アコースティックギター弦の種類と選び方[記事公開日]2022年5月13日
[最終更新日]2022年10月4日

BRONZE(80/20BRONZE)

「ブロンズ(青銅)」が、アコギ弦のスタンダードです。ブロンズは黄色がかった色調を持つ、銅と亜鉛の合金です。ベルメタルの別名を持つ「80/20ブロンズ」は銅80%と亜鉛20%の合金で、このほか秘伝の配合で作られる弦も多くあります。「ブロンズ弦」は3~6弦の巻線にブロンズを使用している弦で、1&2弦の本体および3~6弦の芯線にはスチールが使われます。

サウンドとしては中低域が特に豊かで、ストロークすればズドンと迫力ある音が、アルペジオなら丸みのある太い音が得られます。比較的低価格で入手できるのも嬉しいポイントです。

JOHN PEARSE「80/20 Bronze Wound」

「ジョン・ピアーズ」のブロンズ・ワウンドは、特にフィンガーピッキングに良好な弾きやすさと太く抜けるサウンドを持った高級弦です。エクストラ・ライトからミディアムまでの幅で8種類もゲージを準備しており、自分にとってベストなゲージをしっかり検討できます。なお、「150 New Standard」はキング・クリムゾンのギター奏者ロバート・フリップ氏の提唱する、ニュースタンダード・チューニング専用の弦です。

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Gibson「80/20 Bronze Acoustic Guitar Strings」

ギブソンのブロンズ弦は同社のマスタールシアーにより開発された、特にギブソンのギターにベストマッチする弦です。ギブソン製ギター本来のサウンドを、整ったバランスで得ることができます。ただし、他社のギターに張ってもギブソンの音になるとは限りません。

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PHOSPHOR BRONZE

ちょっと赤みがかった色調の「フォスファーブロンズ(リン青銅)」は、ブロンズに少量のリンを混ぜた金属です。近年ではギターメーカーの出荷用に採用される例が増えており、スタンダードの座をブロンズから奪おうと言う情勢です。

ブロンズ弦より張力がやや強く、ちょっと値段が上がり、また弦としての寿命もちょっと長くなっています。低域と高域が持ち上がり、ストロークならジャキンと立つ、またアルペジオならキラキラときらびやかな音が得られます。ほとんどの弦メーカーが、ブロンズとフォスファーブロンズの両方をラインナップしています。

GHS「Phosphor Bronze」

「GHS」は材料と製法の組み合わせで10タイプの弦をリリースしており、サウンドのブライトさで序列を作っています。このうちフォスファーブロンズは上から5番目で、同社ラインナップではだいたい真ん中という立ち位置です。寿命はそれほど長くありませんが、キラキラするけどギラギラしないナチュラルな響き方が最大の魅力です。

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S.I.T「Royal Bronze」

「SIT」は「ステイ・イン・チューン(チューニングぴったり)」を社名にするほど、チューニング安定度の高さを追及しているブランドです。同社の「ロイヤル・ブロンズ」は、独自の「フュージョンワウンド工法」で巻弦の音色を濁らせるルーズスポットの解消に成功しており、輪郭ある明るいサウンドと大きな音量を長時間持続させることができます。

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Silk & Steel(Compound)

コンパウンドとも呼ばれる「シルク&スチール」弦は、巻弦の芯線にシルクを巻きつけ、その上に金属の巻線を巻きつけます。温かく甘い印象のサウンドを持ち、また柔らかい手触りで押さえやすく、ソロやアルペジオに特に向いています。巻線には銀メッキを施した銅線が使われるのが一般的ですが、ここに通常のブロンズやフォスファーブロンズを用いた弦もリリースされています。

Martin「MA130(AUTHENTIC ACOUSTIC SP SILK & STEEL FOLK Custom)」

Martin「MA130」は巻き線に銀メッキ銅を用いた、王道のシルク&スチール弦です。比較的低価格で流通しているので、お試しに最適です。銀メッキ銅モデルのゲージは1種類のみですが、マーチンではこのほかブロンズ巻きとフォスファーブロンズ巻きをリリースしており、こちらにはゲージの選択肢が幅広く用意されています。

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コーティング弦

エリクサーを代表とする「コーティング弦」は、弦を薄い膜でコーティングして酸素や水分、皮脂などに弦が直接触れないようにすることで、飛躍的な長寿命を達成した弦です。メーカーごとにさまざまなコーティング技術が傾注されますが、基本的にどれも常識外のロングライフ化を目指すと同時に、手触りやサウンドへの影響を極小化させるステルス化を目指しています。

コーティングされているぶんだけ高額になりますが、通常の弦の3倍以上も新品のサウンドが維持できますから、長期的にはリーズナブルだと言えます。

CLEARTONE「74」「76」

「クリアートーン」は、自身のバンド「エヴァリー・ブラザーズ」で名を成したフィル・エヴァリー氏が1997年に設立したブランドです。1マイクロメートル(0.001ミリ)以下という極薄の膜で全弦を覆う「EMPコーティング」は、電子機器に使用するコーティング剤から開発、パワフルなストロークを受けても剥けない耐久性を達成しています。2010年にはMartin社とライセンス契約を締結し、同社のコーティング弦「Lifespan SP(旧モデル)」にEMPコーティングが採用されています。

なお、「7410」「7412」など74シリーズはフォスファーブロンズ弦、「7611」「7613」など76シリーズはブロンズ弦です。

74を…
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D’Addario「XS Phosphor Bronze」

ダダリオはこれまでに、「EXP(巻線に極薄コーティング)」「XT(全弦コーティング)」という二つのコーティング弦をリリースしています。「XS」シリーズはその最新版で、プレーン弦には独自のポリマーコーティング、ワウンド弦には超薄膜コーティング、という2種類のコーティングを駆使して弦を保護します。なお、今のところこのXSシリーズはフォスファーブロンズ弦のみリリースされています。

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DR「BLACK BEAUTIES」

「DR」は、ギルド創始者アルフレッド・ドロンジ氏のご子息マーク・ドロンジ氏が1989年に設立した、ハンドメイド弦の代表格です。コンピュータ制御との比較検証を経てハンドメイドの意義を見出し、今なお手作りにこだわっています。

同社の「ブラック・ビューティー」は、同社独自の「K3テクノロジー・コーティング」に色を加えた、全身真っ黒のコーティング弦です。ノンコーティング弦に対して寿命だけでなくサウンドでも勝利することを目指しており、コーティングされていないかのような触り心地、そして豊かな音量と不要な倍音を抑えたクリアなサウンドを達成しています。DRではこのほか、さまざまなカラ―リングのコーティング弦がリリースされています。

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Elixir「POLYWEB 11050」

Elixir「ポリウェブ」は、ギター弦業界を震撼させた同社のコーティング弦第一号です。巻弦をすっぽりとコーティングし、プレーン弦には耐腐食加工を施すことで、全弦のロングライフを達成しています。現代の感覚では肉厚なコーティングですが、極薄コーティングが群雄割拠するコーティング市場において、むしろ唯一無二の存在感を誇ります。

コーティングされていることが触って認識できる滑らかな手触りで、フィンガリングノイズやフレットノイズが抑えられ、甘くウォームなサウンドが得られます。

POLYWEB 11050を…
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La Bella「 Vapor Shield Acoustic」

「ラベラ」は17世紀のイタリアにルーツを持つ名門で、ラベラのブランド名も1920年からという100年の歴史があります。同社のコーティング弦「VSA(ヴェイパー・シールド・アコースティック)」は、独自開発したイオン蒸気処理によるコーティングを全弦に施しており、ノンコーティング弦さながらのトーンとタッチフィーリングを保ちながら、長寿命を実現しています。コーティングが剥離しない上、弦アースが確保できるのがメリットです。

いろいろあるけど、どれが好き?

ブロンズとフォスファーブロンズには価格の差こそあれ、優劣があるわけではないので純粋に好みで決めてしまって大丈夫です。音の違いにどういう印象を抱くかも、人によってさまざまです。中音域に注目する人にとってはブロンズ弦の方が音が太いと感じられますし、低域に注目する人はフォスファーブロンズ弦の方が太く感じられます。

シルク&スチール弦は総じてメロウな印象ですが、巻線の種類により個性が分かれます。コーティング弦の場合、コーティングが厚ければ高域が削れて甘い印象になりますが、薄ければその影響はほとんど感じられません。ちょっと聴き比べてみましょう。あなたの耳には、どう聞こえましたか?

All Acoustic Strings Explained | Guitar Tech Tips | Ep. 49 | Thomann

(1:02~)こちらはダダリオ社製80/20ブロンズ弦を張っています。

(2:08~)こちらはアーニーボール社製フォスファーブロンズ弦で、同じギターで同じプレイをしています。

(6:17~)こちらはジョン・ピアーズ社製シルク&スチール弦です。

(2:56~)こちらはエリクサー社製フォスファーブロンズ&極薄コーティングです。

様々な素材や製法で作られる弦

ここまで一般的な弦をチェックしてきましたが、メーカー各社はこれまでにない発想の、新しい弦の開発にも積極的です。柔軟な発想が実現させたであろう、個性派の弦を見ていきましょう。

Ernie Ball「Aluminum Bronze」

「Ernie Ball(アーニーボール)」は、1960年代にエレキギターの3弦をプレーン弦にした功績で、歴史的に重要なメーカーです。弦やグッズ、楽器本体に至る多角的なラインナップを展開していますが、アコギ弦にもしっかり注力しています。

「アルミニウム・ブロンズ」は、巻弦のブロンズにアルミニウムを混ぜているのが最大の特徴です。アルミは非鉄金属の中でも耐腐食性に優れ、錆に対して強い性質を持っています。その影響で、ノンコーティングでありながらコーティング弦に比肩するロングライフを達成しています。サウンド面では特に強力なローエンドとクリアでクリスピーなハイエンドを持ち、伝統的なブロンズ弦に比べて全ての音域においてより際立たせたトーンを実現しています。


Ernie Ball Aluminum Bronze Strings: Andy McKee
アルミなんて混ぜて大丈夫なの?という心配を吹っ飛ばす、たいへん美しい音色。

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DR 「ZEBRA」

DR「ゼブラ」は、ニッケルプレート材とフォスファーブロンズ材を交互にハンドワウンドしたことで、アコギ弦とエレキ弦の特徴の両方を兼ね備える革新的な弦です。ピックアップがピエゾでもマグネットでも、良好に使用できます。国内ではエレアコ用の弦として見られがちですが、DR側はエレキでもアコギでも使用できる弦として扱っており、ピエゾピックアップ搭載のエレキギターで特に良好です。トレブルの立つ生き生きとした弦の音色を、そのままスピーカーからアウトプットできます。

DR「ゼブラ」の巻弦。金色と銀色が美しいストライプを作っている。

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La Bella「Golden Alloy」

La Bella「ゴールデン・アロイ」は、銅80&亜鉛20の配合で作った独自のブラス(真鍮)を巻線に採用した弦です。ブラスはサックスやシンバルにも使われる、音楽との相性の良い金属です。底抜けに明るいトーンが最大の持ち味で、サスティンも長く、適度なテンション感で弾きやすいのが特徴です。9-48のウルトラライトから14-58のヘヴィまで、ゲージは8段階あります。


La Bella Acoustic Guitar Strings – Golden Alloy
ノスタルジーすら感じさせる、カラッとした明るい音色。

Martin「Retro」

Martin「レトロ」シリーズは、スズメッキ鋼の芯線にモネル(ニッケルと銅の合金)を巻き線に使用した、1930年代マーチン弦の復刻モデルです。2弦、4弦、5弦の太さを現代風にアレンジしており、楽器の材料がそのまま鳴っているかのようなメロウであり歯切れの良い音で、現代の感覚で快適に演奏できます。

意外と知られていないMartin「Retro弦」の魅力 – ギターニュース.com


ちょっと勇気のいる高級モデル

売価で¥2,000を上回る、高級モデルも見ていきましょう。日常的に使用するのにはさすがに勇気と経済力が必要ですが、一般的な弦と何がどこまでちがうのか、好奇心をそそりますね。

OPTIMA「ACOUSTIC GUITAR 24K GOLD」

「オプティマ」は1920年に創業した、ドイツのハンドメイド弦メーカーです。材料と製法に妥協せず、芯のあるはっきりとした音色とプレイアビリティの高さ、正確なピッチと抜群のチューニング精度を達成しています。

「24K ゴールド」シリーズは、全弦に24金メッキを施した、キンキラキンの弦です。メッキがコーティングの役割を果たすため通常弦と比べて3倍以上の寿命を持つほか、金属アレルギーの人でも問題なく演奏できます。

ACOUSTIC GUITAR 24K GOLDを…
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Pyramid Strings 「AG phosphor Bronze」

「Pyramid Strings」は1850年ドイツにて創立、ギターはもとよりバイオリン属、ハープ、リラ、ダルシマーなど様々な楽器の弦を作っています。日本で手に入るアコギ弦はフォスファーブロンズ/ライトゲージの1択ですが、プレーン弦にシはルバー・プレーテッド・スチール、巻弦は六角形の芯線にフォスファーブロンズを巻いた作りで、酸化や摩耗、劣化に強く、滑らかなフィンガータッチとブライトで美しい音色が長期間持続します。

AG phosphor Bronzeを…
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LaBella「Silk & Steel」

同社のシルク&スチール弦は、芯線にイタリア製シルクと銀メッキの銅線を手巻きして作られます。通常の弦より張力が和らげられており、柔らかな手触りと甘い音色がフィンガーピッカーに最適です。ゲージはライト(11-51)とミディアム(12-56)の2タイプです。

Thomastik-Infeld「Spectrum Bronze」

「トマスティック・インフェルト」は1919年に設立された、音楽の都ウィーン(オーストリア)のメーカーです。弦と言えばガット(羊の腸)だった時代、同社は最初から金属弦に注目し、品質と経済性で支持を集めます。「スペクトラム・ブロンズ」は、プロミュージシャンの要求により特別に開発された、ライブやレコーディングなど大切な時にこそ使う特別な弦です。

独自製法「シルクインレイ・テクノロジー」により芯線と巻線の間にシルクを挟み込むシルク&スチールと同じ構造ながら、素晴らしい暖かみと爆発するような音の切れ味を持っています。


以上、アコースティックギター弦についていろいろ見てきました。どんな弦を使うかで、ギターの弾きやすさや音は大幅に変化します。最初から定番弦に決定してしまっても良いですし、次々といろいろな弦を試していくのも面白い試みです。ぜひ、お気に入りの弦を探し出してくださいね。なお、弦のパッケージをギターケースに忍ばせておけば、今どんな弦を張っているのかを忘れずに済みますよ。