YAMAHAトランスアコースティック:生音にエフェクトがかかるアコギ[記事公開日]2026年5月16日
[最終更新日]2026年05月30日

YAMAHA トランスアコースティックギター

YAMAHAは圧倒的な開発力を誇り、とくに「音」に対する追求と研究において、他の追随を許さない独走態勢にあるといえます。これまでも、

  • A.R.E. (Acoustic Resonance Enhancement):木材を改質し、熟成された温かみのあるサウンドを作り上げる技術。楽器だけでなく、ヤマハ銀座ホールのステージ床材にも採用されている。
  • I.R.A. (Initial Response Acceleration):塗料や接着剤などのストレスを軽減し、楽器の振動を促進させる技術。エレキギターやベースで採用される。
  • サウンドチューニング:ヤマハ株式会社のサウンド開発センターが、ヤマハ発動機との協業で自動車の排気音を磨き上げる技術。レクサスLFAなどで採用された。
  • PIV(Particle Image Velocimetry):リコーダー内の空気の流れを可視化して計測する技術。

などなど、独自技術は枚挙にいとまがありません。
今回注目する「トランスアコースティック(TransAcoustic。以下TA)」もその一つで、第一に「アコースティックピアノの音量調節」をやってのけ、世界を驚愕させました。
そしてアコースティックギターにおけるTAでは、なんと「ギター本体からエフェクト音が出る」というのです。
ギターアンプが内蔵されているわけでも、エフェクターが内蔵されているわけでもありません。

さらに2024年11月にはディレイやルーパー、Bluetoothまで詰め込んだ第2世代TAが登場し、進化はとどまるところを知りません。
いったい何がどうなっているのかわからない、「アコースティックの向こう側」へ私たちを連れて行ってくれる「トランスアコースティック」に、今回は注目していきましょう。

【Trans-~】
意味:「~を横断して」「~の向こう側へ」
用例:trans-Asian railway(アジア横断鉄道)


Yamaha TransAcoustic Guitar – LL-TA/LS-TA
「アンプにもエフェクターにもつないでいません(No External Amplification、No External Effects.)」という言葉に嘘偽りはなく、本当にこの楽器本体だけで、リバーブやコーラスがかかるんです。自宅で気軽に演奏するのにこのリッチなサウンドが得られるのは、他では得られない大きなメリットだと言えるでしょう。しかもこのエフェクト音は理論上「楽器本体の音」なので、エフェクト音が加わっていてもこれは「生音」です。こりゃあすごい。

トランスアコースティックの特徴:第1世代と第2世代で比較

TAは2016年の第1世代登場から進化を続けており、2024年11月にはディレイ・ルーパー・Bluetoothを搭載した第2世代モデル「TAG3 C」が登場、続いて2025年・2026年にコンサート版や中位・入門グレードが投入されました。
まずはTAの基本である「楽器本体だけでエフェクトがかかる」仕組みと、世代ごとの違いをチェックしていきましょう。

楽器本体だけでリバーブ・コーラスが使える

TAは特別な機材がいらず、自宅から出ずに、手元から出てくる生の音にエフェクトをかけられる世界初のアコースティックギターです。
第1世代TAで使用できるエフェクトは

の2つで、どちらかだけでも、両方でも使用できます。
総単板ボディの楽器本来の鳴りにエフェクト音が追加されると全体の音量が増して、とても気持ちよく演奏できます。
エレアコとして使用するときにもこのエフェクトは有効ですから、ライブ会場に持っていく荷物を減らすことができます。

第2世代ではディレイ・ルーパー・Bluetoothまで搭載

トランスアコースティックギター専用アプリ

2024年11月発売の「TAG3 C」を皮切りに登場した第2世代TAは、第1世代のリバーブ・コーラスに加えて、

  • ディレイ:原音に遅延音を重ねる定番エフェクト。
  • 内蔵ルーパー:本体だけで演奏を録音 → ループ再生、上位機種「TAG3 C/TAS3 C」では最大10フレーズまで保存可能。
  • Bluetooth:スマホやタブレットからの音を本体スピーカーで再生し、伴奏や課題曲に合わせて練習できる。
  • 専用アプリ「TAG Remote」:iOS/Android対応。エフェクトのパラメーター調整がスマホからできる。

を新たに手に入れました。
エフェクトを生み出すアクチュエーターも2基構成にアップデートされ、より深くリッチな響きを実現しています。

シンプルな操作系(第1世代)

トランスアコースティックギター:コントロール

第1世代の操作系は「ボディサイドにジョグダイヤル3つ」という極めてシンプルなものです。

  • リバーブ量:残響音の量を操作する。「12時」を境に「Room」と「Hall」に切り替わる。
  • ラインアウトボリューム:エレアコ時の音量操作。生音演奏時には、長押しでTA機能が起動される。
  • コーラス量:目一杯上げると十分なシュワシュワ感が味わえる。

以上3つを操作します。
二つのエフェクトの操作は「量だけ」なのでとっつきやすく、気軽に使用できます。
エレアコとしては、ボリュームだけのシンプル操作です。


Yamaha FG-TA TransAcoustic Dreadnought Acoustic-Electric Guitar
2017年に登場した、YAMAHA定番機種「FG」のトランスアコースティック。この動画では2種類のリバーブを、コーラスの有無も含めて聞き比べることができます。ザクザクいうFG特有の感触はそのままに、リバーブとコーラスがサウンドを一段押し上げています。

夢と基盤の詰まったボディ

トランスアコースティックギター内部
ボディ内部に仕込まれたアクチュエーター(第2世代TAS3 C)

サウンドホールから中をのぞくと、見慣れないサイズの基盤が確認できます。
この回路内で私たちをわくわくさせる何かが起こって、エフェクト音が出るわけです。
ちなみに第1世代は

  • TA起動中は内部基盤の緑LEDが
  • エレアコとしてプリアンプを起動しているときは赤LEDが

それぞれ点灯し、バッテリー残量も確認できます。
ちょっと本体が重たく感じるほどメカが組み込まれているとはいえ、楽器本来の鳴りに影響しにくいところに設置しているので、生音が制限される印象はほとんど感じられません。

エフェクト音を生む「アクチュエーター」

内蔵ピックアップが拾った弦振動は、TA専用プリアンプ回路に送られてエフェクト音に加工され、ボディ内に仕込まれた「加振機(アクチュエーター)」へ送られて振動となり、この振動がギター本体に伝えられて、エフェクト音としてアウトプットされます。
「楽器本体を振動させることで、エフェクト音をシミュレートする」とも言い換えられます。
第2世代の上位機種「TAG3 C/TAS3 C」では、このアクチュエーターを2基構成に増やしてエフェクトの解像感を引き上げました。

第1世代は単3電池、第2世代上位はリチウムイオン

第2世代TA エントリーモデルの単3電池ボックス

第1世代のバッテリーボックスは、カートリッジに電池を二つ収め、ボディエンドに差し込む形式のものです。
エンドピンジャック近くに設置されており、生鳴りに影響しにくくなっています。
乾電池は単3を2本使用し、世界中どこのコンビニでも手に入る点がメリットです。
第2世代では仕様が分かれ、

TAG3 C/TAS3 C のマグネット式充電端子
TAG3 C/TAS3 C のマグネット式充電端子

  • 上位機種(TAG3 C/TAS3 C):内蔵リチウムイオンバッテリー+マグネット式充電端子で、最大5.5時間駆動。
  • 中位機種(TAG1 C/TAS1 C):同じくリチウムイオン内蔵で、Bluetoothにも対応。
  • 入門機種(TAG1E/TAS1E):単3乾電池2本駆動、Bluetoothは非搭載。

というラインナップになっています。
普段使いの軽快さで電池派の安心感を取るか、ライブやレコーディングで切れにくい大容量を取るか、用途に応じて選べるのが嬉しいところ。

シールドを挿すと、エフェクトもON

第1世代TA回路(システム70)では、ジャックにシールドを挿すとプリアンプと同時にエフェクトも起動します。
ボリュームつまみ長押しで「生音のエフェクトはON/OFFできる」のですが、シールドを介して送られるギターサウンドにはエフェクトがかかりっぱなしになるので、いらない時にはつまみを「0」にセットしておく必要があります。
通常のエフェクターのように、スイッチを入れた瞬間にエフェクトがかかる、という使い方は想定していないので、ライブ中のエフェクト切り替えはエフェクト量の調整で行います。


Yamaha CG-TA Classical TransAcoustic Nylon String Guitar | Demo
ライン(エレアコのクリアな硬い音)とエアー(マイクで拾う生の柔らかい音)をバランスよくブレンドすると、とても良好なサウンドを録音できます。それにしても、クラギのリードやアルペジオには、深いリバーブがよく似合います。しかもこの音を出すために「エフェクターボードを持っていかなくてもよい」というのは大きなメリットです。

トランスアコースティック・シリーズのラインナップ

ではトランスアコースティックの現行ラインナップをチェックしていきましょう。大きく分けると、

  • 第1世代TA:2016年〜のリバーブ+コーラスモデル。現行はカッタウェイ版のFGC-TA/FSC-TAと、クラシックのCG-TAの3モデル。
  • 第2世代TA:2024年11月に「TAG3 C」が登場、2025年〜2026年で上位・中位・入門のフルラインナップが登場。

の二系統があります。
第2世代側がメインストリームになりつつありますが、第1世代の音作り・操作感を好む声もまだ根強く、両世代が併売される独特の構成です。
2024年〜2026年に登場した第2世代TAは6モデル構成。
エフェクト数・ルーパーの有無・Bluetooth対応の3点で上位/中位/入門にきれいに整理されています。

モデル名 ボディシェイプ トップ材 サイド&バック TAシステム 指板/ブリッジ エフェクト 内蔵ルーパー Bluetooth アクチュエーター 電源 発売
TAG3 C上位機種 ドレッドノート・カッタウェイ シトカスプルース単板(A.R.E.処理) マホガニー単板 SYSTEM76 エボニー/エボニー リバーブ/コーラス/ディレイ あり 対応 2基 リチウムイオン内蔵 2024年11月
TAS3 C上位機種 コンサート・カッタウェイ シトカスプルース単板(A.R.E.処理) マホガニー単板 SYSTEM76 エボニー/エボニー リバーブ/コーラス/ディレイ あり 対応 2基 リチウムイオン内蔵 2025年11月
TAG1 C中位機種 ドレッドノート・カッタウェイ シトカスプルース単板 マホガニー SYSTEM78 ウォルナット/ウォルナット リバーブ/コーラス/ディレイ なし 対応 2基 リチウムイオン内蔵 2026年4月
TAS1 C中位機種 コンサート・カッタウェイ シトカスプルース単板 マホガニー SYSTEM78 ウォルナット/ウォルナット リバーブ/コーラス/ディレイ なし 対応 2基 リチウムイオン内蔵 2026年4月
TAG1Eエントリーモデル ドレッドノート スプルース単板 マホガニー SYSTEM70 ウォルナット/ウォルナット リバーブ/コーラス なし 非対応 1基 単3乾電池×2 2026年4月
TAS1Eエントリーモデル コンサート スプルース単板 マホガニー SYSTEM70 ウォルナット/ウォルナット リバーブ/コーラス なし 非対応 1基 単3乾電池×2 2026年4月

表:第2世代TA各モデルの比較

TAG3 C / TAS3 C(第2世代・上位機種)

2024年11月15日発売の「TAG3 C」と2025年11月発売の「TAS3 C」は、第2世代TAの旗艦モデルです。
シトカスプルース単板トップ(A.R.E.処理)、マホガニー単板サイド&バック、マホガニーネック、エボニー指板&ブリッジというオール単板の本格仕様で、ボディサイドにはベネチアンカッタウェイを備え、ハイポジションも気持ちよく弾けます。

エフェクトはリバーブ・コーラス・ディレイの3種。
ボディ内のアクチュエーターは2基構成にアップグレードされ、最大10フレーズ保存できる内蔵ルーパー、Bluetoothオーディオ再生、専用アプリ「TAG Remote」、マグネット式充電のリチウムイオンバッテリー(最大5.5時間駆動)と、自宅練習・配信・ライブ・録音の全ての場面で頼れる装備が詰まっています。

TAG1 C / TAS1 C(第2世代・中位機種)

2026年4月17日発表の「TAG1 C」と「TAS1 C」は、TAG3 C/TAS3 Cからルーパーを省きつつ、リバーブ・コーラス・ディレイの3エフェクトとBluetoothを継承した中位モデルです。
シトカスプルース単板トップ、マホガニーのサイド&バック・ネック、ウォルナット指板・ブリッジという仕様で、アクチュエーターも上位機種と同じ2基構成。
上位機種の音像感をぐっと身近にしてくれます。

TAG1E / TAS1E(第2世代・エントリーモデル)

同じく2026年4月17日発表の「TAG1E」と「TAS1E」は、第2世代TAのエントリーグレードです。
エフェクトはリバーブ・コーラスの2種に絞り、Bluetoothとルーパーを省略、電源も単3乾電池2本駆動とシンプルな構成にすることで、TAの本質である「本体からエフェクトが出る体験」を手の届く価格で提供しています。
カッタウェイは省かれ、伝統的なFGスタイル/コンサートシェイプを採用しています。

FGC-TA / FSC-TA(第1世代・カッタウェイ)

2022年2月発売の「FGC-TA」と「FSC-TA」は、第1世代TAにカッタウェイ仕様で追加された現行モデルです。
スプルース単板トップ、マホガニーサイド&バック、ナトーネック、ローズウッド指板という構成で、カッタウェイによってハイポジションへのアクセスを大きく改善するとともに、ボディの鳴りをよりタイトにしてリバーブ・コーラスのかかり具合をくっきりさせています。

CG-TA(第1世代・クラシック)

YAMAHA CG-TA

YAMAHAの伝統と言えば、ナイロン弦も鉄弦に負けていません。
CG-TA」はスペインの伝統技術とヤマハの最新技術とのコラボで作られたギターで、オバンコール独特の杢と響きを楽しむことができます。
ナイロン弦の柔らかい音色にリバーブをふわっとかけたときの気持ちよさは格別。
2019年3月発売の現行モデルで、2021年には大手楽器店のコンペで表彰されています。

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第1世代の生産完了モデル

2016〜2019年に登場した第1世代TAのうち、LL-TA/LS-TA/FG-TA/FS-TA、そしてパーラーサイズのCSF-TAは公式サイトで「生産完了品」と明示されており、新品在庫は流通在庫のみとなっています。
中古市場では今もしっかり見かけるモデルですが、これから新品で手に入れるならカッタウェイ仕様のFGC-TA/FSC-TAか、第2世代TAを選ぶことになります。

以上、YAMAHAが生み出した「トランスアコースティック」ギターをチェックしていきました。
YAMAHAはかねてより、プロミュージシャンばかりでなく「生活の中で楽器演奏を楽しむ人」に向けた製品開発を続けてきました。
第1世代でリバーブとコーラスを生み出したTAは、第2世代でディレイ・ルーパー・Bluetoothまでまとってさらに進化し、自宅で・カフェで・配信で・ステージで、ギター1本で完結する新しい音楽体験を提供しています。
ショップや展示会で見かけたら、ぜひこのTAの「生音の向こう側」に触れてみてください。