Epiphone(エピフォン)のアコースティックギター徹底分析![記事公開日]2017年7月30日
[最終更新日]2017年11月30日

エピフォンのアコースティックギター

エピフォンはギブソン傘下のブランドとしてギブソン製品の廉価版をリリースするかたわらで、エピフォン独自のモデルも多数ラインナップしています。エピフォンのギターは機能や音だけでなく、大変良い面構えをしています。そのため有名アーティストが愛用するのは過去の話ばかりでなく、現在でも多くのプロミュージシャンがエピフォンを選んでいます。

今回は、ギブソンの下位ブランド、そして由緒正しい老舗ギターブランド、という二つの側面を持ったエピフォンに注目してみましょう。

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1. エピフォンの歴史 2. エピフォン・ギターの特徴 2.1 ゴージャスな外観、シルエットでわかる形状 2.2 基本に忠実な設計 2.3 信頼できる作りとパーツ群 2.4 うれしい低価格 3 エピフォン・アコースティックギターのラインナップ 3.1 上位機種「マスタービルト」コレクション 3.1.1 「マスタービルト」の特徴 3.1.2 フラットトップのラインナップ 3.1.3 アーチトップのラインナップ 3.2 レギュラーモデルとリミテッド・エディション 3.2.1 ドレッドノートタイプDR-100 / DR-212 3.2.2 J/Texan 3.2.3 「AJ」シリーズ 3.2.4 Dove/Hummingbird 3.2.5 FT-350SCE Min-ETune 3.2.6 EJ-200SCE / Artist 3.2.7 PR5-E 3.2.8 EL-00 PRO 3.2.9 Dobro Hound Dog Series


ザ・ビートルズ – イエスタデイ
ザ・ビートルズの名曲「Yesterday」。ポール・マッカートニー氏はこの楽曲を書き上げる際、「Yesterday」という単語に落ち着くまでの間、仮に「スクランブルエッグ」と歌っていたそうです。演奏しているのはエピフォンの1964年製「Texan」で、右用を左で演奏しています。ポール氏にとって、このTexanはかけがえのないギターだったと伝えられていますが、現在レギュラーモデルで同年代のTexanがリリースされているほか、最高グレード「Elitist」でも同仕様のTexanが生産されています。

エピフォンの歴史

エピフォンの歴史は古く、その始まりは1873年にまで遡り、2013年に140周年を迎えました。立ち上げからギブソンとの激しいシェア争い、戦後のピンチ、ライバルだったギブソンとの合併にいたる大まかなことは、姉妹サイト「エレキギター博士」で紹介しています。
《良い楽器は、偶然にはできない》エピフォン ・ギター徹底分析!

立ち上げ当初のエピフォンはマンドリンとバンジョーを主に生産していましたが、1928年にアコースティックギターのラインナップ「レコーディング・シリーズ」を発表します。アーチトップの人気が中々でしたが、同じくアーチトップを得意とするギブソンとのシェア争いは避けられないものでした。そこでエピフォンは、むしろ勝負に出ます。

世界恐慌(1929年)の影響も落ち着いた1931年、エピフォンは「Mastebuilt(マスタービルト)」コレクションとして、Fホールを持つアーチトップを7機種発表します。このラインナップはギブソンと衝突させるためのものだったことは明らかで、ギブソンも黙ってはいられなくなります。「1930年代を通し、両者の争いはスパーリングから全面戦争へとエスカレートした」とまで表現されるほど、両者の開発競争は激しく火花を散らしました。両社の激しい争いは結果的には「切磋琢磨」と表現できるもので、ニューモデルが続々と発表され、多くのアーティストがエピフォンやギブソンのギターを愛用しました。

1970年代にいったん生産が途絶えた「マスタービルト」コレクションでしたが、近年装いも新たに復活、エピフォンのアコースティックギターラインナップにおける上位機種として返り咲きました。


Crystal Bowersox Performs “A Broken Wing” From Her Album ALIVE
「エピフォン・オリンピック」と「エピフォン・カジノ」によるセッション。とても息の合った演奏ですね。エピフォンは現在このアーチトップをかなり推していますが、トラッドな雰囲気でありながら新鮮な印象も覚えますね。

エピフォン・ギターの特徴

まず、エピフォンのギターが帯びている「だいたいの特徴」を掴んでいきましょう。かつてギブソンと正面衝突しただけのことはあって、ギター本体のキャラクターはギブソンに極めて近い方向性を持っています。その中で、ギブソンにはない、エピフォンの特徴と呼べるものにはどんなことがあるのでしょうか。

ゴージャスな外観、シルエットでわかる形状

Masterbilt DR-400MCE:ヘッド Masterbilt DR-400MCE:ヘッド部分

エピフォンは、サウンドやプレイアビリティだけでなく、高級感の演出においてもギブソンを上回ろうとしました。ヘッドや指板に配されたインレイ、ボディ外周を覆うバンディングなど、エピフォンのギターを覆う手の込んだ装飾は、価格帯の枠を飛び出した高級感を感じさせてくれます。

ギターのヘッドは、ブランドのアイデンティティを最も雄弁に物語ります。ギブソンの廉価版を生産する時ですら、エピフォンは自社デザインのヘッド形状を変更しようとしません。このヘッド形状はシルエットだけでエピフォンだとわかるデザイン性を持っていて、遠くからでもそれとわかります。

レギュラーモデル「DR-100」のヘッド形状

レギュラーモデルのヘッド形状はエレキギターと共通で、「エピフォン・スロープド・ダヴウィング(Epiphone Sloped Dovewing)」と名付けられています。上機種「Masterbuild」コレクションのヘッド形状はフラットトップで「オフセットノッチ・ペグヘッド(offset notch peghead)」、アーチトップで「マスタービルト・センチュリー・ヘッドストック(Masterbuilt Century Headstock)」となっており、1930年代当時の雰囲気を物語るエレガントさを演出しています。

基本に忠実な設計

エピフォンのギターは個性的でありながら、基本的なスタイルはオーソドックスなもので弾きやすく、また他社製品からの持ち替えにも違和感を覚えにくくなっています。

  • スリムテーパー・ネックグリップ
  • ナット幅1.68インチ(約42.7mm)

を基本とするネックは太すぎず、握りやすい寸法になっています。

いくつかの特別なモデル以外は、

  • マホガニーネック
  • スプルーストップ、マホガニーサイド&バック

というウッドマテリアルを基本としており、グレードの高いものには単板が使用されます。

フラットトップのボディ形状においてはラウンド・ショルダーとスクエア・ショルダー(≒ドレッドノート)、そしてスーパージャンボを基調とし、またアーチトップにおいてはボディ幅に

  • 14.6インチ(センチュリー)
  • 16インチ(ゼニス)
  • 17インチ(デラックス)

という3段階の大きさを揃え、目的に合わせて選択しやすくなっています。

信頼できる作りとパーツ群

エピフォンは現在、中国に広大な自社工場を構えています。ここではアメリカ人スタッフによる管理指導、また品質管理専門のスタッフによる入念なチェックが行われる体制ができており、製品の品質がしっかり維持されています。

Shadow Pickup System

採用されるパーツの品質も高く、ピックアップやプリアンプにはこの分野の名門であるシャドウ社やフィッシュマン社のものが、ペグにはグローヴァー社やゴトー社製のものが採用されます。ペグについてはエピフォンのオリジナルも使用されますが、トラッドな雰囲気を持ちながらギア比を18:1にまで高めており、外観と機能を両立させています。

うれしい低価格

エピフォンの生産体制は徹底して合理化されており、驚くほどの低価格化を達成しています。一番低価格のもので実売価格1万円近辺から、上位機種の「マスタービルト」コレクションですら、「総単板」かつ高性能エレクトロニクスという作りでありながら5万円近辺からで、もっともグレードの高いものですら10万円でお釣りが出ます。

AJ-500RCE マスタービルトコレクション「AJ-500RCE」でも6万円前後の価格帯となっている

この価格帯を見てからだと、最高グレード「Elitist」の20万円近辺という価格帯がかなり高額に思えますが、それでもプロ仕様のアコースティックギターの相場としてはかなり求めやすいところに留まっています。

エピフォン・アコースティックギターのラインナップ

では、ここからエピフォンのラインナップをチェックしていきましょう。エピフォンのギターは大きく分けて

  • エピフォンのオリジナルモデル
  • ギブソンの廉価版

という2種類があり、また

  • 最高グレード「Elitist」
  • 上位機種「Masterbuilt」
  • レギュラーモデルと特別仕様の「リミテッド・エディション」

という3段階のグレードがあり、製品のバリエーションは多岐に及んでいます。