YAMAHA「STORIA(ストーリア)」は、ちょっと弾いてみたい、部屋においておきたい、といった気持に寄り添った、生活に彩りを添えるものとして考案されたギターです。製品名は英語で言う「Story」のイタリア語読み(Storia)に由来し、一人ひとりのストーリーを彩る要素でありたい、という願いが込められています。
世界的に有名なブランドの手に入れやすいモデルなので、これから始める人に大変良好なギターです。それでいて、安すぎないモデルだけに初心者用にはとどまらず、本格的な演奏活動までカバーできる性能も持っています。今回は、このYAMAHA「STORIA」に注目していきましょう。
Yamaha Acoustic Guitar | STORIA – Color your day
二人の時も、皆でいるときも、一人の時も、STORIAがあればもっと楽しい。
「ライフスタイルになじむデザイン」を目指して開発されたというSTORIAには、ルックスの良さに並々ならぬこだわりが込められています。本体はちょっと小さめで素朴な印象がありながら、細部にさりげない特別さがあり、女性目線ではかわいくてしょうがない、男性目線では機能面まで考え抜かれていてクールだと感じられます。STORIA特有の二つのデザインに注目してみましょう。
一般的なアコギでは、ボディ内は塗装しません。これに対してSTORIAでは、各モデルのカラーリングに合わせたマットな感じの色で、ボディ内を塗装しています。また、普通ならモデル名を表示したラベルを貼るところ、「STORIA」ロゴをスクリーン印刷して、シンプルにまとめています。
塗料は湿気を通さないため、内部塗装には湿度変化の影響を抑えるメリットも期待できます。同じ目的で内部を塗装するギターは存在しますが、ここに積極的に色を主張するのは、世界的に見ても独特のデザインです。
STORIAでは、オープンギアタイプのペグとストラップピン、ピンジャックまでをシャンパンゴールドで統一しています。淡い輝きは暖かみを感じさせ、宝石など合わせる相手を引き立たせ、また日本人の肌に馴染みやすいと言われています。シャンパンゴールドのギターパーツはこれまで存在しないので、STORIAのために開発されました。
これに合わせる形で、ブラス製ブリッジピンが部品の統一感をさらに強化しています。ブリッジピンは、ふつうプラスチック製か木製です。ブラス製が最初からついているギターは、世界広しといえどなかなかありません。ブラスは振動伝達にたいへん優れており、ブラス製ブリッジピンは、太くて力強く、明瞭なサウンドが得られる傾向があります。
STORIAは標準的なドレッドノートと比べ、全体的にちょっと小さめに作られています。そのため抱えやすく、また弾きやすくなっています。
STORIAの弦長は634mm(約25インチ)で、YAMAHAの定番機種「L」や「FG」の650mm(約25.6インチ)よりやや短く、また同社の「FS」と同じ寸法です。オーナーの手に「16mm」寄り添うことで、フレットの間隔がわずかに狭まり、そのぶん弦張力がほんのり抑えられます。「C」や「G7」といった指を伸ばす系のコードを押さえやすく、また「F」への挑戦もしやすくなります。出荷時の弦高も低めに設定されていますから、ギリギリ指が届いた弦が鳴るのか鳴らないのか、そういった紙一重の勝負でも音を出しやすくなっています。
ネックのグルップはスリムで、かつバインディング非採用の指板エッジは丸く整えられ、握りやすい設計です。エレキギターからの持ち替えも、違和感なくスムーズです。
初めてギターを買う時には「自分がステージに立つなんて、そんな大それたこと」なんて考えているかもしれません。しかし、未来に何が待ち構えているかは分かりません。そんなわけでSTORIAには、ひょっとしたらライブに出ちゃうかもしれない未来まで見据えて、ピエゾピックアップが備わっています。「YAMAHA THR30IIA」などエレアコ用アンプ、またライブ会場の音響設備に接続することで、爆音の演奏が可能です。
電池やプリアンプを内蔵しているわけではないので、楽器本体は重たくならず、また楽器本体の鳴りを損なうことも、「ここぞ」と言う時の電池切れに泣かされることもありません。
I GOT A NEW YAMAHA GUITAR!
かわいらしいルックスに加え、ガチのプロミュージシャンも納得できるサウンドがあります。
では、STORIAのラインナップをチェックしていきましょう。現在3モデルがリリースされているSTORIAは、マホガニーサイド&バック、ウォルナット指板&ブリッジ、ナトーネック、という木材構成が共通しています。このほか寸法など楽器本体の基本設計を共通としながら、トップ材と塗装にバリエーションを設けることで、それぞれのサウンドキャラクターを作っています。
「STORIA I」は、オフホワイトのスプルース単板をトップに、ボディは白いバインディング、インナーカラーはライトブルー、サウンドホール周りはマホガニーとアイボリーという意匠です。ボディ&ネック共に、光を柔らかく反射するセミグロス塗装が施されます。スプルースの個性が反映された、粒立ちの良い、明るいサウンドです。
「STORIA II」は、ナチュラルのマホガニー単板をトップに、ボディバインディング非採用、インナーカラーはウルトラマリン、サウンドホール周りはアバロントアイボリーという意匠です。ボディ外周にバインディングが巻かれないぶん、ボディのエッジが丸く整えられます。丸みを帯びた優しい印象が演出され、また演奏時には腕の触れる感触を和らげることができます。
こちらも「I」同様、ボディ&ネック共にセミグロス塗装が施されます。セミグロス塗装は、塗装面に微細な凹凸ができることから振動する表面積が増え、ギターの音を柔らかくさせる機能があります。これにマホガニー単板トップの個性が伴い、豊かな低域を持つ力強いサウンドが得られます。
「STORIA III」は、チョコレートブラウンのマホガニー単板をトップに、黒いボディバインディング、ワインレッドのインナーカラー、サウンドホール周りは黒とワインレッドという意匠です。こちらは「II」と異なり、ボディ、ネック共にツヤツヤのグロス塗装が施されます。
グロス塗装は、セミグロス塗装にあった塗装面の微細な凹凸をなくしており、それだけ振動する表面積を少なくします。このため低域が豊かな力強いサウンドに対し、若干の引き締め効果による粒立ちの良さが加えられます。
以上、YAMAHA「STORIA」をチェックしていきました。どんな人が使うのか、どのように使われるのかまで想定した、新しいコンセプトのギターです。全体的に小さめで弾きやすいギターですが、楽器本体の基本設計は同社の「FS」シリーズを、ほぼそのまま採用しています。演奏性と音響性能ですでに実績のある「FS」を土台に、ブリッジと指板インレイに新しいデザインを採用し、また木材構成やドレスアップをアレンジすることで、新しいギターを生みだしたわけです。
そうは言ってもSTORIAは、木材構成と塗装法の組み合わせが「FS」シリーズと違っており、違う音を持ったギターです。またピックガードを非採用とすることでトップ材の響きを活かし、ブラス製ブリッジピンを採用することで音の芯を強化し、かつピックアップまで備えています。ルックスにもサウンドにもアイデンティティがあり、しかも性能をアップさせているわけです。
タイトルにもあるように、STORIAは女性向けのかわいいアコギとしてPRされている雰囲気があります。しかし楽器として優秀でサウンドの評価も高く、YAMAHA開発陣の「鬼の開発力」を感じさせられる製品でもあります。ショップで見かけたら、ぜひ手にとってみてください。
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