「ダダリオ(D’Addario)」は多くのギターメーカーが出荷用の弦に採用している、弦の王道と言えるブランドです。
ダダリオ社はダダリオ家の家族経営でありながら世界最大級の弦メーカーであり、ニューヨークに世界本社を置くほかイギリス、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、オーストラリア、中国など世界中にオフィスを構え、製品は100カ国以上で流通されています。
弦以外にもストラップやカポタストなどのグッズ、近年ではフェイスシールドまで作っています。
ここではダダリオがリリースするアコギ用スチール弦に注目し、特徴を探っていきましょう。
The D’Addario Factory Tour: A Guide to the Inner Workings of the Guitar String
一日に50万本以上の弦を生産します。世界中の需要に応えるべく多くの工程が自動化される中、パッケージングは手作業の割合が多いようですね。
ダダリオと弦との関わりは約350年前、17世紀のイタリアまでさかのぼることができます。ダダリオの長い歴史をざっと見していきましょう。
ダダリオ家が最初に楽器の弦を作り始めたのは、1680 年頃だと伝えられています。
現在で言うイタリア共和国アブルッツォ州は酪農が盛んで、その延長で羊や豚の腸からハープやリュートなどのガット弦が作られていました。ダダリオ家は代々この地方のサッレという村に住み、弦製造を続けました。
1905年の地震でサッレが被災したことを受け、チャールズ・ダダリオ氏がニューヨークに移住します。
氏の父ジョヴァンニ・ダダリオ氏がサッレで製造した弦をNYで売っていましたが、やがてNYでも製造を開始します。その甲斐あって1930年頃には「C. D’Addario & Co.」として法人化し、好調な売り上げを記録します。
チャールズ氏は商売よりも家庭を優先したため、会社の拡大には消極的でした。しかし後継ぎのジョン・ダダリオ氏は違っていました。
ジョン氏の進言により新しいギター弦の開発が始まり、1930年代のうちに80/20ブロンズ弦を開発します。1938年に発表された新素材「ナイロン」を使った弦は、戦後に完成します。
製品が好調な売れ行きを見せる中、ジョン氏はロックンロールの台頭を見るや、エレキギター用スチール弦に次なるチャンスを見出します。しかし父親の賛同が得られず、ジョン氏は1954年に別会社「Archaic Strings」を設立、エレキ弦の製造に着手します。
製品は1年もしないうちにエルヴィス・プレスリー氏に愛用され、知名度も売り上げも急上昇します。
1962年、チャールズ・ダダリオ氏は引退し、会社の経営権を息子のジョン・ダダリオ氏に譲りました。そこでジョン氏はC. D’Addario & Co.と Archaic Stringsを合併し、「Darco Music Strings, Inc. (ダルコ)」を設立します。
ダルコはギター市場の活況に乗じ、次々と新製品をヒットさせます。企業買収が流行だった時代でもあり、充分に企業価値を上げた状態で1968年、ダルコはマーチンの買収を受けて同社の一部門に収まり、1974年にフォスファーブロンズ弦を開発します。
ジョン氏はマーチン傘下となったダルコを統括していましたが、1974年、親会社マーチンの経営陣と揉めて退社します。
翌1975年にジョン氏は二人の倅、ジョンJr.&ジム兄弟との3人で新会社「J. D’Addario & Co.」を設立、同社は数年で大きな工場へ移転するほどに売り上げを延ばし、現在のダダリオ社の母体となりました。
同社は「業務の垂直統合」をコンセプトに効率と品質の両方を向上させつつ、1995年にEvans(ドラムヘッド)、1998年にPlanet Waves(ギターストラップ)など、いろいろな企業を買収して多角化していきます。
1980年代には巻弦の工程を自動化し、生産量を倍増させました。
1990年代には、弦の世界市場の3割を占めるまでに成長します。
6角形の芯線「ヘックス・コア」は、ダダリオの発明。この構造により巻き線が芯線に喰いつき、安定性や耐久性が向上する。
ダダリオ弦のサウンドは、バランスよく響く、張りのある明瞭な音色が特徴です。
コーティング弦が発明される前から弦の寿命にはこだわりがあり、通常の弦でさえ新品の音質が比較的長続きします。
6本が一袋に収められていても、色分けされているのでごっちゃになることは、ほぼない。
カラフルに色分けされたボールエンドは、見ただけでダダリオだと分かる特徴です。
6弦なら金、5弦なら赤といった色分けは判別しやすく、弦交換がスムーズです。
ダダリオ製品をキャラクターごとに並べた図。このうち「EXP」は廃盤予定(グローバル公式では既にラインナップ外)。ダダリオでは「ブロンズ弦が最もブライトに響く」と解釈している。フォスファー・ブロンズの超高音域はブライトさよりむしろ音抜けの成分と捉え、低音域をメロウ成分と解釈しているらしい。
ダダリオは80/20ブロンズ弦もフォスファーブロンズ弦も開発した歴史があり、今なお根本的に新しい弦の開発に積極的です。
ブロンズとフォスファーブロンズの中間にあたる「アメリカンブロンズ」、また新しい響き方を提唱する「ニッケルブロンズ」の二つが象徴的です。
コーティング弦においては、コーティングした巻き線を巻き付ける「XT」、完成した弦をコーティングする「XS」という、製法の異なる2モデルで展開しています。
では、ダダリオ弦のラインナップを見ていきましょう。
さまざまなモデルがリリースされていますが、ほとんどの弦でエクストラライト(10-47)、カスタムライト(11-52)、ライト(12-53)、ミディアム(13-56)の「主要4ゲージ」があり、このほかモデルごとにこだわりのゲージも見られます。
種類があまりに多いので、カテゴリー別に見ていきましょう。
現代アコギ弦の王道を二分するブロンズとフォスファーブロンズ、その両方をダダリオは開発しています。
ダダリオの解釈では、ブロンズ弦の音は非常にブライトで、フォスファーブロンズ弦は甘い音、となっていますが、こればっかりは聴く人の感性に左右されるところです。フォスファーブロンズの超高域をブライトと解釈する人も、ブロンズの中高域を甘く響く音と解釈する人もいます。
王道ゆえに価格はお手頃なので、どっちも試してみて自分なりの解釈を構築してみてください。
| シリーズ名 | 素材 | 用途 |
|---|---|---|
| 80/20 BRONZE | 80/20ブロンズ | フラットピック全般ブライト・切れ |
| PHOSPHOR BRONZE | フォスファーブロンズ | フィンガーピッキング全般 フラットピック全般バランス型 |
ダダリオには歴史上、現代のスタンダードとなったブロンズ弦とフォスファーブロンズ弦の両方を開発した実績があります。
それゆえ次世代のスタンダードや新しい選択肢になるような、新しい素材にも積極的です。
以下に、このカテゴリーの各シリーズをまとめます。
| シリーズ名 | 素材 | 用途 |
|---|---|---|
| 85/15 AMERICAN BRONZE | 85/15アメリカンブロンズ | フラットピック全般80/20とフォスファーの中間 |
| NICKEL BRONZE | ニッケルブロンズ | 録音向きギター本来の音色を前に出す |
今や当たり前のように各社がリリースしているコーティング弦ですが、ダダリオではコーティング法の異なる2モデルで展開しています。
2モデルとも芯線にNY STEELを採用し、また新たに採用したFusion Twistテクノロジーの採用でボールエンドの取り付け法を刷新しており、チューニングの安定性と耐ブレーク性にも優れます。
| シリーズ名 | コーティング | 用途 |
|---|---|---|
| XS PHOSPHOR BRONZE | 完成弦コーティング | 録音・長寿命重視 |
| XS 80/20 BRONZE | 完成弦コーティング | 録音・長寿命重視 |
| XT 80/20 BRONZE | コーティング巻き線 | ライブ・長寿命重視ナチュラルな響き |
| XT PHOSPHOR BRONZE | コーティング巻き線 | ライブ・長寿命重視ナチュラルな響き |
設計の工夫によって、柔らかなタッチや甘いトーンといったレトロな雰囲気が得られる弦は、2タイプリリースされています。
| シリーズ名 | 素材 | 用途 |
|---|---|---|
| FLAT TOPS PHOSPHOR BRONZE | フォスファーブロンズ研磨加工 | フラットワウンド風タッチ・フィンガーピッキング |
| SILK & STEEL | シルク&スチール銀メッキ | タッチ柔らか・甘い音・パーラーギター向き |
以上、ダダリオの歴史、またアコギ用スチール弦をフォーカスしていきました。ダダリオと並んでスタンダードに君臨するマーチン弦が、ダダリオの会社を買収したところから製造を開始したというのは感慨深いポイントではないでしょうか。
金属やコーティング法まで選べる選択肢の多さ、また特殊なチューニングにまで対応できる豊富なゲージがありますから、きっと納得のいく弦を見つけることができるでしょう。
本記事の内容について、ポイントは以下のような感じです。
各モデルのゲージや仕様については、以下のポイントも参考にしてください。
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