アコースティックギター初心者向け入門講座

コール・クラーク(Cole Clark)のギターについて

Cole Clark

「コール・クラーク(Cole Clark)」は、伝統的な工法と最新の技術の両面から個性的なアコースティックギターを作る、オーストラリア発祥のブランドです。いろいろな製品をリリースしていますが、日本ではまずアコギの代表機種が流通、個性的なルックスと頑丈な構造、そしてエレアコとしての高い性能が支持を集めています。今回は、このコール・クラークに注目していきましょう。


Jack Johnson – Big Sur (Live From Jimmy Kimmel Live! / 2017)
ハワイ出身のジャック・ジョンソン氏は、ミュージシャンとしてだけでなくプロデューサー、映画監督など幅広く活動しています。サーファーとしても活躍しており、サーフ・シーンの第一人者として知られています。氏が愛用していることで、コール・クラークの認知はぐっと広がりました。

コール・クラークの歴史

コール・クラークの歴史は、ブラッドレー・クラーク氏が2001年仲間と共に独立したことから始まります。ブランド名の由来は、その中の一人アダム・コール氏との連名です。オーストラリアの名門ギターメーカー「メイトン」に勤務していたクラーク氏は、そこで培った製造技術にプロミュージシャンとしての経験を上乗せ、伝統的な工法と最新鋭の工作機械を両立させながら、緻密で頑丈なギターを目指しました。

2003年、特許取得済み「フェイスセンサー」を備えた代表機種ファットレディをリリース。しかしボディトップの裏側から面で振動をキャッチするセンサーは画期的でしたが、ボディ振動を損なうデメリットがありました。センサーの小型化、トップ材の再設計、新しいブレーシングの開発などを経た2009年、エレアコとして優秀なサウンドを持ち、生の音も美しく響く現在の設計に到達しました。


It Ain’t Me (Live Cover) – Majelen [Selena Gomez)
コール・クラークのギターは、高い音響性がありながら頑丈な本体、ヘッドを叩いても反応するという敏感なピックアップシステム、この二つが評価されています。特にボディを叩きながら演奏する「スラム奏法」を行なうには、とても大きなメリットだと言えるでしょう。この個体はブリッジ側にエレキギターのハムバッカー・ピックアップが搭載されたモデルで、エレアコとエレキの二つのアウトプットを持っています。

コール・クラークの特徴

コール・クラークのギター 木材の個性を大胆に見せるトップ材は、コール・クラークのギターによく見られる特徴。一見オーソドックスなスタイルのギターだが、サドル両脇のネジ、くびれ部分の装飾、一般的なギターとは一味違うさまざまな特徴を持っています。

オーストラリア産を中心とした木材構成

コール・クラークで使用される木材はブンヤやブラックウッドといった、耳慣れない名前の木材が多い印象です。これらはすべて地元オーストラリア産で、かつ安定的に仕入れられるものが中心です。マホガニーやローズウッド、エボニーなどは今なお高人気ですが、安定供給に問題があるばかりでなく、絶滅が危惧されています。同社はこれら希少材にこだわらないことで、安定した生産体制を整え、また種の絶滅を防ごうとしています。

コール・クラークのギターで使われる代表的な木材をチェックしてみましょう。なお、カッコ内は(英語名 / 学名)です。

ボディトップ材

ブンヤ(Bunya Pine / Araucaria bidwillii)
日本名ではヒロハノナンヨウスギ(広葉南洋杉)。マツカサ状の実はサッカーボール大にもなり、栗に似た味がします。低域がクリアなバランスの良い音響性能を持っており、コール・クラークのトップ材として最も人気があります。スプルースと比べて2割ほど硬く、音の伸びが得られるほかスラム奏法にも最適です。

レッドウッド(Californian Redwood Sequoia / Sequoiadendron giganteum)
「ジャイアント・セコイア」とも呼ばれる、現存する最も巨大な樹木です。樹高は80メートル以上、樹齢は1,000年以上にも及び、樹齢の最高記録は3,200年と伝えられます。トップ材としてはシダーより硬くスプルースよりやや柔らかめで、標準的な演奏に適していますが叩くのには向きません。コール・クラーク社は、地元で150年前に植えられたものを仕入れています。

サイド/バック材

オーストラリアン・ブラックウッド(Australian blackwood / Acacia melanoxylon)
タスマニアン・ブラックウッド(Tasmanian Blackwood / Acacia melanoxylon)

ドラムのスティックに使う「ヒッコリー」として知られる、オーストラリア原産の木材です。ウォルナットやコアに近い性質を持っており、代替材としても注目されています。マホガニーを凌ぐ硬さを持ち、ガンガン弾いてもバコバコ叩いても大丈夫で、トップ材に使われることもあります。上位グレードではタスマニア産のブラックウッドが使用されることもありますが、樹種としては同じです。

クイーンズランド・メイプル(Queensland Maple / Flindersia brayleyana)
クイーンズランド・メイプル・シルクウッド(Queensland Maple Silkwood / Flindersia pimenteliana)

クイーンズランド・メイプル、クイーンズランド・メイプル・シルクウッドともにミカン科で、カエデ科のメイプルとは別の植物です。名前の印象とうらはらにマホガニーに似た外観と音響特性を持っており、明るく立ち上がるアタックとバランスの良い響きを持っています。コール・クラークではネックにも使われますが、「~シルクウッド」は樹種としても異なる植物で、低域が豊かに響くとして、「3シリーズ」に採用されています。

指板/ブリッジ

リバー・シー・オーク(Rive She Oak / Casuarina Cunninghamiana)
日本名カンニンガムモクマオウ。小川沿いや沼地に生えるため、防砂/防風などのために植えられます。木材としては将来的にも仕入れやすく、また性質がローズウッドとエボニーの中間くらいにあるとして、コール・クラークでは盛んに利用されています。

ブラックビーン(blackbean / Castanospermum australe)
ローズウッドと同じマメ科の植物で、ローズより3割ほど軽量ながら同等の硬さを持っています。黒い豆を実らせますが有毒で、食用には適しません。しかしアボリジニーはいろいろな工夫でその毒を抜いて、粉にして食べていたと言われます。


Cole Clark: Fat Lady 2 Bunya Sound Demo
CCFL2-BB。ストレートに飛んでくるクッキリとしたサウンドが、雄大でカラっとしたオーストラリアの大自然を思わせますね。

個性ある本体設計

コール・クラークの特徴

コール・クラークはまだ新しいメーカーで、またオーストラリアという国柄もあってか、伝統や前例に縛られない、伝統と先端技術と新しい発想とをバランスよく配合したギターを作っています。群雄割拠するアコースティックギター市場において、かなり独特な尖った製品開発をしていると言っても良いでしょう。

スペイン式ネック接続

コール・クラークのギターにおいて最も特徴的だと思われるのが、「スペイン式」ネック接続です。多くのメーカーが当たり前に採用している「最初に箱(ボディ)を作り、ミゾを切って、ネックを挿しこむ」という作り方は、クラシックギターにおける「ドイツ式」です。ボディとネックを別々に作れる生産性がメリットで、ミゾの加工精度が勝負です。

これに対して「スペイン式」は、「トップ材にネックを貼りつけ、それに合わせてサイドを貼り、最後にバック」という作り方です。コール・クラークはこの工法の「ネック材がトップ/サイド/バックに直接、振動伝達できる」という音響上のメリットを重視しています。またネックがサウンドホールぎりぎりまで達することから、ジョイント部の強度も高く確保できます。

エレアコの製造においても、スペイン式は大変に合理的です。出来上がったギターに電気系を仕込むのはなかなか大変ですが、スペイン式ではバック材で閉じる前に全てを組み込むことができます。

独自構造のヘッド設計

環境問題に配慮して木材を大切に使うという観点から、コール・クラークではネックとヘッドをジョイントする工法を採用しています。木材の節約だけでなく、この部分の強度が高く確保できる設計です。ヘッドの「凹」にネックの「凸」を挿しこむことで角度付きのヘッドを作っていますが、敢えてネックと違う木材をヘッドに使うこともあり、個性的なルックスを演出しています。

また、センター部分に盛り上がりを設ける設計も独特です。これにはデザイン面だけでなく、ヘッドストック自体の振動をコントロールする効果があります。

コールクラークのヘッド
デザイン的に美しい設計だが、ヘッドの重量と強度を上げて、振動をコントロールする狙いも。

独自の「A」ブレーシング

コール・クラーク独自の「Aブレーシング」は、少ない骨組で性能を発揮でき、本体の強度を保ちながらトップの振動を妨げにくい、新しい設計です。常識となっている「Xブレーシング」は、かのマーチンが1843年に発明して以来アコースティックギターの設計において支配的な存在でした。近年になってここに挑戦するメーカーが少しずつ出て来ており、アコースティックギターの新しい未来を築こうとしています。

こだわりの「総単板」

コール・クラークは全て単板で作られており、合板を使用したモデルはありません。単板は音楽的な素晴らしい響きが得られる半面、湿度が上がれば膨張し、乾燥しすぎると割れてしまう恐れがあるとし、メーカーでは公式に「42〜50%の湿度と13〜28℃の温度」で保管すること、また車のトランクに放置しないことを求めています。

また、全モデルでピックガードが付けられずに出荷されます。定番機種「ファットレディ」と「エンジェル」ではピックガードが同梱で別添されるので、必要なら貼りつけて使うことができます。ピックガードは本体をピックのキズからガードしてくれますが、せっかくの総単板の鳴りがわずかに損なわれます。ピックガードが必要な人もそうでない人もいて、ユーザー側で選択できるメリットがあるわけです。

「サテンラッカー&ナチュラル」に絞った塗装

ごく少数の例外こそあれ、コール・クラークの塗装に着色はなく、ニトロセルロースラッカーのナチュラルカラーでサテン仕上げのみ、というこだわりです。ナチュラルは木目やサップ(白いところ)を楽しむのに最適です。新品状態ではサラッサラの表面ですが、よく触れるところにはだんだんツヤが出てきます。昔ながらのラッカー塗装は経年変化でクラックが入ることもあるし、使いこむほどに育っていく楽しみを味わうことができます。

コールクラークの塗装

センター部分の白いところが「サップ」で、白肌、辺材、白材、白太などいろいろ呼ばれます。丸太の外側に近いところが白く、中心に近い方は色濃くなって、このように色調がキレイに分かれることがあります。自然が生んだストライプ模様には愛好者も多くいます。

高性能ピックアップシステム

エレアコとしての性能がひじょうに優れているのも、コール・クラークの大きな特徴です。「アナログ3ウェイシステム」と名付けられた電気系は、守備範囲の異なる3つのピックアップを使ってナチュラルなアコースティックサウンドを実現しています。さらに、それぞれのピックアップごとにハウリングしやすい周波数帯をキャッチしないように設計されているので、ホールで大音量を鳴らしても安心です。

6つのアンダーサドル・ピエゾピックアップ(中低域担当)

弦ごとに配置されるピエゾピックアップは振動を点でキャッチし、迫力ある中低域を押し出します。これを単体で使用して、いわゆるエレアコらしい音を出すこともできます。フィードバックしやすい周波数帯はカットされていますが、そこは下記フェイスセンサーがカバーします。

なお、サドル両側のネジはピエゾのためのものであって、サドルを調節するものではありません。保証対象外の高額修理に至る可能性がありますから、触らぬ神に祟りなしです。

トップの振動をキャッチするフェイスセンサー(中高域担当)

特許を取得した「フェイスセンサー」は、ボディトップの振動を面でキャッチし、特に中高域を柔らかく出力します。感度が鋭く、ネックやヘッドを叩く音もキャッチする、いわゆるマイクロフォニックな状態が実現します。まさに生の感触がスピーカーから得られるとともに、ピエゾとの配分を調整できるためスラム奏法にたいへん有利です。

コンデンサーマイク(超高域担当)

コンデンサーマイクはトレブル以上の超高域を守備範囲とし、エアー感や倍音感を演出します。「アナログ2WAYシステム」では非搭載です。

シンプルな操作パネル

Cole Clark:コントロール

「Bridge(ピエゾ)←→Face(フェイスセンサー)」は両者の配合を決めるツマミです。反対側の「Mic」がコンデンサマイク音量です。

アナログ3WAYシステムの操作は、性能のわりにかなりシンプルです。マスターボリューム、ピエゾ/フェイスセンサーのブレンド、コンデンサーマイクの音量という3つのツマミと、トレブル/ミドル/ベースのイコライザーのみで、「世界で最も自然な音」を標榜するナチュラルなサウンドを作ることができます。


Cole Clark – Three Way Pickup System
サウンドメッセ2019にブースで出演していたロイド・スピーゲル氏が語る、コール・クラークの3WAYピックアップシステム。ピエゾだけでも良い音じゃない?なんて思った印象が、すぐにぶっ壊されます。

コール・クラークのラインナップ

では、コール・クラークのラインナップをチェックしていきましょう。いま日本に流通しているのはドレッドノート・タイプの「ファットレディ(Fat Lady)」とフォーク・タイプの「エンジェル(Angel)」が中心で、ちょっと小さめの「リトルレディ(Little Lady)」が後に続きます。それぞれのモデルに対して3段階のグレードが設定されてありますから、まずはグレードについて見ていきましょう。