Ovation(オベーション)のアコギについて[記事公開日]2015年9月14日
[最終更新日]2021年06月18日

Ovation(オベーション)のアコースティックギター

「オベーション(Ovation)」は、オベーション・ギターカンパニーによる独自設計のエレアコをリリースするブランドです。同社は航空会社カーマン・コーポレーションの子会社として1966年に発足、航空機で培ったテクノロジーをギターに転用するという大胆かつ画期的な発想で斬新な設計のギターを発表しました。

時代の先を行っていたギターのセールスは始めこそ苦戦しましたが、ライブステージの大型化、大音量化という時流の中で頼りになるエレアコが求められるようになり、エレアコの定番機種として支持を集めるようになりました。名機“Adamas”シリーズを開発するなど、エレアコ業界を牽引するブランドです。


Guns N’ Roses DJ Ashba plays Patience on his Ovation Guitar

オベーション・ギターの特徴

ラウンド・バック

グラスファイバー オベーション・ギターのバック

オベーションの最大の特徴は「強化プラスチックによるラウンドバック」という唯一無二のボディ構造です。ヘリコプターのローター(羽)を作っていた親会社のノウハウを活かし、材料には「リラコード」というガラス繊維強化プラスチックが採用されています。このお椀型のボディバックは抱えた時に独特のフィット感があり、また軽量かつ頑丈で、割れたり欠けたりしにくいという利点があります(ボディバックの素材を「グラファイト」と紹介している記事を散見しますが、ガラス繊維の誤読、またはプラスチックを楽器に使用するマイナスイメージを嫌った意図的な読み替えであって、正確な情報ではありません)。

ギター開発に際しては航空会社のアドバンテージにものを言わせ、いくつもの計測器で数々の代表的なギターの音響特性や構造を解析したといいます。この計測で得られたデータからアコギのサウンドを次のステージへ進ませるための研究が重ねられ、ボディ内で反響した音がサウンドホールに集中するためのボディ形状として、このラウンド・バックに到達しました。カーブを描いたバック自体に音響効果があるため、バックはブレーシングを必要としません。

この「音がサウンドホールへ集中する」という音響特性はアコギの「箱鳴りを抑制する」という逆説的な効果も生んでおり、エレアコとして使用したときにハウリングしにくいという恩恵をもたらしています。

リーフホール

leaf-hole
オベーションの外観上の最大の特徴は、「アダマス」や「エリート」で採用されている「リーフホール」と呼ばれる大小のサウンドホールです。枯葉をモチーフとした非常にデザイン性の高いものですが、これも均一でバランスの取れた音響特性を狙った結果の設計です。また枯葉を模した板は「エポーレット(肩章)」と呼ばれ、サウンドホール周りの剛性を高めることでハウリングを抑制する効果があります。さらに抗ハウリング性を高めるために、穴を全て塞ぐためのキャップが使用される事もあります。

中央にサウンドホールが無いため、1弦は24フレットまで指板を延長する事ができています。24フレットまで使用できるエレアコはなかなか無いため、リードプレイなどで高い音が必要なプレイヤーにはうってつけです。しかしあまりおおきな面積を指板で覆ってしまうとトップの振動を阻害してしまうので、高音弦に向かって斜めに伸ばされています。

リーフホールを持つモデルはそのままではボディ内に手を入れる事ができないため、ボディバックにメンテナンス用の丸い穴が空けられ、蓋がついています。ロッド調整や電気系の修理などはここを空けて行ないますが、わざわざ裏側に穴を空けてまでこれをやりたかった、というオベーションのリーフホールに対する高いモチベーションを感じますね。

オベーション・ギターのサウンド


Bon Jovi – Wanted Dead Or Alive
ギタリストのリッチー・サンボラがオベーションのダブルネックを使用している

オベーションのサウンドは「エレキでもない、アコギでもない、オベーションはオベーションの音」と言われる無類のトーンを持っています。中域が柔らかに主張しつつパンチのあるサウンドは分離と存在感に優れ、単体でもバンド内でも良好に響きます。

超高域や超低域が削られたトーンはエレキギターに近く、「オベーションをギターアンプで鳴らす」という使い方が、特にキャリアの長いミュージシャンの間では常識になっており、ステージでの持ち替えにエレキギターからオベーションに差し替えるということも珍しくありません。動画で紹介している馬呆(BAHO)のライブでも、オベーションをローランドJC-120で鳴らすということがありました。

そのためエレアコのサウンドをどれだけアコギの生音に近づけるか、という現代の流行とは対極に位置する、際立った個性のあるサウンドであり、好みが別れる所です。

オベーション・ギターのラインナップ

オベーションのラインナップはスチール弦の通常モデル以外にもダブルネックギター、エレアコベース、マンドリン、ガットギターやマンドリンなど多岐に及んでいますが、ここでは代表的なものをかいつまんで紹介していきます。

Adamas

ovation adamas

オベーションの最上位機種で、ヘッドロゴも「Adamas」になっています。ボディトップがカーボンファイバーでできているのを最大の特徴としており、均一さを極めたまとまったトーンが持ち味です。シンプルなトーン・ボリューム構造で2つのバンドフィルターを有し、雑振動周波数とミュージカルサウンドを的確に選り分け、純粋なアコースティックサウンドを効率よくアンプリファイします。クリアなトーン、メローなミドルレンジ、深みのあるベーストーンは感動的なまでの完成度。
通常モデル同様にスプルースを採用しているものも存在します。現在日本国内での取扱はなく、入手するためには中古を探す必要があります。

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主な共通スペック

  • 程よい厚みのカッタウェイ付きボディ
  • 柾目材のスキャロップド・ブレーシング
  • 弦長25.25インチ(ロングスケールより僅かに短い)
  • サテン仕上げのナトー製ネック、ローズ指板、ABS製ナット
  • 3バンドイコライザとチューナーのついたシンプルなプリアンプ

セレブリティ・エリート/エリートプラス

ovation elite

「エリート」はリーフホールを持つモデルで、1弦が24フレットまでありリードプレイに有利になっています。「アダマス」と見た目が同じですが、サウンドホールの数が多く、リーフホールを彩るエポーレットには数種類の木材が使用され、高級感があります。スプルーストップの「エリート」に対して「エリートプラス」はフィギュアドコアやキルテッドメイプル、スポルテッドメイプルなど希少な木材がトップとして用いられる他、ボディのバインディングやポジションマークにアバロンが使用されます。

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セレブリティ・スタンダード/スタンダードプラス

ovation standard

「スタンダード」は一般的なギター同様のサウンドホールを持つモデルで、上位機種「スタンダードプラス」はフレイムメイプルやバールドメイプルなどがトップに使用されるほか、ロゼッタ(サウンドホール外周)の装飾にアバロンが使用されます。

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Legend

ovation-legend

トップ材はカーボンではなく木材を使用して作られた、オーソドックスなギター。サウンドホールもあります。高級なものから、「Custom Legend」、「Legend」、「BalladeerSpecial」と3種類あります。

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オベーション・ギターの愛用者

ウィキペディアでは、オベーションの愛用者を国内国外に分類して紹介しています。有名ミュージシャンが大変多く、オベーションの信頼が伺えます。

国内
アグネス・チャン、ASKA、天野清継、石川鷹彦、伊太地山伝兵衛、岩瀬敬吾(19)、ウエンツ瑛士(WaT)、岡村靖幸、尾崎豊、木村拓哉(SMAP)、Char、つんく♂(シャ乱Q)、平田輝、松本孝弘(B’z)、松山千春、南こうせつ、浜田省吾

国外
Qova.、dorlis、LOVE PSYCHEDELICO、アル・ディメオラ、エイドリアン・レッグ、カーキ・キング、グレン・キャンベル、ジェフ・ラバー(シンデレラ)、ジョニー・サンダースジョン・ボン・ジョヴィ、ジョン・マクラフリン、ジョン・レノン、スティーブ・ルカサー、ホァン・イー ダ、ポール・サイモン
、ポール・マッカートニー (ウイングス時代に使用)、マルセル・ダディ、ラリー・コリエル、リッチー・サンボラ (ボン・ジョヴィ)、ロジャー・ウォーターズ、ロバート・フリップ、ローマン・ミロシニチェンコ