アコースティックギターの種類と選び方[記事公開日]2016年1月6日
[最終更新日]2022年03月31日

Martin D-28 / irish10567

ギターをやってみたいんだけど、何を買えばいいのか、安くてもいいのか、そもそもどんな種類のギターがあるのか、などなどわからないという方もいることでしょう。今回は初めてアコースティックギターを買うあなたに向けて、アコースティックギターの種類と選び方についてご紹介します。


Taylor Swift – Back To December (Live on Letterman)

そもそも、アコギって何?

アコギ(=アコースティックギター)は「生ギター」とも言われ、箱形の胴体で弦の振動を増幅する楽器です。「アコースティック」は「電気を使わない」という意味ですが、大きな音をスピーカから出すためにマイクが仕込まれているアコギもあり、これは「エレアコ」と呼ばれます。

弦は金属製で、6本と決まっています。しかし6本が分身して12本になっているギターもあります。ヴァイオリンのように弓で弦を擦る楽器(擦弦楽器=さつげんがっき)ではなく、指やピックで弦を弾く楽器(撥弦楽器=はつげんがっき)です。

歌の伴奏で使われることの多い楽器ですが、単体で使用することも多く、美しく澄んだ音色から荒々しく攻撃的な音色まで、また迫力ある音から繊細な音まで、弾き手しだいで自由に出すことができます。

アコギはこんなことに向いている Part 1 「弾き語り」


山崎まさよし / One more time,One more chance

楽器を弾きながら歌うことを「弾き語り(ひきがたり)」といいます。アコギは弾き語りにうってつけの楽器です。達人の弾き語りには、聴く人を涙させるだけの破壊力があります。またピアノなどと違って持ち運ぶことができるし、エレキギターと違い電源がいらないから、「どこでもライブパフォーマンスができる」のがアコギのメリットです。

アコギはこんなことに向いている Part 2 「ソロギター」


Andy McKee – Rylynn – Acoustic Guitar – www.candyrat.com

ちょっと練習がいりますが、アコギ一本で演奏するスタイルを「ソロギター」、または楽器での演奏(器楽奏)という意味の英語で「インストゥルメンタル(略:インスト)」と言います。アコギの持つ美しい響きのみならず、難しい曲を弾きこなす達成感が、やみつきになります。

アコギはこんなことに向いている Part 3 「伴奏」


羊毛とおはな「Englishman in New York」

アコギは脇役に徹していても、とてもかっこいいですね。歌をボーカリストに任せているぶんだけ、工夫した高度な演奏ができます。主役を支える演奏を「伴奏(=バッキング)」といい、ギターの重要な仕事です。羊毛さんが演奏しているのは「ガットギター(=クラシックギター)」で、軽やかなやさしい音色が特徴です。

以上、アコギってだいたいこんな楽器なんだよ、というところを見ていただきました。アコギは気軽に持ち運ぶことができる「親しみやすい楽器」ですが、バンドに頼ることなく単体で音楽を成立させることができる「頼もしい楽器」でもあります。

アコースティックギターの種類は?

一言で「アコギ」と言っても、いろいろな種類があります。いろいろな種類があってもどれもだいたいアコギの音がしますが、これから経験を積んでいくことで、それらの違いがくっきりと分かるようになってきます。

フォークギター以外にもいろいろなアコギがありますが、ポップス/ロックでは特にフォークギターが多数派なので、「アコギ」と言ったらだいたいフォークギターのことを言います。でも、他にどんなギターがあるのでしょうか。フォーク以外のアコギもチェックしてみましょう。

アコースティックギターの定番機「フォークギター」

アコギの定番はいわゆる「フォークギター」で、大きめサイズの「ドレッドノート」と、キュっと引き締まった「フォークタイプ」に別れます。それぞれに多少の違いはありますが、アコギを始めるためにはひとまずどちらかが手に入れば大丈夫です。

やや大型のボディ「ドレッドノート」


斉藤和義 – 歌うたいのバラッド -Live ver.-

マーチンの「D-28」とギブソンの「J-45」を代表とする、やや大型のボディを持つアコギを「ドレッドノート」と言います。パワー感があることからロック系アーティストに愛され、また繊細さも兼ね備えることからポップス/ブルース/フォークソングなどさまざまな音楽で愛用されています。

くびれが大きい「フォークタイプ」


DEPAPEPE 『ONE』

ボディが「キュッ」とくびれているものには、「000(トリプルオー)」、「グランドオーディトリアム」、「グランドコンサート」などブランドごとにさまざまな名前がつけられており、それぞれに違いを持っています。総称は付けにくいのですが、ドレッドノートとの区別で便宜上「フォークタイプ」と呼ばれます。くびれが大きいことから抱え込みやすく、リードプレイなど細やかな演奏を得意とするプレイヤーに愛用されます。
デパペペの二人が弾いているギターのように、ボディがえぐるようにカットされていることがあります。これは「カッタウェイ」と言い、高い音を出しやすくする工夫です。
アコギのボディタイプとサイズについて

はじめてのアコギ、どう選ぶ?

次のページでは「最初の一本」としてドレッドノートタイプとフォークタイプを中心に、音の良さと価格のバランスが良いギターを紹介しています。上手なプレイヤーの演奏にも耐えられるポテンシャルがありますから、練習して腕前が上がってもそのまま愛用できます。はじめてのアコギを選ぶ際のポイントも紹介しているので、是非チェックしてみてください。

初心者の1本目におすすめのアコースティックギター

アコギにマイクを仕込んだ「エレアコ」

アコギにマイク(=ピックアップ)を仕込んだものを、「エレクトリック・アコースティックギター(略:エレアコ)」と言います。

  • アコギ:マイクなし
  • エレアコ:マイクあり

このように考えて大丈夫ですが、エレアコを「アコギ」と呼ぶこともあり、区別は厳密ではありません。内蔵マイクで拾った音をケーブル一本でスピーカに送ることのできる、とても便利なギターです。ライブの出演を考えているなら、だんぜんエレアコが有利です(楽器に後からマイクを付けることもできます)。

エレアコにはマイクだけがついているものと、「プリアンプ」も付いているものがあります。音響的には扱いが変わりますが、ライブ会場ではPAさん(=音響スタッフ)がうまくやってくれるので心配しなくて大丈夫です。

「エレクトリック」といっても本体はアコギなので、生の音で演奏するのには全く問題がありません。ただし、エレアコは「ハウリング対策」のため楽器本体の「鳴り」を抑えるのが普通です。生の鳴りをメインとしていないので、ボディサイズやネックの太さといった寸法を「弾きやすさ」を基準にして設計しているのが一般的です。ですから「豊かな生の響き」で言えば、マイクのないアコギのほうが秀でています。また、エレアコは「楽器本体」と「電気部品」が合わさった楽器なので、楽器本体のみのアコギよりも値段が高くなります。

これから始める方にお勧めのエレアコ

YAMAHA A1FM LTD
YAMAHA A1/AC1シリーズ
ピックガードの形状とカッタウェイにより印象が大きく変わりますが、A1はFG、AC1はFSのボディシェイプをベースに開発されたエレアコです。どこからどう見ても普通のアコギといったルックスでありながら、エレキギターから持ち替えることも想定した握りやすい細めのネックグリップが採用されています。

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Ibanez AEG
Ibanez AEGシリーズ
Ibanezはハードロック指向のエレキギターやジャズ指向のアーチトップが有名ですが、品質の良さと求めやすい価格、シンプルでスタイリッシュなデザイン、弾きやすさを追求した設計といったエレキギターのコンセプトをそのまま引き継いだアコギのラインナップも充実しています。AEGはミディアムスケールとコンパクトなボディサイズをメリットとするエレアコで、ボディの木材や厚みにいくつかのバリエーションが設けられています。

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ガットギター(クラシックギター、ナイロンギター)

ガット・ギター

https://youtu.be/yPTyNv2ivzg
村治佳織 – 主よ、人の望みの喜びよ(演奏 ver.)

「ガットギター」はフォークギターの金属弦と違い、ナイロン弦を使用します。「ガット」の語源はテニスのラケットに張るガットと同じで、ナイロンが発明されるまでは「腸線」といって羊や豚の腸を伸ばして作った弦を使用していました。

イタリアで発展したクラシックのスタイルで弾く「クラシック・ギター」、スペンで発展したフラメンコのスタイルで弾く「フラメンコ・ギター」があり、ボディ構造や弾き心地などが若干異なります。ナイロン弦の丸くてソフトな音色はクラシックやフラメンコの他にも、ボサノバなどラテン、ジャズ/フュージョンなどさまざまなジャンルにフィットします。

ボディサイズやネックの幅などに違いがあるため、フォークギターとは弾き方も構え方も大きく異なります。エレアコ化したガットギターは通称「エレガット」と呼ばれます。

ドブロ・ギター(リゾネイター・ギター)

リゾネイター・ギター

ボディに配置した金属製の共鳴板(=リゾネイター)で「音の伸び(=サスティン)」と音量を増強させたギターです。「ドブロ」はこの分野で有名なギターブランドの名前ですが、呼称として「リゾネイター」があまりにも冗長だったため、このタイプのギターの通称になっています。
ボディ本体は木製のものと金属製のものがあります。主にブルース系の音楽で使用されますが、深みのある太い音色はスライド奏法に最適です。スライドに興味があったら、一本持っておきたいギターです。


The Doobie Brothers – Dangerous

ピックギター


内田勘太郎 – 一陣の風 [MV]

アーチを描くボディトップ(アーチトップ)、「f」をかたどったサウンドホール(=Fホール)により、尋常でなく渋い印象のギターです。ブルース/ジャズで今なお多くのプレイヤーが愛用しているほか、電化した「フルアコ」として、広く利用されています。

12弦ギター

12弦ギター

普通のギターは6本の弦を張りますが、「12弦ギター」はその倍の12本の弦を張ります。通常の6本の弦に加えて1&2弦には同じ高さの弦(ユニゾン)を加えて、3~6弦には1オクターブ高い弦を加えて張ります。弾き方は6弦ギターと変わりませんが2本ずつ押さえなければならないのと、弦が多い分ネックが広くなっているのが弾きにくく感じてしまうかもしれません。でも、そのコーラスのかかったような独特の美しい響きを奏でることができます。

ポップスやフォークのリズム・ギター、フィンガー・ピッキングやスライドなどで使用される事があります。

ギター本体だけ買えばいいの?

「ギター1本だけでも、割とどうにかなる」のが、アコギのすごいところです。演奏にも手入れにも保管にも、アコギ用にさまざまなアイテムがありますが、ひとまず予算内で一番いいアコギを買っておいて、必要なものは順次足していく、という買い方ができます。

しかしながら、

  • 歯切れのいいストロークプレイには、指よりピックの方が有利
  • 曲を歌い手のキーに合わせるためには、カポタストが便利
  • スマホのアプリでチューニングができても、専用のチューナーの方が便利

というように、必要なものは最初からある程度揃っていた方がいいでしょう。

歌う人なら、最低限「ピック、カポタスト、チューナー」があれば、しばらくは不自由しません。「アコギ初心者セット」でリーズナブルに揃えてしまうのも賢い買い方ですが、歌わない人には必要性が低いため、カポタストが同梱されていないセットもあります。アコギで歌いたい人は、カポタストが入っているセットを探すか、カポタストだけ別で手に入れるかしてください。

これだけはそろえよう – アコギを弾くのに必要なアイテム
おすすめのクリップ式チューナー

まずはギターを手に入れて練習を始めることが第一ですから、単体で1万円を割るような格安のアコギでも最初は問題ありません。もちろんプロミュージシャンが仕事でこのような格安ギターを使用することはありませんし、アコギの音の良さは価格に正比例しますから、練習が進んで耳が肥えていくに連れて、自分のギターに不満が出てくるかもしれません。しかしアコギの基礎を身につけるにはそれで充分で、また「卒業」してからもメンテナンスやカスタマイズの実験台として活用することができます。

アコギ以外の楽器のことも知っておこう

箱形の胴体があって弦が張ってあるのにギターじゃなかったり、胴体が箱じゃなくて板なのにギターだったり、世の中はややこしいですね。ざっくり「ギター属」ではあるんですが、アコギ以外の楽器もちょっとだけチェックして、その違いを探してみましょう。

ウクレレ


平井 大 / For The Future from「OHANA」

ウクレレはハワイ発祥の、ハワイを象徴する楽器です。ギターに比べたらとても小さく、ギターでいう1〜2弦に相当する高い音域をカバーします。ナイロン製の弦を4本張りますが、4弦がプレーン(裸)弦で音の高い「ハイG(=ハワイ標準)」、4弦がワウンド(巻き)弦で音の低い「ローG(=ギター寄り)」のどちらかを選びます。ギターの奏法をそのまま使用することもできますが、ウクレレ独自の奏法も多くあります。

エレキギター


[Official Video] GRANRODEO – Can Do –

エレキギターはボディに取付けたマイク(ピックアップ)で弦の音を拾う楽器ですが、エレアコのマイクとは構造が異なっており、まったく違う音になります。バンドアンサンブルで演奏することが普通で、伴奏だけでなくリード(メロディ弾き)も重視されます。金属の弦を6本張り、チューニングもアコギと同じですから、アコギで覚えたコードをそのまま使うことができます。

ベース


Alissia, “Let it Out” – Live at Berklee College of Music

アコギとエレキのように、ベースにもエレキベースとアコースティックベースがあります。ギターよりもぐっと低い音域をカバーし、2フィンガー、スラップなど独特の奏法があります。弦は4本が基本ですが、使い手の目的に合わせて5本、6本、それ以上、というようにさまざまなタイプのベースがつくられています。