アコギの王道と称されるMartin(マーチン)は、弦の分野でも王道の地位を築いています。マーチンのギターにはやはりマーチンの弦が最もマッチしますし、他のメーカーのギターに張っても素晴らしい響きが得られます。
ラインナップは AUTHENTIC ACOUSTICの4本柱 を軸に、上位ライン「Martin Era Treated」「Luxe by Martin Kovar」、ヴィンテージ系の「The Original」「RETRO」、シグネイチャーの「Clapton’s Choice」、入門価格の「Darco Acoustic」と幅広く展開されています。]種類が多くて選びにくいかもしれませんので、今回はマーチン弦の全体像をざっと見しながら、選び方のヒントを探していきましょう。
Martin Strings in Mexico
私たちが作っています!
コンピュータ制御の最新設備と度重なるシビアな検品を経て、マーチン弦は世界へと出荷されます。
アコースティックギター弦の選び方ガイド
弦の選び方の基本
弦の個性は、1に「材料(巻線)」、2に「製法や設計」、3に「ゲージ」の3つの要素で決まります。このうち 「ゲージ」を先に決めておく のがおすすめです。同じゲージ内であればナット溝や弦高の再調整がほぼ不要で、だいたい同じ弾き心地で演奏できるからです。
まずは「ゲージ」を検討する
パッケージの左側を見れば、ゲージが分かる。
今使っているゲージの音色や感触を確認して、上げた(太く/硬く)方がいいのか、下げた(細く/柔らかく)方がいいのか、このままでいいのかを検討してみてください。なお、最もオーソドックスなゲージは 「ライト(12-54)」 です。
ハードにストロークする、音量が欲しい、ダウンチューニングを使う、こういうスタイルの人はゲージを1段階アップしてもいいかもしれません。ソフトなタッチで演奏する、リードプレイやソロギターが多い、Fコードの2弦が鳴らない、こういった人はゲージを1段階下げてもいいかもしれません。ただし弾きやすさと引き換えに、音量と音の伸び、またチューニングの安定度がちょっとだけ損なわれます。
マーチンのスタンダードなゲージはこの4種類。このほかライトとミディアムの中間など、こだわりのゲージもある。
「材料(巻線)」で音色も結構変わる
材料は、パッケージの右側を見ると分かる。
3弦以降の巻き線の材料によって、サウンドは大きく異なります。マーチン弦の現行ラインナップでは、巻線の材料は大きく以下の5系統に整理されています。
80/20 Bronze(ブロンズ) :銅80%/亜鉛20%の合金。見た目が明るく、中域が豊かに響くオーソドックスな響き。
92/8 Phosphor Bronze(フォスファー・ブロンズ) :銅92%/スズ8%にリン少量を含む合金。見た目はやや暗めで、高域と低域が特によく響き、ブロンズより寿命がやや長い。
Monel(モネル) :ニッケルと銅の合金。1930年代に使われていた素材で、温かみのある自然なトーン。「RETRO」シリーズに採用。
Kovar(コバール) :ニッケル+コバルト合金。マーチンが新たに弦に採用した素材で、クリアなトーンと耐腐食性を両立。「Luxe by Martin Kovar」専用。
Silk系(シルク混合) :芯線にシルクを巻きつけて張力を抑えた構造。柔らかな感触とメロウなトーンが持ち味。「Silk & Steel」「Silk & Phosphor」に採用。
💡 定番は「80/20 Bronze」と「92/8 Phosphor Bronze」 フォスファー・ブロンズの方が長持ちしますが、価格がちょっと高く、張力は僅かにアップし、感触がちょっとだけ硬くなります。
マーチン弦、各モデルの特徴
ではさっそく、マーチン弦の各モデルを見ていきましょう。マーチン弦は総じてタッチの柔らかさと豊かな低音域を持っていますが、製法や設計、時には材料まで変化させた幅広いラインナップが展開されています。
なお、12弦用のゲージはエクストラライト(10-47)が基本ですが、下記「SP弦」のブロンズにだけライトゲージがあります。
最上位ライン
2022年以降に拡張された、マーチン弦の新世代フラッグシップです。コーティング・コア・巻線素材それぞれに最新技術を投入し、AUTHENTIC ACOUSTICシリーズの上位に位置付けられています。
【新世代】Martin Era Treated
「Martin Era Treated」は、Lifespan処理・Flexible Core構造・Marquisシルク巻きの3要素を融合した、92/8 Phosphor Bronzeの新フラッグシップです。
ライフスパン譲りのコーティング、フレキシブル・コア譲りの低テンションかつパワフルな鳴り、マーキス譲りのボールエンド保護を1セットに詰め込んだ意欲作で、マーチン社は「フォスファー・ブロンズ弦の新しい基準」と謳っています。
ゲージはカスタムライト・ライト・ミディアム、加えてJason Isbellシグネイチャーの「Artist Light」が用意されています。
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【Kovar巻線採用】Luxe by Martin Kovar
「Luxe by Martin Kovar」は、巻線にニッケル+コバルト合金「Kovar(コバール)」を新たに採用したギター弦です。
SPコアと組み合わせた標準モデルと、Flexible Coreと組み合わせた低テンションモデルの2構造が用意されており、いずれもクリアで張りのあるトーンと耐腐食性の高さを両立しています。
ゲージはカスタムライト・ライト・ミディアムの3段階で、金属合金で弦のサウンドをどこまで変えられるかというマーチンの挑戦が形になった意欲作です。
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AUTHENTIC ACOUSTIC(現代のスタンダード4本柱)
マーチン弦の現行ラインナップの中核を担うシリーズです。共通のコンセプトを持ちつつ、用途別に4種類が展開されています。
【王道中の王道】AUTHENTIC ACOUSTIC「SP」
ブルーが「SP」のテーマカラー。
「Superior Performance」いわゆる「SP弦」は、マーチン弦ラインナップの基礎となる最もベーシックかつスタンダードな弦です。
プレーン弦/巻弦ともに引張り強度に優れる芯線を使い、豊かでバランスの取れたトーン、素早いレスポンス、チューニングの安定性が持ち味です。
材料は80/20 Bronzeと92/8 Phosphor Bronzeの両面で展開、ゲージはエクストラライトからミディアムまであり、12弦モデルもあります。ブロンズには「MA240 Bluegrass(12-56)」、フォスファー・ブロンズには「MA545 Light/Medium(12.5-55)」というこだわりのゲージもあります。
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【ブリッジに優しい】AUTHENTIC ACOUSTIC「MARQUIS SILKED」
グリーンが「シルクド」の目印。
「マーキス・シルクド」は、上記SP弦のボールエンド部にシルクの糸を巻きつけたモデルです。
ボールエンドがブリッジプレートの穴にかけるダメージを軽減させるほか、チューニングの安定度を高める効果があります。
材料は80/20 Bronzeと92/8 Phosphor Bronzeの両面で展開、ゲージはエクストラライトからミディアムまであり、12弦モデルもあります。シルク&スチール構成のMA130Sもこのシリーズ内に含まれます。
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【長寿命】AUTHENTIC ACOUSTIC「LIFESPAN 2.0」
寿命が長いのは、紅。
「ライフスパン2.0」は、2年を費やして開発された独自の特許技術でSP弦をコーティングした、ロングライフ弦です。
寿命は極めて長く、マーチン社は「市場で出回っている他のどのロングライフ弦よりも長持ちする」と謳っています。
弦そのもののトーンを損なわないコーティングではありますが、音質の劣化が極めて遅いため通常のSP弦よりブライトなサウンドが得られます。
材料は80/20 Bronzeと92/8 Phosphor Bronzeの両面で展開、ゲージはエクストラライトからミディアムまであり、12弦モデルもあります。
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【パワフル】AUTHENTIC ACOUSTIC「FLEXIBLE CORE」
フレキシブル・コアはオレンジ。
「フレキシブル・コア」は、巻弦の芯線を細くしたぶん巻き線を太くした、新しい構造の弦です。
反応の速いシャープなアタックが持ち味で、マーチン弦で最もパワフルだと言われます。ラインナップは92/8 Phosphor Bronzeのカスタムライト(11-52)からミディアムまで、そして12弦仕様があります。
なお、ライトゲージ(MA540FX)は世界の達人 トミー・エマニュエル氏 ご用達のシグネイチャーで、Lifespan処理を施したMA540Tもラインナップされています。
It’s Never Too Late (Live from Cumberland Caverns) | Tommy Emmanuel
この世に凄すぎて参考にならない達人は数多あれど、この豪州の至宝、トミー・エマニュエル氏よりも参考にならない演奏者はなかなかいません。曲芸に頼らないトラッドなスタイルでありながら、この高さまでは誰もたどり着くことができません。
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コンパウンド弦(非常に柔らかい)
「コンパウンド弦」とは、巻弦の芯線にシルクを巻きつけ、その上に巻き線を巻きつけた弦です。柔らかなシルクで太さを稼いでいるぶんだけ張力が抑えられ、柔らかなタッチで演奏できます。エクストラライトよりさらに柔らかい弾き心地が特徴です。
MA130S「Silk & Steel」
MA130S「シルク&スチール」は、芯線をシルクで包んだ上に銀メッキ銅の巻線を巻きつける、3層構造の弦です。
エクストラライトよりも柔らかい、マーチン弦ラインナップで最も柔らかい感触と、甘くメロウなトーンが持ち味です。AUTHENTIC ACOUSTIC MARQUIS SILKEDのバリエーションとしてカテゴライズされています。
MA130FX「Silk & Phosphor」
MA130FX「シルク&フォスファー」は、フレキシブル・コアのコンセプトで作ったコンパウンド弦です。
巻弦は、円形の断面を持つ芯線にシルクを巻きつけ、その上に92/8 Phosphor Bronzeの巻き線をかぶせた3層構造です。触感はMA130S「シルク&スチール」より僅かに硬質ですが、やはりエクストラライトより柔らかな弾き心地です。
ヴィンテージ/スペシャルティ
時代別の仕様再現や、独自素材を採用した個性派のシリーズです。
MARTIN「The Original」
これまで見てきた「AUTHENTIC ACOUSTIC」シリーズが現代のスタンダードならば、この「The Original」はマーチン社が弦を作り始めた1970年代の仕様を再現した、ヴィンテージ・スタイルになります。
マーチン弦の昔からの特徴、深く豊かな低音とクリアで明るい高音がしっかり得られ、かつお値打ちです。ラインナップは80/20 Bronzeのみで、ゲージはエクストラライトからミディアムまで4段階あります。
「Clapton’s Choice」
「クラプトンズ・チョイス」は、達人エリック・クラプトン氏 のシグネイチャーモデルです。スタジオでもステージでも、氏はこの弦でプレイすると言われていますが、SP弦との違いについては公表されていません。
ラインナップは92/8 Phosphor Bronzeのライトとミディアムという2モデルのみで展開しており、価格はSP弦よりちょっと抑えめです。
「TITANIUM CORE」
「チタニウム・コア」は、プレーン弦にクライオ処理されたステンレスを、巻弦の芯線にトゥルー・チタン、巻き線にピュア・ニッケルを使用した弦です。
ライトゲージの1モデルのみリリースされていますが、ライトとカスタムライトの中間くらいの硬さで音量が大きく、チューニングの安定度が高くて劣化に強いのが持ち味です。
たいへんに高額な弦で、日常的な使用には相応の経済力が要求されます。
「RETRO」(モネル巻線)
「レトロ」は、巻き線にニッケルと銅の合金「モネル」を使用した、1930年代の仕様を採用した弦です。
温かみのある、柔らかく自然な音色が持ち味で、フィンガーピッキングに特にフィットします。ゲージは現代風にアレンジしているので、演奏性に違和感を覚えることはありません。
Mark O’Connor, Tony Rice, Bela Fleck, Sam Bush – “Freeborn Man”
トニー・ライス氏(1951 -2020)はブルーグラスを代表するアーティストで、「この分野に永続的な痕跡を残した」と評されます。レトロシリーズでは、氏の愛用したゲージが「Bluegrass Tony Rice’s Choice」として、後世に伝えられています。
入門・低価格
「DARCO ACOUSTIC」
「ダルコ」は1970年代にマーチン社に買収されるまで、マーチン用の弦を製造していたメーカーです。現在その名は、マーチンの低価格弦をリリースするブランドとして存続しています。
マーチンの歴史を下支えした名誉ある名を冠する「ダルコ・アコースティック」は、王道のSP弦に劣らない品質と、お財布に優しい低価格の両立を達成しています。
ラインナップは80/20 Bronzeと92/8 Phosphor Bronze両面で、それぞれゲージはエクストラライト、ライト、ミディアムと12弦仕様の4タイプがリリースされています。
以上、マーチン弦の特徴を見ていきました。気になる弦はありましたか?良く分からないうちはひとまず王道の「SP弦」にしておいて、ゲージの決定から入りましょう。