
突然ですが、お気に入りの弦はありますか?弦は「弾きやすさと音」という、ギターにとって最も重要な要素に直接影響するアイテムです。
古い弦を新しく交換したらそれだけでサウンドが若返りますし、違う弦を張ることでギターのキャラクターをちょっと変化させることができます。好みに沿った弦を選ぶことで、あなたのギターはもっと良くなります。
そんなわけで、今回は「アコギ弦の選び方」というテーマで、定番3本・ゲージ・素材・個性派・高級モデルまでひと通りチェックしていきましょう。
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ジョン・メイヤー氏ならErnie Ball「EARTHWOOD」フォスファーブロンズのライトかカスタム・ライト、というようにギター弾きは自分の愛用する弦はコレ、と決めています。いろいろ試して、お気に入りの弦を見つけてください。
世の中にはいろいろなブランドのいろいろな弦がありますが、あれこれ見ていく前にひとまず定番を押さえておきましょう。定番モデルの印象を覚えておけば、他モデルとの違いも分かりやすくなります。
Martin、D’Addario、Elixirの「ライト」ゲージが、現代の定番とみてまず間違いありません。これらはどのショップにもたいがい置いてあり、入手のハードルが極めて低いのも大きなポイントです。
Martin「MA140」
Martin(マーチン)はギターメーカーとしてざっくり200年近い歴史を持つ、アコースティックギターの元祖とも呼べるブランドです。
弦を自社で製造するようになったのは1970年にDarco Strings社を傘下に収めてからで、ギター弦メーカーとしてはだいたい半世紀の歴史があります。
MA140は「Authentic Acoustic SP」シリーズの80/20 Bronze・ライトゲージ(12-54)で、現行ラインナップの中核を担う1セットです。
サウンドとしては中低音の存在感があり、暖かさと迫力があります。
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D’Addario「EJ11」
D’Addario(ダダリオ)は17世紀のイタリア・サッレ村に起源をもつ、長い歴史を誇るブランドです。ギター用のスチール弦については1956年に製造を開始しており、ジョン・ダダリオ・シニアの代に本格参入しました。
弦に特化したメーカーということもあって、多くのギターメーカーが出荷用の弦として採用しています。
EJ11はライトゲージ(12-53)、ニューヨーク工場で生産される6角形芯線の定番セットです。
サウンドは、張りのあるきらびやかさとしっかりした低域が特徴です。
EJ11を…
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Elixir「16052」
Elixir(エリクサー)は1997年に登場した、コーティング弦の先駆者です。エリクサーの登場により、従来の弦は「ノンコーティング弦」と呼ばれるようになりました。
理論上「弾かなかったら永久に錆びない」超ロングライフを実現し、現在では出荷用の弦として採用しているギターメーカーも少なくありません。
16052はフォスファーブロンズのライト(12-53)で、極薄コーティング「NANOWEB」を全弦に施したシリーズの代表モデルです。
音色は非常にブライトな、クッキリとしたキャラクターです。
NANOWEB 16052を…
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ではいよいよ、弦の選び方を見ていきましょう。最も重要なのは、「ゲージ(弦の太さ)」と「材料・製法」の二つです。ここにブランド各社の個性やモデルごとのコンセプトが加わることで、さまざまな弦が開発されています。

マーチン弦のパッケージ。左肩部分に色分けされているのが、ゲージの表示。
「1弦から6弦まで、それぞれ直径何インチか」という意味で、「ゲージ」という言葉が使われます。
一見同じに見える弦でも、「全体的に細めの6本(低いゲージ)」とか「全体的に太めの6本(高いゲージ)」といったものがあるわけです。
ゲージを下げれば弦は柔らかく、ゲージを上げれば弦は硬くなり、音や演奏性に影響します。
なお、ゲージを上げる場合にはナット調整が必要になることがあります。
同じメーカーでもゲージを変えると全く違った印象が得られますし、同じか近いゲージならばメーカーや銘柄による個性の違いを感じることができます。
ここではマーチン「AUTHENTIC ACOUSTIC SP」を例にとって、主だったゲージとその特徴をチェックしていきましょう。
「ライト」は現代の標準的なゲージで、ほとんどのアコースティックギターがこのライトゲージで調整され、出荷されます。
アコギ本来の音や感触は、このライトゲージを張った状態だと言って良いでしょう。
音量、音のバランス共にちょうどよく、またしっかりと張りがあるので、思いきり力いっぱいストロークしてもまあまあ大丈夫です。
「エクストラ・ライト」は、弦が硬くてFが押さえられない、といった人の救いの手となる、最も細く最も柔らかいゲージです。
とはいえ初心者用というわけではなく、ソロギターやリードプレイなど繊細なタッチを要する演奏に向けた設計です。
しかしその柔らかさゆえに、パワフルにかき鳴らすのには向いていません。
これ以上細いゲージが必要であれば、エレキギターの弦に替えることも可能です。
今でこそライトゲージにその座を譲っていますが、「ミディアム」はその名の通り、かつては標準的なゲージでした。
張りが強く、ハードなピッキングや力一杯のストロークで、えも言われぬ迫力のあるサウンドが得られます。
オープンチューニングやダウンチューニングに活用できるほか、スライド奏法のためにも有用です。
「カスタム・ライト」は、ライトとエクストラ・ライトの中間に位置するゲージです。
ソロやリードプレイもしつつ、しっかりストロークもしたいという人にお勧めです。
日ごろエレキギターを弾いている人にとっては、程よい硬さがちょうど良く感じられます。

いろいろなブランドが「ライト」「エクストラ・ライト」など、同じような名称でゲージを表示しています。しかしその内容には多少のバラつきが見られます。
主だったブランドのライトゲージを比べてみましょう。上の表では特に、3弦と6弦の太さに違いが見られますね。
アーニーボールのライトゲージは、他社で言うカスタム・ライトに相当しているようです。
アコギの弦は「スチール弦」と呼ばれますが、どんな鉄が使われているかは各社各様で、そのレシピは企業秘密です。巻弦に使われる金属にも種類があり、製法もさまざまです。
ここではその主だったバリエーションを、ブランド代表モデルとあわせて見ていきましょう。
| 素材・製法 | 音色傾向 | 寿命の目安 | 代表モデル |
|---|---|---|---|
| 80/20 Bronzeブロンズ | 中低域が豊か・あたたかい | 標準約2週間 | John Pearse 80/20 / Gibson SAG-BRW |
| Phosphor Bronzeフォスファー | 低域&高域が伸びる・きらびやか | 標準+α | GHS Phosphor / S.I.T. Royal Bronze |
| Silk & Steelコンパウンド | 甘く柔らか・メロウ | 標準 | Martin MA130 |
| コーティング弦 | ブライト〜ナチュラルまで多彩 | 3〜5倍 | Elixir / D’Addario XS / Martin Lifespan 2.0 |
ライトゲージは弦6本でだいたい75Kg、ミディアムともなればおおむね85Kgもの張力が楽器本体にかかります。
「こんなに強い力がかかっているのだから、弦を張りっぱなしにしていたらネックが曲がってしまうのではないだろうか」と心配になるのもごもっともです。
しかしながら、現代のギターでライトゲージであれば、張りっぱなしでほぼ大丈夫です。
個体差によりけりでトップ材が湾曲する可能性はありますが、こちらが心配でも保管時に1、5、6弦を1音くらい下げる程度でだいたい大丈夫です。
「ブロンズ(青銅)」が、アコギ弦のスタンダードです。
ブロンズは黄色がかった色調を持つ、銅と亜鉛の合金です。ベルメタルの別名を持つ「80/20ブロンズ」は銅80%と亜鉛20%の合金で、このほか秘伝の配合で作られる弦も多くあります。
「ブロンズ弦」は3〜6弦の巻線にブロンズを使用している弦で、1&2弦の本体および3〜6弦の芯線にはスチールが使われます。
サウンドとしては中低域が特に豊かで、ストロークすればズドンと迫力ある音が、アルペジオなら丸みのある太い音が得られます。
比較的低価格で入手できるのも嬉しいポイントです。
ちょっと赤みがかった色調の「フォスファーブロンズ(リン青銅)」は、ブロンズに少量のリンを混ぜた金属です。
近年ではギターメーカーの出荷用に採用される例が増えており、スタンダードの座をブロンズから奪おうと言う情勢です。
ブロンズ弦より張力がやや強く、ちょっと値段が上がり、弦としての寿命もちょっと長くなっています。
低域と高域が持ち上がり、ストロークならジャキンと立つ、またアルペジオならキラキラときらびやかな音が得られます。
ほとんどの弦メーカーが、ブロンズとフォスファーブロンズの両方をラインナップしています。
コンパウンドとも呼ばれる「シルク&スチール」弦は、巻弦の芯線にシルクを巻きつけ、その上に金属の巻線を巻きつけます。
温かく甘い印象のサウンドを持ち、また柔らかい手触りで押さえやすく、ソロやアルペジオに特に向いています。
巻線には銀メッキを施した銅線が使われるのが一般的ですが、ここに通常のブロンズやフォスファーブロンズを用いた弦もリリースされています。
エリクサーを代表とする「コーティング弦」は、弦を薄い膜でコーティングして酸素や水分、皮脂などに弦が直接触れないようにすることで、飛躍的な長寿命を達成した弦です。
メーカーごとにさまざまなコーティング技術が傾注されますが、基本的にどれも常識外のロングライフ化を目指すと同時に、手触りやサウンドへの影響を極小化させるステルス化を目指しています。
コーティングされているぶんだけ高額になりますが、通常の弦の3倍以上も新品のサウンドが維持できますから、長期的にはリーズナブルだと言えます。
ブロンズとフォスファーブロンズには価格の差こそあれ、優劣があるわけではないので純粋に好みで決めてしまって大丈夫です。
音の違いにどういう印象を抱くかも、人によってさまざまです。中音域に注目する人にとってはブロンズ弦の方が音が太いと感じられますし、低域に注目する人はフォスファーブロンズ弦の方が太く感じられます。
シルク&スチール弦は総じてメロウな印象ですが、巻線の種類により個性が分かれます。
コーティング弦の場合、コーティングが厚ければ高域が削れて甘い印象になりますが、薄ければその影響はほとんど感じられません。
ちょっと聴き比べてみましょう。あなたの耳には、どう聞こえましたか?
All Acoustic Strings Explained | Guitar Tech Tips | Ep. 49 | Thomann
(1:02〜)こちらはダダリオ社製80/20ブロンズ弦を張っています。
(2:08〜)こちらはアーニーボール社製フォスファーブロンズ弦で、同じギターで同じプレイをしています。
(6:17〜)こちらはジョン・ピアーズ社製シルク&スチール弦です。
(2:56〜)こちらはエリクサー社製フォスファーブロンズ&極薄コーティングです。
ここまで一般的な弦をチェックしてきましたが、メーカー各社はこれまでにない発想の、新しい弦の開発にも積極的です。
柔軟な発想が実現させたであろう、個性派の弦を見ていきましょう。

「Ernie Ball(アーニーボール)」は、1962年にSlinkyシリーズを発表してエレキ弦の常識をリードした、歴史的に重要なメーカーです。
Slinky以降エレキ3弦の細弦化/プレーン化が広まり、現代のエレキ弦の流れを作りました。
弦やグッズ、楽器本体に至る多角的なラインナップを展開していますが、アコギ弦にもしっかり注力しています。
「アルミニウム・ブロンズ」は、巻弦のブロンズにアルミニウムを混ぜているのが最大の特徴です。
アルミは非鉄金属の中でも耐腐食性に優れ、錆に対して強い性質を持っています。
その影響で、ノンコーティングでありながらコーティング弦に比肩するロングライフを達成しています。
サウンド面では特に強力なローエンドとクリアでクリスピーなハイエンドを持ち、伝統的なブロンズ弦に比べて全ての音域においてより際立たせたトーンを実現しています。
Ernie Ball Aluminum Bronze Strings: Andy McKee
アルミなんて混ぜて大丈夫なの?という心配を吹っ飛ばす、たいへん美しい音色。
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La Bella「ゴールデン・アロイ」は、銅80&亜鉛20の配合で作った独自のブラス(真鍮)を巻線に採用した弦です。
ブラスはサックスやシンバルにも使われる、音楽との相性の良い金属です。
底抜けに明るいトーンが最大の持ち味で、サスティンも長く、適度なテンション感で弾きやすいのが特徴です。
9-48のウルトラライトから14-58のヘヴィまで、ゲージは8段階あります。
La Bella Acoustic Guitar Strings – Golden Alloy
ノスタルジーすら感じさせる、カラッとした明るい音色。

Martin「レトロ」シリーズは、スズメッキ鋼の芯線にモネル(ニッケルと銅の合金)を巻き線に使用した、1930年代マーチン弦の復刻モデルです。
2弦、4弦、5弦の太さを現代風にアレンジしており、楽器の材料がそのまま鳴っているかのようなメロウであり歯切れの良い音で、現代の感覚で快適に演奏できます。
意外と知られていないMartin「Retro弦」の魅力 – ギターニュース.com
売価で¥2,000を上回る、高級モデルも見ていきましょう。日常的に使用するのにはさすがに勇気と経済力が必要ですが、一般的な弦と何がどこまでちがうのか、好奇心をそそりますね。

「オプティマ」は1920年に創業した、ドイツのハンドメイド弦メーカーです。
材料と製法に妥協せず、芯のあるはっきりとした音色とプレイアビリティの高さ、正確なピッチと抜群のチューニング精度を達成しています。
「24K ゴールド」シリーズは、全弦に24金メッキを施した、キンキラキンの弦です。
メッキがコーティングの役割を果たすため通常弦と比べて3倍以上の寿命を持つほか、金属アレルギーの人でも問題なく演奏できます。
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「Pyramid Strings」は1850年ドイツにて創立、ギターはもとよりバイオリン属、ハープ、リラ、ダルシマーなど様々な楽器の弦を作っています。
プレーン弦にはシルバー・プレーテッド・スチール、巻弦は六角形の芯線にフォスファーブロンズを巻いた作りで、酸化や摩耗、劣化に強く、滑らかなフィンガータッチとブライトで美しい音色が長期間持続します。
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同社のシルク&スチール弦は、芯線にイタリア製シルクと銀メッキの銅線を手巻きして作られます。
通常の弦より張力が和らげられており、柔らかな手触りと甘い音色がフィンガーピッカーに最適です。ゲージはライト(11-51)とミディアム(12-56)の2タイプです。

「トマスティック・インフェルト」は1919年にバイオリン製作者フランツ・トマスティック氏と土木技術者オットー・インフェルト氏が設立した、音楽の都ウィーン(オーストリア)のメーカーです。
弦と言えばガット(羊の腸)だった時代、同社は最初から金属弦に注目し、品質と経済性で支持を集めます。
「スペクトラム・ブロンズ」は、プロミュージシャンの要求により特別に開発された、ライブやレコーディングなど大切な時にこそ使う特別な弦です。
独自製法「シルクインレイ・テクノロジー」により芯線と巻線の間にシルクを挟み込む、シルク&スチールと同じ構造ながら、素晴らしい暖かみと爆発するような音の切れ味を持っています。
以上、アコースティックギター弦についていろいろ見てきました。
どんな弦を使うかで、ギターの弾きやすさや音は大幅に変化します。
最初から定番弦に決定してしまっても良いですし、次々といろいろな弦を試していくのも面白い試みです。
ぜひ、お気に入りの弦を探し出してくださいね。
なお、弦のパッケージをギターケースに忍ばせておけば、今どんな弦を張っているのかを忘れずに済みますよ。
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