HEADWAY(ヘッドウェイ)アコギの特徴と幅広いラインナップを紹介[記事公開日]2024年9月13日
[最終更新日]2026年05月31日

Custom Shop HF-Yozakura のヘッド
Custom Shop HF-Yozakura のヘッド

「ヘッドウェイ(HEADWAY)」は、長野県松本市「株式会社ディバイザー」が保有するアコースティックギター&ウクレレ専門のブランドで、1977年の立ち上げ以来、多くのプレイヤーに愛用されています。
グレードの高いものはディバイザーに併設されている「飛鳥工場」で、比較的安価なものはフィリピンの自社工場やアジア諸国の工場で作られており、入門向けの手に入りやすいものから熟練工がつきっきりで仕上げた最高級品まで、極めて幅の広いラインナップを誇っています。
ここではそのヘッドウェイに注目し、製品の特徴や魅力を追跡してみましょう。

様々なブランドで提唱する新しい価値:ディバイザー訪問インタビュー – エレキギター博士

headway:前進、進歩、(船・列車の時間の)間隔
出展:weblio英和辞典

「アコギの最高峰」と謳われたヘッドウェイの沿革

ヘッドウェイは、マスタービルダー百瀬恭夫氏(ももせやすお。2015年度卓越技能者知事表彰、いわゆる「信州の名工」を受章)がブランド立ち上げ時より生産に携わってきました。
名匠百瀬氏は2024年3月19日に80歳で逝去されましたが、ヘッドウェイの歴史は百瀬氏の歴史そのものであり、その技術と思想は現在のマスタービルダーへと確かに受け継がれています。
ヘッドウェイの立ち上げから現在までを、ざっと見てみましょう。

HEADWAY40周年パネル 2017サウンドメッセでのHEADWAYブース:40周年を記念したパネルが掲げられていた

百瀬氏は20歳まで家具職人をしていましたが、1964年に「富士弦楽器製造株式会社(現在のフジゲン)」に入社してギター職人へと転身。
1969年に入社した「有限会社林ギター」で作っていたギターが、卸売業者「株式会社クロス楽器」の八塚恵氏(ディバイザー会長)の目にとまります。
百瀬氏の技術と情熱に惚れ込んだ八塚氏は「日本で最高品質のギターを作る」ことを目指し、1977年に百瀬氏を含む数名で「株式会社ヘッドウェイ」を立ち上げます。

ヘッドウェイ立ち上げ準備で、当時100万円したと言われるマーチン(Martin)のD-28を分解し、1年がかりで解析したと言われています。
ここで得たノウハウとプラスアルファを注いで完成したドレッドノート「HD-115」は、安定感のある頑丈な作りと美しい音色から「アコギの最高峰」と言われました。

しかし1983年に2度に渡り火災にあい木材も工具も失ってしまい、ヘッドウェイの生産体制は瓦解します。
その後ヘッドウェイは社名を「ディバイザー」に改め、比較的製造のしやすいエレキギターの工場として再スタートを切ります。
エレキギター/ベースブランド「バッカス(Bacchus)」は好評を博しますが、かつてのファンからの熱い要望に応えるかたちで1999年からアコギの生産ラインを再構築します。
災禍を逃れたストック木材が発見された幸運もあり、再生産されたHD-115は当時をしのぐクオリティでした。

復活したヘッドウェイは、国内生産の上位機種と海外生産の安価な機種という幅広いラインナップを展開していく中、「カスタムショップ」に次ぐ高級ライン「飛鳥チームビルド(ATB)」を2011年に設立します。
通常モデルよりクオリティが高く、かつカスタムショップほど高額でないATBは市場に受け入れられ、小ロット生産にもかかわらず2016年初頭には通算生産台数1,000本に到達します。
記念すべき1,000本目として、サドルとナットに「象牙」を使用するなどまことに贅沢な仕様の記念モデルが作られました。

ヘッドウェイ The 1000th ヘッドウェイ「The 1000th」

百瀬氏は晩年まで後進の育成にも余念がありませんでした。
ATBのチーフであった安井雅人氏は2016年にマスタービルダーとして認められ、百瀬氏に次ぐ二人目の「カスタムショップ」ビルダーとなりました。
現在のヘッドウェイは、飛鳥工房総責任者でもある安井氏に加え、ATBの音作りを長く担ってきた降幡新(ふりはたあらた)氏という二人のマスタービルダーが、百瀬氏直系の堅牢な構造と豊かな鳴りを継承・発展させる体制となっています。

ヘッドウェイ製品の特徴

ボディへのこだわり

ヘッドウェイのギターはオーソドックスなボディが多いですが、その設計には並々ならぬ工夫が込められています。
その一部を垣間見てみましょう。

鳴りと強度を両立するボディトップ

ボディトップを薄くすれば良く鳴りますが、厚くしないと強度が不足します。
この「鳴りと強度の両立」のため、ヘッドウェイでは「中央から外側に向けて徐々に薄くなる」独自の設計を採用しています。
まず、平均的なトップ材(2.8mm)より厚い3.2mmの厚さでトップを成形し、特にブリッジの取り付け部分にしっかりとした強度を持たせておきます。
そこから外周がコンマ数ミリ薄くなっていくように仕上げていくことで、振動も強度も十分なボディトップができあがります。

「ヘッドウェイの音」を作るブレーシング

ブレーシングは「力木」とも云われ、ボディが弦の張力に耐えるための骨格の役割を果たします。
このブレーシングの形状や配置がサウンドに影響することから、ヘッドウェイでもアコギの伝統を踏まえながら、独自のブレーシングを採用しています。

上位機種を中心に、ヘッドウェイの多くのモデルでは「フォアードシフト(forward shift:前方に移す)」が採用されています。
Xブレーシングが交差している箇所は、最も強度が高くて鳴りにくくなっています。
ここを前方に移し(=サウンドホールに近づけ)ブリッジから遠ざけることで、柔らかく暖かみのあるサウンドに方向付けします。
しかしフォアードシフトは強度が犠牲になる恐れがあり、どんなギターにも採用できるわけではありません。

ヘッドウェイの標準的なブレーシングは、このフォアードシフトと一般的なXブレーシングの中間にあたるポイントにX部分を配置した「セミフォワードXブレイシング」となっています。
一般的なXブレーシングによる「芯があって力強い」音色とフォアードシフトによる「柔らかくて暖かい」音色を配合させた「ヘッドウェイの音」を作る重要な設計です。

さまざまな工夫

ブレーシングの肉を削いで鳴りを強化したり方向づけしたりする「スキャロップ加工(scallop:ホタテの貝殻のように波打った状態)」や、接着面の塗装をきれいに剥がしてから行う「ブリッジ取り付け」など、音と強度の両立を目指した工夫がいたるところに込められています。

こうして作られたヘッドウェイのアコギはいわゆる「ヘッドウェイの音」がすると言われ、ファンに愛されています。


わたなべゆう – Baby you- 活動10周年記念ライブ in Arukasホール~
モーリス主催の「フィンガーピッキングデイ」2006年最優秀賞を受賞。2010年ころからこのHDCカスタムモデル一本で演奏/録音をしているのだとか。

ネックへのこだわり

百瀬氏はヘッドウェイのギターで、「20年30年という長期間の使用に耐えること」を目指してきたと言われています。
製品にはその思想が反映され、「ネックがしっかりしている」ことで知られています。
ネックのどんなところにこだわって作っているのでしょうか。

強固なジョイント

第一のこだわりは強固な接合部分を持つ「アリ溝(英名「ダヴテイル」)」ジョイントで、従来のギターよりもネック接合部分が大きく、また高い精度できっちりと加工するなどの工夫が込められています。
またトラスロッドの仕込み方も工夫されており、埋め木の挿し方を操作することでロッドが効くポイントをおいしいところに移動させています。

またヘッドウェイは、ボディとネックに塗装を施してからジョイントする「後仕込み」を敢えて採用しています。
「後仕込み」は後から塗料で埋めてしまうことができず、ごまかしが効きません。
キッチリと組まれたジョイント部は、いかに高い精度で作られているかを言葉よりも饒舌に物語ります。

ワンピース・ネック

カスタムショップのギターは全て、またスタンダードシリーズ以上のグレードの多くに「ワンピース(1P)ネック」が採用されます。
ヘッドウェイのワンピースネックはネック部分だけでなく、ヘッドからヒールまでを一本の角材から削り出します。
木材のロスが多くなる贅沢な工法ですが、ヘッドとヒールを貼りつける一般的な工法に比べ、木材の収縮率の違いに起因する「ねじれ/ゆがみ」に強い、信頼性の高いネックが出来上がります。

日本人向けの感触

また、ネックグリップは欧米人よりも体格で劣る日本人の手にフィットするように仕上げられています。
ネックの安定度も手伝って弦高をかなり下げて弾きやすく調整することができるので、日頃アコギの堅い弦に触れていないエレキギターのプレイヤーにもお勧めすることができます。

ヘッドウェイ製品の主要タイプ

ヘッドウェイのラインナップは複数のボディシェイプを軸としており、「HD-115」などモデル名の頭のアルファベットで記号化しています。
各タイプにマッチした弦長(スケール)が設定されており、これだけでボディシェイプと弦長が分かるようになっています。

記号 弦長(mm) ボディシェイプ
HD 645 マーチンの「D(ドレッドノート)」に相当する大型シェイプ
HF 628 マーチンの「000(オーディトリアム)」に相当するシェイプ
HJ 628 公式には「ジャンボ」に分類されるラウンドショルダータイプ
HOM 645 オーケストラモデル。HFボディに長めの弦長を組み合わせる
HN 628 「ニューヨーカー」と呼ばれる小ぶりでコンパクトなボディ
HC 645 カッタウェイを備えたシェイプ
HOFC 645 フローレンタインカッタウェイを持つ深胴ボディ
HBC 645 「バルコート」と呼ばれる個性的なボディ

ヘッドウェイの主なボディシェイプと弦長

現在では特にHD、HF、HJが主流となっており、ラインナップの大半を占めています。

ヘッドウェイのラインナップ

それではこれからヘッドウェイの膨大なラインナップのうちいくつかをピックアップしてみましょう。
ヘッドウェイは小ロットで生産するので、製品開発のフットワークが軽いのを強みにしています。
ベーシックな木材で作り上げるレギュラーラインのほかに、珍しい木材を思い切り使用する特別仕様が頻繁にリリースされます。

ヘッドウェイのラインナップは、グレード(価格帯)を分けた五つのシリーズで展開されています。

  • カスタムショップ:マスタービルダーとATBによる最高グレード
  • 飛鳥チームビルド(Aska Team Build/ATB) Series:選抜メンバーによる上級グレード
  • スタンダードシリーズ:国産の標準的なグレード
  • JT(Japan Tune-up)シリーズ:ディバイザーワークショップできっちり仕上げる海外生産機
  • ユニバース(UNIVERSE)シリーズ:海外生産による低価格機

それぞれのグレードで生産されるギターはボディシェイプや弦長など共通するところを多く持ちますが、使用される材木や施される装飾、またそのための工程などで差がつけられています。


Spitz “Kemonomichi” by Osamuraisan スピッツ「けもの道」アコギでロックしてみた
海外でも人気の動画主「おさむらいさん」がヘッドウェイのギターを愛用していることから、海外でもヘッドウェイの人気が盛り上がってきたと言います。

Custom Shop

ヘッドウェイのカスタムショップは、マスタービルダーを中心とした最高グレードのギターを制作するセクションです。
職人の選抜メンバーで構成される「飛鳥チームビルド(Aska Team Build/ATB)」がマスタービルダーをサポートする体制で、楽器フェアなどに出展するショウモデルなどの一点もの、特別なマテリアルを使用した特別仕様、顧客から受注するオーダーメイド品などを作っています。

カスタムショップのギターには名工の技術がふんだんに注がれますが、使用される木材についても

  • ボディトップ:アディロンダックスプルース
  • ネック:ホンジュラスマホガニー(1P)

という最高のものが基本で、世界各国のマホガニーやローズウッドなど最高の木材でサイド&バックのバリエーションを形成しています。

Aska Team Build series(ATB)

2011年に立ちあがった「飛鳥チームビルド(Aska Team Build/ATB)シリーズ」は、1999年のヘッドウェイ復活以来、百瀬氏と共に長いキャリアを積んだ少数のメンバーで生産するグレードです。
ボディとネックとのマッチング、センター(中心線)が出ている加工精度など、百瀬氏直系の発想や技術が製品に注がれており、ヘッドウェイを象徴するグレードになっています。

Standard series

ヘッドウェイの「スタンダードシリーズ」は、上位機種に見られる高い組込み精度と安心感をそのままに、コストパフォーマンスを高めたシリーズです。
飛鳥工場での手作りという体制を維持したまま、装飾や木材などの仕様、また工程を見直すことで、低価格化を実現しています。
このグレードにしかないモデルの開発も続けられており、単なるグレードの上下だけではない、「スタンダードシリーズ」として魅力のあるラインナップが構築されています。

HEADWAY Japan Tune-up Series

ヘッドウェイ「ジャパン・チューンナップ(JT)」シリーズは、アジアの工場で作られたギターをディバイザーワークショップでキッチリとチューンナップした、サウンドと演奏性、およびコストパフォーマンスに優れたシリーズです。
しっかりと調整された弾きやすいギターで練習すると、ちゃんとした音が出るまでの道のりが短く、上達が早くなります。
これからギターを始める人が長く愛用するためには最適のギターだと言えるでしょう。
また中級から上級のプレイヤーにも納得できるレベルにまで調整されているので、キャリアの長い人が気軽に扱うギターとしても優れています。


新シリーズHeadway Japan Tune-up(JTシリーズ) 解説動画
ディバイザーへ取材したときに応対して下さった相澤さんが、JTシリーズの解説をしています。相澤さんには工場見学(要予約)などでも会うことができます。

JTシリーズで施されるチューンナップはいろいろなポイントに及んでおり、「価格帯を何段階も上回るグレードの調整が施されている」と言われています。

チューンナップのポイント チューンナップの内容や効果
ナットとサドルの加工 ・弦を直接受けとめる「ナットとサドル」に牛骨を使用。
・ナットはローコードの演奏時、サドルはミュートプレイなどで手が触れるところなので、角を滑らかに処理。つるつるな感触に。
押さえやすい弦高での出荷 ・長期的に良い音で演奏できる「コーティング弦」の草分け、「エリクサー」フォスファーブロンズ弦(ライトゲージ)でのセットアップ。
・ナットの溝を適正な深さに加工。
・ネックの反り加減、サドルの高さを入念にチェック。
フレットエッジの加工 ・フレットの両端を丸く整えることにより、ポジションの移動やスライドなど、ネックに手を這わせるプレイなどで左手にかかるストレスが大幅に軽減。
指板の処理 しっかり磨いた後、レモンオイルを染み込ませて保護。

JTシリーズのチューンナップ項目

ディバイザーは自社で弦もリリースしているのですが、ここに敢えて社外製の名のある弦を使用するあたり、このシリーズに賭けるディバイザーの本気度が伺えますね。

この他にも

  • 2000年代にカスタムショップで使用されたヘッドインレイを採用
  • 高級感のある和紙「銀がすみ」を使用したサウンドホールラベル
  • 厚めのクッションが使用された、デラックスギグバッグが付属

といった「ワンランク上」のギターにふさわしい顔つきになっています。

HEADWAY UNIVERSE Series

ヘッドウェイ「ユニヴァース」シリーズは、アジアの工場で生産される求めやすいシリーズです。
しかし単純な廉価版ではなく、このシリーズにしかない面白みのあるギターもリリースしています。

ヘッドウェイのアクセサリー

ヘッドウェイは、グッズの開発でも個性を発揮しています。
ギター本体をメインに扱うブランドなので各部門を絞ったラインナップになっていますが、それだけこだわりが反映された「ひと癖ある」アクセサリーになっています。

Headway カポタスト HCP-15PP BRZ

HCP-15PP BRZ

スプリングの圧力で弦を固定するカポで、アンティーク調の渋いデザインです。
ブリッジピンを抜く機能が付いているので便利です。

Headway Clip Tuner HCT-25U

Headway Clip Tuner HCT-25U

付属のマイクロUSBケーブルを介して充電するクリップ式チューナーです。
4色表示で視認性が良く、クロマチックのほかギター、ベース、ウクレレなど楽器に合わせたモードがあるほか、この価格帯でリリースされる一般的なクリップチューナーの倍の精度(±0.5cent)を持っています。

HEADWAY MICRO FIBER CLOTH

HEADWAY MICRO FIBER CLOTH

極細繊維(マイクロファイバー)を使用した楽器用クロス。
楽器を優しく拭くほか、眼鏡のレンズなどキズをつけたくないものを拭くのに適しています。

HEADWAYストラップ HSP-20C

HSP-20C

肩が当たる部分にクッションがついている、ヘッドウェイオリジナルのストラップです。
クッションの両側に調整器具が取り付けられているので、クッションがちょうどいいところに落ち着くような調整ができます。


以上、ヘッドウェイのギターについて紹介しました。
膨大なラインナップを誇るヘッドウェイですが、ボディ形状などラインナップのポイントは絞られているので、理想のギターを絞り込むのはそれほど難しくありません。