フェンダー・アコースティックの上位グレード Fender Paramount シリーズ[記事公開日]2022年4月3日
[最終更新日]2022年06月2日

Fender Paramount シリーズ PO-220E ORCHESTRA(Natural)

フェンダー・アコースティックの上位グレード「Paramount(パラマウント)」シリーズが、1930~1940年代のトラッドなスタイルをまとって刷新されました。雰囲気こそレトロですが、音や弾き心地にはフェンダーらしい新し要素を盛り込んだ、現代のアコギとして仕上がっています。今回は、このParamountシリーズに注目していきましょう。


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素朴ながら高級感のあるルックスに、選べるトップ材、ごくシンプルにまとまった電気系。これは仲良くなれそう。

Fender「Paramount」シリーズの特徴

Fender Paramount Series PD-220E DREADNOUGHT(3-Color Vintage Sunburst)

ではさっそく、Paramountシリーズの特徴を見ていきましょう。王道のスタイルを守りながらも、新しいギターを生み出そうとするフェンダーの挑戦を垣間見ることができます。

トップ材が選べる総単板ボディ

Fender Paramount シリーズ:ボディ PS-220E PARLOR(Aged Cognac Burst)

3モデルがリリースされたParamountシリーズはボディ形状以外、ネック寸法やカラーリングまでも仕様が共通しています。すなわちParamountoシリーズは、ボディこそが各モデルのアイデンティティなのです。ボディ形状は小型のパーラータイプ(PS-220E)、王道のドレッドノートタイプ(PD-220E)、そして両者の中間に位置するオーケストラタイプ(PO-220E)の3タイプで、それぞれにキャラクターを持っています。

総単板ボディには2種類のトップ材

スプルーストップ/マホガニートップ Natural(上)はスプルーストップ 、Aged Cognac Burst(下)はマホガニートップ。同一モデル内でカラーリングに応じて木材構成が変わるのは斬新だが、むしろフェンダーらしい。

トップ材はカラーリングによって、シトカスプルース単板(3-Color Vintage Sunburst/Natural)とマホガニー単板(Aged Cognac Burst)が選べます。サイド&バックはマホガニー単板です。スプルースは一般的に、ブライトでダイナミックレンジの広いサウンドが得られます。全面マホガニーのボディは、暖かくバランスのとれたサウンドが持ち味です。

サウンドを追及する設計

内部のXブレーシングは緻密な計算でブラッシュアップされており、総単板ボディ独特の豊かな響きと音色を最大限に引き出します。またエボニー製ブリッジピンを採用することで、サウンドの輝きを増強しています。

フィッシュマンと共同開発「SONITONE PLUS」プリアンプ

SONITONE PLUS プリアンプ 音量とブレンドだけの、超シンプルな操作系。

ピックアップ大手フィッシュマン社と共同開発した「SONITONEPLUS」は、アンダーサドルのピエゾピックアップと、トップ材の振動をキャッチするボディセンシング・トランスデューサーの配分を調整し、音量を操作して出力するシステムです。EQのような電気的な加工に頼らず、あくまで楽器自体の音を利用したナチュラルなサウンドメイクが可能です。

レトロなルックスと現代的な弾き心地

Fender Paramount シリーズ:ヘッド アコギの伝統にならった片側3連のヘッドと、オープンギアタイプのペグ。「Fender」のロゴもレトロっぽい書体。

Fender Paramount シリーズ:指板 ツブツブ感が可愛らしい、スノーフレーク型のパーロイドインレイ。そして、高級感を後押しする3層のネックバインディング。

Fender Paramount シリーズ:サウンドホール ボディ外周とロゼッタのフェザー・パーフリングは、バックにも。そしてトラ柄ピックガードは、知っている人なら一目でフェンダーだと分かるシェイプ。

細かいところに漂うレトロ感は、Paramountシリーズにおける重要な意匠です。ボディ外周、ロゼッタ(サウンドホール周り)、バックに配置されるフェザー・パーフリングは、1930~1940年代のヴィンテージギターをオマージュしています。

ネック仕様は3モデルで共通

Fender Paramount シリーズ:ネック

Paramountシリーズの3モデルはボディ仕様で違いを設けており、ネック仕様は共通です。3モデルでネックの握り心地や演奏性は同じで、抱え心地やサウンドに違いがあるわけです。Paramountシリーズのネック仕様は、マホガニーネック&オバンコール指板という木材構成、弦長25.3″ (643 mm)&15.75″ (400 mm)指板R&ナット幅1.69″ (43 mm)という寸法です。Cシェイプのネック裏は現代仕様のサテン仕上げで、スベッスベなさわり心地です。

ハードケース付属

Fender Paramount シリーズ:ハードケース

Paramountシリーズでは、各モデルのボディ形状にフィットさせた専用ハードケースが付属します。内貼りのクッションは厚く、ギターをしっかり保護してくれます。

Fender「Paramount」シリーズのラインナップ

では、フェンダー「Paramount」シリーズのラインナップを見ていきましょう。3モデルはボディ形状にその個性が集約されています。なお、3カラー・ヴィンテージサンバーストとナチュラルはシトカスプルーストップでグロス仕上げ、エイジド・コニャックバーストはマホガニートップでサテン仕上げです。今のところカッタウェイ仕様と左用のラインナップはありません。

PS-220E PARLOR

PS-220E PARLOR 左から、3カラー・ヴィンテージサンバースト、ナチュラル、エイジド・コニャックバースト。そして愛らしい後ろ姿。

パータータイプの小型ボディを持つ「PS-220E」は、低域のスッキリとした繊細な音色が持ち味です。こうしたスタイルはブルース系のサウンドで特に支持されるほか、ソロ演奏にも有用です。ボディの体積がほどほどに押さえられているため音量も適度に抑えられており、お部屋で爪弾くのに最適です。

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PD-220E DREADNOUGHT

PD-220E DREADNOUGHT

ドレッドノート型の「PD-220E」は、低域も高域もしっかり出る奥行きのあるサウンドが持ち味です。繊細なタッチの演奏が活きるほか、ピックでバッキンバッキンに書き鳴らすのにも大変に良好です。ボディの大きさも充分で、しっかりした音量が得られます。

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PO-220E ORCHESTRA

PO-220E ORCHESTRA

オーケストラタイプのボディの「PO-220E」は、低域の柔らかさが持ち味です。力強くも繊細にも演奏できる守備範囲を持ち、さまざまな場面で柔軟に演奏できます。大きめのボディで引きしまったウェストを持つこのボディシェイプは、フェンダーラインナップでは初採用です。

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ボディサイズを比べてみる

パーラーは小型だとかドレッドノートは大型だとか言うけど、どれくらい違うのか?ということで3モデルのボディの全長、ウェストの深さ、そしてアッパー・バウトとロアー・バウトを見比べてみましょう。「アッパー・バウト」はネック側のふくらみの幅、「ロアー・バウト」はブリッジ側のふくらみの幅で、「ボディ幅」と言えばこちらを指します。

「PO-220E」を中心にしてみると、なかなか興味深い結果です。全長は「PD」が最大ながら、「PO」と「PS」はほぼ同じ、ロアー・バウトも「PD」が最大ながら、「PO」と「PS」はほぼ同じです。

これに対し、アッパー・バウトとウェストについては有意な差が確認できます。こちらの寸法は音量とサウンドに加え、座って演奏する時の抱え心地も左右します。こうして比べてみると「PO」は小型と言うけど全長はそれほど小さくなく、しかしウェストが深いので抱えるとコンパクトに感じる、「PD」は全長も横幅も全体的に大きめ、ということが分かりますね。


以上、フェンダー・アコースティックの上位機種「Paramount」シリーズに注目していきました。レトロ風味の個性的なルックスをもつ、味わい深いアコギです。最新のエレクトロニクスが投入されてはいるものの、操作系が極めてシンプルであり、かつギター本体の音色を最大限に利用する方式で、エレキギターではなくアコースティックギターをこそ弾きたい人が受け入れやすいまとめ方をしています。モデルのアイデンティティをボディ形状の一本勝負に絞ってくるあたりも興味深い方式です。ぜひ実際にチェックしてみてください。