《弦の王道》Martin弦の選び方とおすすめモデル[記事公開日]2022年10月3日
[最終更新日]2022年10月3日

Martin弦

アコギの王道と称されるMartin(マーチン)ですが、弦の分野でも王道の地位を築いています。マーチンのギターにはやはりマーチンの弦が最もマッチするし、他のギターで使用しても素晴らしい響きが得られます。

近年ラインナップが整理されたものの、まだまだ種類が多くてなかなか選べないかもしれません。そんなわけで今回はマーチン弦の全体像をざっと見して、弦を選ぶヒントを探してみましょう。


Martin Strings in Mexico
私たちが作っています!
コンピュータ制御の最新設備と度重なるシビアな検品を経て、マーチン弦は世界へと出荷されます。

アコースティックギター弦の種類と選び方

弦の選び方の基本

弦の個性は1に材料、2に製法や設計、3にゲージ、この3つの要素で決まります。このうち「ゲージ」を先に決めておくのがお勧めです。同じゲージ内であれば、ナット溝や弦高の再調整がほぼ不要で、だいたい同じ弾き心地で演奏できるからです。

まずは、「ゲージ」を検討しよう。

Martin弦のゲージ パッケージの左側を見れば、ゲージが分かる。

今使っているゲージの音色や感触を確認して、上げた(太く/硬く)方がいいのか、下げた(細く/柔らかく)方がいいのか、このままでいいのかを検討してみてください。なお、最もオーソドックスなゲージは「ライト(12-54)」です。

ハードにストロークする、音量が欲しい、ダウンチューニングを使う、こういうスタイルの人はゲージを1段階アップしてもいいかもしれません。ソフトなタッチで演奏する、リードプレイやソロギターが多い、Fコードの2弦が鳴らない、こういった人はゲージを1段階下げてもいいかもしれません。ただし弾きやすさと引き換えに、音量と音の伸び、またチューニングの安定度がちょっとだけ損なわれます。

マーチンのスタンダードなゲージはこの4種類。このほかライトとミディアムの中間など、こだわりのゲージもある。

「材料」でも結構な違いがある。

Martin弦の素材 材料は、パッケージの右側を見ると分かる。

材料について特に話題になるのが、「ブロンズ」か「フォスファー・ブロンズ」かという二者択一です。3弦以降の巻き線の材料によって、サウンドは大きく異なります。一般にブロンズは見た目が明るく、音は中域が豊かに響きます。フォスファー・ブロンズは見た目にはやや暗い感じで、音は高域と低域が特によく響きます。なお、フォスファー・ブロンズの方がちょっと長持ちしますが、価格がちょっと高く、張力は僅かにアップし、感触がちょっとだけ硬くなります。

マーチン弦、各モデルの特徴

ではさっそく、マーチン弦の各モデルを見ていきましょう。製法や設計、時には材料まで変化させた、幅広いラインナップが展開されています。モデルごとにさまざまなコンセプトがありますが、マーチンの弦は総じてタッチの柔らかさと豊かな低音域を持っています。

なお、12弦用のゲージはエクストラライト(10-47)が基本ですが、下記「SP弦」のブロンズにだけ、ライトゲージがあります。

【王道中の王道】AUTHENTIC ACOUSTIC「SP」

AUTHENTIC ACOUSTIC「SP」 ブルーが「SP」のテーマカラー。

「Superior Performance」いわゆる「SP弦」は、マーチン弦ラインナップの基礎となる最もベーシックかつスタンダードな弦です。プレーン弦/巻弦ともに引張り強度に優れる芯線を使い、豊かでバランスの取れたトーン、素早いレスポンス、チューニングの安定性が持ち味です。

材料はブロンズ/フォスファー・ブロンズ両面で展開、ゲージはエクストラライトからミディアムまであり、12弦モデルもあります。ブロンズには「MA240 Bluegrass(12-56)」、フォスファー・ブロンズには「MA545 Light/Medium(125-55)」というこだわりのゲージもあります。

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【高級】AUTHENTIC ACOUSTIC「MARQUIS SILKED」

AUTHENTIC ACOUSTIC「MARQUIS SILKED」 グリーンが高級モデル「シルクド」の目印。

「マーキス・シルクド」は、上記SP弦のボールエンド部にシルクの糸を巻きつけた高級モデルです。ボールエンドがブリッジの裏側にかけるダメージを軽減させるほか、チューニングの安定度を高める効果があります。

材料はブロンズ/フォスファー・ブロンズ両面で展開、ゲージはエクストラライトからミディアムまであり、12弦モデルもあります。

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【長寿命】AUTHENTIC ACOUSTIC「LIFESPAN 2.0」

AUTHENTIC ACOUSTIC「LIFESPAN 2.0」 寿命が長いのは、紅。

「ライフスパン2.0」は、2年を費やして開発された独自の特許技術でSP弦をコーティングした、ロングライフ弦です。寿命は極めて長く、マーチン社は「市場で出回っている他のどのロングライフ弦よりも長持ちする」と謳っています。弦そのもののトーンを損なわないコーティングではありますが、音質の劣化が極めて遅いため通常のSP弦よりブライトなサウンドが得られます。

材料はブロンズ/フォスファー・ブロンズ両面で展開、ゲージはエクストラライトからミディアムまであり、12弦モデルもあります。

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【爆音】AUTHENTIC ACOUSTIC「FLEXIBLE CORE」

AUTHENTIC ACOUSTIC「FLEXIBLE CORE」 フレキシブル・コアはオレンジ。

「フレキシブル・コア」は、巻弦の芯線を細くしたぶん巻き線を太くした、新しい構造の弦です。反応の速いシャープなアタックが持ち味で、マーチン弦で最もパワフルだと言われます。ラインナップはフォスファー・ブロンズのカスタムライト(11-52)からミディアムまで、そして12弦仕様があります。なお、ライトゲージは世界の達人、トニー・エマニュエル氏ご用達です。

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It’s Never Too Late (Live from Cumberland Caverns) | Tommy Emmanuel
この世に凄すぎて参考にならない達人は数多あれど、この豪州の至宝、トニー・エマニュエル氏よりも参考にならない演奏者はなかなかいません。曲芸に頼らないトラッドなスタイルでありながら、この高さまでは誰もたどり着くことができません。

非常に柔らか「コンパウンド弦」

「コンパウンド弦」とは、巻弦の芯線にシルクを巻きつけ、その上に巻き線を巻きつけた弦です。柔らかなシルクで太さを稼いでいるぶんだけ張力が抑えられ、柔らかなタッチで演奏できます。

MA130S「Silk & Steel」

MA130S「シルク&スチール」は、芯線をシルクで包んだ上に銀メッキ銅の巻線を巻きつける、3層構造の弦です。エクストラライトよりも柔らかい、マーチン弦ラインナップで最も柔らかい感触と、甘くメロウなトーンが持ち味です。

MA130FX「Silk & Phosphor」

MA130FX「シルク&フォスファー」は、フレキシブル・コアのコンセプトで作ったコンパウンド弦です。巻弦は、円形の断面を持つ芯線にシルクを巻きつけ、その上に銀メッキしたフォスファー・ブロンズの巻き線という3層構造です。触感はMA130S「シルク&スチール」より僅かに硬質ですが、やはりエクストラライトより柔らかです。

MARTIN「ORIGINALS」

これまで見てきた「AUTHENTIC ACOUSTIC」シリーズが現代のスタンダードならば、この「ORIGINALS」はマーチン社が弦を作り始めた1970年代の仕様を再現した、ヴィンテージ・スタイルになります。マーチン弦の昔からの特徴、深く豊かな低音とクリアで明るい高音がしっかり得られ、かつお値打ちです。ラインナップはブロンズのみで、ゲージはエクストラライトからミディアムまで4段階あります。

「Clapton′s Choice」

「クラプトンズ・チョイス」は、達人エリック・クラプトン氏のシグネイチャーモデルです。スタジオでもステージでも、氏はこの弦でプレイすると言われていますが、SP弦との違いについては公表されていません。ラインナップはフォスファー・ブロンズのライトとミディアムという2モデルのみで展開しており、価格はSP弦よりちょっと抑えめです。

「TITANIUM CORE」

「チタニウム・コア」は、プレーン弦にクライオ処理されたステンレスを、巻弦の芯線にトゥルー・チタン、巻き線にピュア・ニッケルを使用した弦です。ライトゲージの1モデルのみリリースされていますが、ライトとカスタムライトの中間くらいの硬さで音量が大きく、チューニングの安定度が高くて劣化に強いのが持ち味です。たいへんに高額な弦ですが特別に切れにくいわけではないので、日常的な使用には相応の経済力が要求されます。

「RETRO」

「レトロ」は、巻き線にニッケルと銅の合金「モネル」を使用した、1930年代の仕様を採用した弦です。温かみのある、柔らかく自然な音色が持ち味で、フィンガーピッキングに特にフィットします。ゲージは現代風にアレンジしているので、演奏性に違和感を覚えることはありません。


Mark O’Connor, Tony Rice, Bela Fleck, Sam Bush – “Freeborn Man”
トニー・ライス氏(1951 -2020)はブルーグラスを代表するアーティストで、「この分野に永続的な痕跡を残した」と評されます。レトロシリーズでは、氏の愛用したゲージが「Bluegrass Tony Rice’s Choice」として、後世に伝えられています。

「DARCO ACOUSTIC」

「ダルコ」は1970年代にマーチン社に買収されるまで、マーチン用の弦を製造していたメーカーです。現在その名は、マーチンの低価格弦をリリースするブランドとして存続しています。

マーチンの歴史を下支えした名誉ある名を冠する「ダルコ・アコースティック」は、王道のSP弦に劣らない品質と、お財布に優しい低価格の両立を達成しています。ラインナップはブロンズとフォスファー・ブロンズ両面で、それぞれゲージはエクストラライト、ライト、ミディアムと12弦仕様の4タイプがリリースされています。


以上、マーチン弦の特徴を見ていきました。気になる弦はありましたか?良く分かんないうちはひとまず王道の「SP弦」にしておいて、ゲージの決定から入りましょう。以下に今回のまとめを箇条書きしましたので、参考にしてみてください。

  • 最初にゲージを決めておこう。
  • 材料の違いで音にも結構な違いが出る。
  • 「SP弦」が現代マーチン弦の基準で、「シルク」は高級モデル、「ライフスパン0」は長寿命、「フレキシブル・コア」は音量がでかい。
  • 12弦でライトゲージなら、SP弦のブロンズ一択。
  • 最も柔らかい弦は、MA130S「シルク&スチール」。
  • 逆に最も硬い弦は、各モデルのフォスファー・ブロンズのミディアムゲージ。
  • クラプトンモデルは、ちょっとお買い得。
  • 「オリジナル」と「ダルコ」は、もっとお買い得。
  • 逆に最も高額なのは、「チタニウム・コア」。
  • 「レトロ」は1930年代仕様、「オリジナル」は1970年代仕様。