TAKAMINE(タカミネ)のギターについて[記事公開日]2015年7月29日
[最終更新日]2022年03月31日

2016gakki-fair 2016楽器フェアでのTAKAMINEブース

岐阜県中津川市に本拠地を置く「高峰楽器製作所」は、「Takamine」ブランドとして全世界58ヵ国40代理店を展開する、日本を代表するギターメーカーです。特にエレアコのラインナップが有名で、多くの愛用者がいます。

Takamine の歴史

岐阜県中津川市にタカミネの前身「有限会社大曽根楽器製造所」が設立されたのは1959年、1962年には地元にそびえる高峰山にちなんで「高峰楽器」へと社名変更、1965年には株式会社になります。それまでは下請として他社のOEM生産を請け負っていましたが、1970年代から自社ブランド「Takamine」を立ち上げ、海外向けにギターの輸出を本格化しました。
エレアコの開発に着手したのは1978年からで、同年開発された「パラスティック・ピックアップ」を搭載したプロトタイプがライ・クーダー氏に高く評価されました。これが火種になり、ブルース・スプリングスティーン氏、ジャクソン・ブラウン氏、グレン・フライ氏といった名だたる海外アーティストが次々とタカミネのギターを手にします。「エレアコのタカミネ」という評判は日本にも波及し、国内での販売も開始されました。

いろいろな取り組み

オーディオスピーカ

kiso-acoustic-hbx1Kiso Acoustic HB-X1

ギターメーカーとして培った技術を応用し、キソ・アコースティックやオンキョーとのコラボレーションで高級スピーカをリリースしています。本来スピーカキャビネットは剛性を高めて振動を抑え込むように設計するところを、アコースティックギター同様キャビネットを豊かに振動させ、ブレーシングでサウンドのバランスをとっています。

タカミネリペアクリニック

タカミネのクラフトマンが販売店に出張し、楽器のコンディションを無料で診断/調整をしてくれます。不定期開催で出張先も様々ですが、社外品にも応対し、サウンドメイキングの相談にも乗ってくれます。

ふれあいコンサート

新工場2階のホールを会場にして、無料コンサートを年4回不定期開催しています。歴代出演者は内田十紀夫氏、坂本昭二氏、アントニオ古賀氏、庄村清志氏、石川鷹彦氏、クロード・チアリ氏ら名だたるギターの名手のほか、ポップス/クラシック/民族音楽などさまざまなアーティストを招いています(リペアクリニック/ふれあいコンサートについてはタカミネ公式ブログで告知されます)。


El Bimbo (Claude Ciari)

1964年にギター曲「夜霧のしのび逢い」が世界的にヒットし、「哀愁のギタリスト」として知られたプレイヤーで、現在では日本に帰化して智有蔵上人(ちありくろうど)に改名しています。

Takamine の楽器本体の特徴

「生楽器」としての追及

タカミネはエレアコで躍進しましたが、「楽器本体のクオリティが伴って、初めてエレアコは完成する」という信念に基づき、楽器本体で作るサウンドの追及を続けています。特にエレアコの場合、ハウリングを防止するためボディの剛性を上げつつ、生楽器としての反応の良さ、鳴りの豊かさを確保するというバランスのとり方が重要です。多くのブランドのエレアコが、ハウリング防止のために生の鳴りを抑制しているのに対して、タカミネのエレアコは生音が容赦なく鳴りながらも、ハウリングに悩まされることがありません。

多様なサイズと象徴的なヘッド形状

takamine-size 左からそれぞれ 800,100,400,700,500,200 シリーズのモデル

タカミネでは、弦長は

  • 630mm(約24.8インチ):800,100,400シリーズ
  • 644mm(約25.4インチ):700,500,200,000、World Standard、シリーズ

の2種類、ボディ幅には400シリーズの360mm(約14.1インチ)から000シリーズの435mm(約17.1インチ)まで、サイズだけ見ても選択の幅が広くとってあります。アコギのサイズは弾きやすさだけでなく、サウンドにも大きく関わってきます。サイズが大きくなるに従ってサウンドは力強く、反対に小さくなるにつれて軽やかになっていきます。

takamine-head

また、ヘッド形状はほとんどのモデルに共通して、特徴的なタカミネのオリジナルシェイプになっています。先端の突起は、タカミネを象徴する高峰山の稜線をかたどっています。

ピッチの精度を向上させる「ダブルサドル」

double-saddleダブルサドル

1〜2弦、3〜6弦で分割したブリッジサドルはタカミネ独自の設計で、外観上の大きな特徴でもあります。プレーン弦と巻弦で異なるセッティングになるため、オクターブチューニングの精度が向上します。

握りやすさに寄与する「非対称ネックグリップ」

タカミネのネックグリップは、頂点を高音弦側に寄せた非対称になっています。エレキギターの非対称グリップでは高音弦側がvシェイプになるなど、低音弦側にボリュームのあるものが主体になっていますが、コードプレイの多いアコースティックギターでは、こちらの方がプレイアビリティが高い、というのがタカミネの考えです。

タカミネギターの電機系の特徴

独自の「パラスティック・ピックアップ」

palathetic-pickup引用 takamineguitars.co.jp

タカミネのエレアコを世界的に有名にしたのが、1978年に開発された「パラスティック・ピックアップ」です。6本の棒状(スティック)の圧電素子(ピエゾ)を弦ごとに並列(パラ)させたことに由来する名称ですが、英語では「Palathetic Pickup」と表記されます。この「Parathetic」は造語ですが、この英語表記により「パラセティック」という誤読がタカミネ公式サイトにも散見します。

各弦分離させることでサウンドのバランスと分離に優れ、クリアな音色を生み出すほか、ピエゾ本体がブリッジに固定され、ドルで弦振動をダイレクトにキャッチする構造になっており、大音量でも無類の「対ハウリング特性」を持っています。

プリアンプの特徴

タカミネのプリアンプ

1988年から採用された「1ユニット・プリアンプ」システムは、プリアンプと電池を1つのユニットにまとめ、かつユニットのサイズを規格化することで、プリアンプの交換が容易になっています。プリアンプはモデル間のほぼ完全な互換性を実現しているため、長年愛用している楽器本体はそのままに、プリアンプを最新のものにアップグレードできます。

3つのプリアンプ

現在タカミネのプリアンプは、

  • 真空管を搭載した高音質なCTP-3
  • 006P(9Vの四角い電池)を2つ使用した高電圧のCT-4DX
  • 3バンドイコライザーを持つシンプルなCT-4BII

がラインナップされ、全てにクロマチック・チューナーが搭載されます。どちらのプリアンプが搭載されているかがエレアコのモデル名に反映され、CTP-3ならTDP、CT-4DXなら「DMP」、CT-4BIIなら「PTU」が品番の先頭につきます。

真空管プリアンプ「CTP-3」

CTP-3

マイクモデリングやデジタルエフェクトなどのテクノロジーが進化していく中、敢えてアナログにこだわってギター本体のサウンドで勝負するチューブプリアンプです。通常の真空管は熱を帯びてしまい楽器にマウントするのは危険ですが、6Vの低電圧で駆動させることで発熱を制御、ギター本体への安全なマウントを可能にしました。

中域の周波数を操作できる3バンドイコライザ、ハウリングのポイントを狙ってカットできるノッチフィルターなどに加え、真空管の駆動率を0%~100%まで操作できる「COOL
TUBE」つまみがついています。ピックアップ増設にも対応しており、プリアンプ/増設ピックアップそれぞれの音量操作でバランスを取ることが出来ます。

高機能プリアンプ「CT-4DX」

CT-4DX

タカミネの最新プリアンプ「CT-4DX」は、18Vに高電圧化させることで、これまでになかったヘッドルーム(=強く弾いても歪みを生まない)を実現しています。これにより、繊細なタッチの指弾きから弦を切る勢いのハードなストロークまで、アコースティックギターのダイナミックレンジを活かしたピュアなサウンドをアウトプットできます。

また、通常モードでは4バンドイコライザー&2バンドノッチフィルター(共振する周波数をカットする機能)、マスターボリュームを備えた高機能なプリアンプとして機能し、マグネティックピックアップやコンタクトピックアップを増設した「デュアルモード」では、それぞれに2バンドイコライザー&1バンドノッチフィルターを備えた2系統のプリアンプの音量をバランサーで操作します。

ボディ鳴りも拾うマグネティックピックアップ「Tri-Ax」

Tri-Ax

サウンドホールに取り付けるマグネティックピックアップ「Tri-Ax」は、ポールピースの高さを各個に調整してバランスが取れるほか、ボディトップの振動もキャッチできます(Triaxial Dynamic Technology)。ボタン電池で駆動させウォームなトーンとローノイズを実現させるアクティブモードで使用しますが、電池を使用しないパッシブモードでも機能します。エレアコに増設して「デュアルモード」化することで、サウンドの幅を広げることができます。

安心感のある「エンドピンジャック」

アウトプットジャックにストラップをかける「エンドピンジャック」は現在常識的なパーツですが、ナットで表裏から挟み込んで固定する形式が一般的です。この方式で全く問題ありませんが、まれにぐらつきが生じることがあります。一方タカミネでは3本の木ネジでギター本体に直接固定する方式のエンドピンジャックを開発し、緩みや脱落といったトラブルの可能性を解消しています。