2019年末、モーリスの「パフォーマーズ・エディション(以下、PE)」から新しいモデルがリリースされました。手に入れやすい価格と高い品質を両立させた、入門機としてもサブギターとしてもうってつけのギターです。今回は、この新しいPEに注目していきましょう。
モーリスのPEは、気軽にギターを始められることを目指した、普及価格帯の製品群です。長野県松本市の本社工場で生産される上位機種「ハンドメイド・プレミアム」シリーズを出発点に、海外の工場で製造するなどの工夫で、価格を大幅に圧縮しています。
しかし安いだけではなく、各モデルのコンセプトや、モーリスらしさをしっかりと打ち出す「アイデンティティ」、上位シリーズにはない仕様を積極的に採用する「オリジナリティ」、本社工場で開封し完全な状態で出荷する「クオリティ」のあるシリーズです。それゆえこれからギターを始めるという人の入門機として、あるいはミニギターを卒業するお子様のステップアップとして、特におすすめです。
今回は5モデルが登場しましたが、そのすべてで指板材に「エンジニアリングウッド」が使用されています。またエレアコでは、プリアンプが新しくなりました。
PEの指板に使用される「エンジニアウッド(EW)」とは、
カンタンに言うと、「木材が原料で、欲しい性能があると保証された材料」で、木材を貼り合わせたり組み合わせたりして作ります。ふつうの木材に比べて強度と安定性が目立って優れており、鉄骨の代わりに使用される例もあるほどです。
EWは均一で強靭ですから、
というメリットが期待できます。
ギターの材料として使用できる木材は、枯渇の一途をたどっています。特に指板に使用するローズウッドは貿易が規制されており、ギターメーカーにとって頭の痛い問題です。これに対してEWは、木材としての性能が保証されるほか、安定的に仕入れることができるというメリットがあります。
エンジニアウッド:「木を原材料に工場で二次加工された木質材料のうち特に、強度特性が設計段階で所定の要求水準を満たすように計算され、完成した製品が所定の試験によって所定の要求水準を満たしているものと評価されることにより、強度特性が所定の要求水準を満たしていることが保証された木材製品(Wikipedia「エンジニアウッド」より抜粋)」
エレアコに採用されているプリアンプ「MP-4」は、シンプルさと扱いやすさを確保しつつ、
という特徴を持っています。このうち、「カラー液晶のチューナー」、「青いバックライト」の二つは、エレアコという分野においては全く新しい仕様です。性能と使いやすさに加え、ただ単に価格を下げるだけではない、面白さを感じられるギターを作ろう、というメーカーのチャレンジ精神がうかがえます。
「モリダイラ楽器は面白さが共感できるものなら、どんなに斬新なものでも市場に投入できる柔軟性を持っている会社です(株式会社モリダイラ楽器、鈴木剛氏談)。」
《初心者から一流のプロフェッショナルまで》Morris訪問インタビュー
PEニューモデルをチェックしていきましょう。それぞれコンセプトに沿ったキャラクターが設定されていますが、ナトー材を使ったネック、:グラフテック社製「Nubone(ヌボーン)」を使ったナットとサドルは共通仕様です。
ナトーはマホガニーに近い特徴を持った木材で、ミドルクラスのギターで使用されることもあります。Nuboneはグラフテック社のヒット作「TUSQ(タスク。人工象牙)」を継承し、雰囲気を牛骨に似せた人工素材です。加工性に優れ、研磨の熱で溶けることがありません。また振動伝達に優れ、弦振動を効率的に木部へ伝達します。
「S-011」は、ボディ全面にコア材を使用して、外観でもサウンドでもコア材の特徴を楽しむことができるモデルです。ピックアップ非搭載ながらカッタウェイが付けられており、ハイポジションを攻めるプレイにも挑戦しやすくなっています。意匠もシンプルながら凝っており、個性と高級感があります。
「S」シリーズは他のモデルよりナット幅を1mmほど広く設計するなどさまざまなアイディアを駆使し、ソロギターや指弾きに特化させたモデルです。こうしたネックはクラシックギターに慣れている人にとって馴染みやすく、また押弦時には隣の弦に指が触れにくくなりますから、これからギターを始める人や、手が大きくて普通のギターでは弾きにくいという人にも良い選択です。
S-011を…
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Morris Sシリーズ:フィンガー・ピッキング・スタイルに求められるギター
「Y-021MH」はボディ全面にマホガニーを使用した、木の温かさを感じられるギターです。トップのマホガニーは単板なのでよく響き、価格帯のイメージに収まらない豊かなサウンドが得られます。
やや細長い小型のボディを持つギターは「ニューヨーカー」と言われ、ドレッドノート型が誕生する前には主流だったスタイルです。現代の感覚では小型で、親しみやすさを感じさせるギターとして支持を集めています。ネックはやや短めではありますが、ミニギターやショートスケールというほど短くもありません。このギターで練習を始めてこの寸に慣れてきても、普通サイズのギターも難なく演奏できます。
Y-021MHを…
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「G-021」は、ラウンドショルダーのドレッドノート・タイプです。ボディに使用しているフレイム・マホガニーは模様が美しく、このクラスのギターとしては異例の木材構成です。
単板のトップは豊かな音量が期待でき、またマホガニーサイド&バックのギターは中高域がよく響く傾向があります。指弾きでもピック弾きでも良好ですが、特にコードを力強くかき鳴らすような演奏を得意分野としています。指弾きでもピック弾きでも良好ですが、特にコードを力強くかき鳴らすような演奏で気持ち良いギターです。
Y-021MHを…
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「R-021」は、PE内のエレアコでは上位グレードのギターです。上記「G-021」と同仕様のネック、またフレイム・マホガニーなど同じ木材構成を持っていますが、ボディのサイズと形状によりサウンドに違いが出ます。
ヘッドロゴとロゼッタにアバロン柄素材を採用、金属部品にゴールドパーツを採用するなど、ルックスの高級感があります。プリアンプMP-4の電池ボックスは、アウトプットジャックのすぐ隣に設置されています。ボディ内部に電池を配置するタイプと違い、弦を緩めることなくすみやかに電池交換できます。
R-021を…
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「R-011」は、カラーバリエーションが楽しめる、お手頃価格のエレアコです。求めやすい価格とはいえ上位機種「R-021」と同じプリアンプを備えており、しっかりサウンドメイクできます。
このグレードゆえの全面合板ボディは、生の音量こそ控え目ですが、エレアコとして使用する時にはむしろハウリングしにくいというメリットになります。またひじょうに頑丈なので、そうやすやすとぶっ壊れることがありません。
R-011を…
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以上、モーリスの新しい「パフォーマーズ・エディション(PE)」をチェックしていきました。手に入りやすい価格設定でありながら、カラーバリエーションが豊富な上、コア材やフレイムマホガニーなど上位機種では使われていない木材を使用、プリアンプが光るなど、モーリスらしい「攻め」の姿勢が感じられるラインナップです。楽器店で見かけたら、ぜひチェックしてみてください。