが可能です。

また、ペグ、ナット、ブリッジは普通のギターと同じで、トラスロッドも備わっています。よって、普通の弦を使い、弦交換や弦高調整などの手順も普通のギター同様に行うことができるのです。


Yamaha Silent Guitar – Mike Stern
数々の伝説的なセッションを成功させてきたマイク・スターン氏。この動画でちょろっと見せるリードプレイでは、右手の先がフィンガーレストに触れているか触れていないかという感じです。ピックを使用した演奏では、フィンガーレストの存在は非常に助かります。

サイレントギターの使い方

サイレントギターにはステレオイヤホンが付属しますから、すぐにそのサイレントぶりと音の良さを体感できます。ではどのように使うのか、電気系についてチェックしてみましょう。機械が苦手な人にとってはうんざりするところかもしれませんが、サイレントギターの操作盤はポイントを絞ったコンパクトな設計になっているので、頑張ってついてきてください。

ツマミがいっぱい並んでいるが・・・?

コントロールパネル(操作盤)にはいくつもボタンやツマミが並んでいますが、カンタンなところから使い方をチェックしていきましょう。

1)電源と音量

ひとまず「電源」ボタンと「VOLUME(音量)」ツマミだけ把握しておけば、他は見なくてもひとまず大丈夫です。イヤホンを挿して電源入れて、音量を整えたらもう弾けます。「TUNER(チューナー)」ボタンでチューナーを起動/停止します。他の機能のことは、あとから順番に覚えていけば大丈夫です。

2)SRTとエフェクター

音量と同様の大きなツマミを把握しましょう。このふたつのツマミが使えれば、サイレントギターの機能を深く体験できます。

  • BLEND(ブレンド):「ピエゾピックアップの音とSRTの音とのブレンド量を調節する」という小難しい説明はしなければならないのですが、「硬い音や柔らかい音にする」と思えばだいたい大丈夫です。
  • EFFECT(エフェクト):一個のつまみでREV1(リヴァーブ1。Room)、REV2(リヴァーブ2。Hall)、CHO(コーラス)を切り替え、かかり具合まで操作します。エフェクトのかけ具合により、弾いた時の気持ちよさを増強できます。なお、ツマミ一個で操作するシンプルな設計ですから「コーラスとリヴァーブを同時にかける」といった追い込んだ使い方は想定していません。

3)イコライザーとAUX

小さなツマミまで把握すれば、もうサイレントギターを使いこなしています。面倒くさければ、TREBLE(トレブル)とBASS(ベース)は12時(真ん中)、AUX(オックスまたはオークス)はゼロ(左へ目いっぱい)で十分です。

  • TREBLEとBASS(イコライザー):高音域、低音域の量を増減します。音のキレや迫力が変わります。
  • AUX:ボディ高音弦側にある「AUX IN」から入ってくる音の音量をいじります。

【使い方その1】静かに、しかし良い音で練習する!

サイレントギターの真骨頂は、音量を気にせずに練習できることです(もちろん歌う場合は注意が必要)。ヘッドホンで自分だけがギターの音を聞くことができ、またAUXを利用すればメトロノームや音楽を聴きながら練習できます。電池は20時間ほど持ちますが、日々の練習で使うとなると、熱心な人ならば数日で電池交換することになります。充電式乾電池か、別売のACアダプターの利用がおすすめです。

【使い方その2】優秀なエレアコとしてライブで弾く!

サイレントギターはエレアコとしても大変優秀です。なにしろ共鳴胴を持たないので、ハウリングに悩まされる懸念がほぼありません。ひじょうに軽いので立って弾いていても疲れにくいというのも大きなメリットで、リー・リトナー氏やブライアン・メイ氏(QUEEN所属)ら超一流のプレイヤーがライブで使用した実績もじゅうぶんうなずけます。アウトプットジャックにシールドを差し込んだら電源が入る、チューナーを起動すると音が出なくなる、というところは一般的なエレアコと同じ使用感です。


Yamaha SLG-200 – Musikmesse 2015 – EN
普通のエレアコと比べても遜色ない、恐らく同価格帯でコレより良い音はなかなか見つからないだろうと思われる演奏。ボディが薄いので、特に立って演奏する場合には、いつものギターとは少し勝手が違うかもしれません。しかしふだんエレキギターを弾いている人にとっては、とても弾きやすく感じるギターです。

サイレントギターのラインナップ

では、サイレントギターのラインナップをチェックしてみましょう。現在、

  • SLG200NW(ナイロン弦。標準的なネックのクラシックギター)
  • SLG200S(スチール弦。やや小ぶりな、普通サイズのフォークギター)
  • SLG200N (ナイロン弦。スリムなネックのクラシックギター)

という3タイプがリリースされています。型番は弦の種類、「W」はネックの幅が広い(ワイド)と覚えましょう。マホガニー製ボディ&ネック、ローズウッド製ブリッジ、メイプル&ローズ積層フレームという木材構成、各種電気系といった基本仕様はすべて共通しており、ネックの仕様で分化しています。

SLG200NW

YAMAHA SLG200NW

上位モデル「SLG200NW」は、標準的なクラシックギターの弾き心地を持ったサイレントギターです。ネックは12フレット近辺でボディにジョイントされる「12フレット接続」で、「弦長650mm」、「ナット幅52mm」というネック寸法です。指板には高級なエボニーが使われています。カラーバリエーションはナチュラルのみですが、ピッカピカにグロス仕上げされます。

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SLG200S

YAMAHA SLG200S

「SLG200S」は、YAMAHAのアコースティックギター「FS」シリーズと同様の「弦長634mm(ちょっとだけ短め)」を採用、標準的な「ナット幅43mm」、「14フレット接続」のサイレントギターです。一般的なアコギより多めの「フレット数22」となっており、アコギ弾きだけでなくエレキのプレイヤーにも使いやすいギターに仕上がっています。カラーバリエーションはナチュラル、タバコブラウンサンバースト、トランスルーセントブラックの3タイプで、これはSLG200N(後述)と同じです。

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SLG200N

YAMAHA SLG200N

「SLG200N」は、ふだんスチール弦のギターを使用しているプレイヤーが、バンドや録音で使用することを想定したサイレントギターです。「弦長650mm」、「12フレット接続」、「ナット幅50mm」が採用されており、本格的なクラシックの練習に使うことが想定されているSLG200NWと異なったアプローチで作られています。フレット数も19と多めなので、練習次第でガンガン高音域を攻めることができます。

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常識を覆した新しいギター

「夜になったらギターの練習はしない」というのが、近隣トラブルを避けるための常識でした。それならばと迷惑をかけないように小さな音でしか弾かないでいると、アコギをしっかり鳴らしきることができない身体になってしまいます。いざ本番と言う時にしっかり弾けるよう、日ごろから「強く弾くところはしっかり強く弾く」練習をするのが上達のためには必要です。

時間帯を気にせず練習したい、という思いをかなえるべく、いろいろな練習器具や消音器が開発されました。しかしサイレントギターの登場により、この常識がひっくりかえりました。周りに聞こえず、自分には聞こえて、普段と同じような感覚で弾ける、しかもトッププロが仕事で使える音色です。ショップや展示会場で見かけたら、ぜひその静かさと音の良さに触れてみてください。

なお「サイレントギター」はYAMAHAの登録商標です。似たものであっても他社の製品をサイレントギターと呼ぶことは、本当はできません。しかし

  • エレクトーン(=電子オルガン)
  • ピアニカ(=鍵盤ハーモニカ)
  • ギタレレ(=ウクレレサイズのギター)

などのように、YAMAHAの登録商標が定着して一般化した例は数多くあります(「パワーコード(=5度コード)」もYAMAHA発案のワードです)。「サイレントギター」もこの例にもれず、音量を気にせず練習できるギターの一般名詞として定着していくと予想されます。