Taylor Guitars(テイラー・ギターズ)のアコギ、どう選ぶ?[記事公開日]2021年10月14日
[最終更新日]2021年10月23日

カッタウェイ/ピックアップシステムの有無

テイラーのラインナップは、カッタウェイとピックアップシステムの有無を「c」と「e」の表示で判別します。

  • 「ce」:カッタウェイボディ&ピックアップシステム搭載(例:516ce)
  • 「e」:カッタウェイなし&ピックアップシステム搭載(例:516e)
  • cもeもなし:カッタウェイなし&ピックアップシステム非搭載(例:516)

《一の位》ボディシェイプ+弦長

Taylorのボディシェイプ

「814ce」や「AD27」のような3ケタや2ケタの番号のうち「一の位」は、6つあるボディシェイプを表しています。各ボディシェイプにより弦長も設定されているので、これだけで抱え心地と演奏性が読み取れます。なお「0」を別格として、番号順に大型化していきます。

0:DN(ドレッドノート)

「210ce」など「0」で表示される「ドレッドノート(DN)」は、ボディ幅16″、ボディ厚4 5/8″、弦長25 1/2″で、マーチンの「D」よりちょっとだけ大きめです。ややサイズダウンした「アカデミー」シリーズやミニサイズ「Baby」シリーズの原型ではありますが、そのほかのシリーズでは2019年に発表された「グランド・パシフィック(GP)」に置きかえられており、ラインナップは限定的です。

2:GC(グランド・コンサート)

「512ce」など「2」で表示される「グランド・コンサート(GC)」は、ボディ幅15″、ボディ厚4 3/8″、弦長24 7/8″で、マーチンの「000」とほぼ同じくらいです。テイラーの中では小さめなサイズ感で、フィンガーピッキングに特に向いています。

4:GA(グランド・オーデトリアム)

「224ce」など「4」で表示される「グランド・オーデトリアム(GA)」は、ボディ幅16″(406.4mm)、ボディ厚4 5/8″(117.5mm)、弦長25 1/2″”で、マーチンの「0000」とほぼ同じくらいです。1994年に発表されたテイラー初のオリジナルシェイプであり、あらゆる演奏スタイルにフィットする、同社を代表するシェイプです。

6:GS(グランド・シンフォニー)

「326ce」など「6」に象徴され、またミニギター定番機「GS Mini」の原型でもある「グランド・シンフォニー(GS)」は、ボディ幅16 1/4″、ボディ厚4 5/8″(117.5mm)、弦長24 7/8″という、大きめボディに短めスケールという組み合わせです。現在の仕様では、メインサウンドホールから約45度の角度で配置された「サウンドポートカッタウェイ」を持つ、ソロプレイヤー向けに仕上がっています。

7:GP(グランド・パシフィック)

「317e」など「7」で表示される「グランド・パシフィック(GP)」は、ボディ幅16″、ボディ厚4 5/8″(117.5mm)、弦長25 1/2″です。寸法の上ではドレッドノートと同じですが、ショルダー部もボディエンド部も丸みが増しており、違った印象となっています。2019年に発表された新しいシェイプですが、伝統的な形状を好む人も納得できる、弾き込まれたかのような暖かな音色があります。

8:GO(グランド・オーケストラ) / 1:GT(グランド・シアター)

「818e」など「8」に象徴される「グランド・オーケストラ(GO)」は、ボディ幅16 3/4″、ボディ厚5″の、現在のテイラーでは最大サイズのボディで弦長25 1/2″という仕様です。高音から低音までバランスよく、深く力強いサウンドが得られます。
また、「GS Mini」と「GC」の中間くらいの、ちょうどよい小型モデル「グランド・シアター(GT)」は「GO」をそのままダウンサイジングしており、「GT 811e」のように「1」で表示されます。

《十の位》弦数とトップ材

左から、「1」で象徴されるシトカ・スプルース、ウェスタン・レッド・シダー、ルッツ・スプルース、シンカーレッドウッド。
「十の位」は弦の本数とトップ材のだいたいの種類を表示します。12弦仕様なら「5」か「6」、6弦仕様なら「1」か「2」です。そして、テイラーでは数あるトップ材を柔らかめの「ソフトウッド(1と5)」と硬めの「ハードウッド(2と6)」に大別しています。十の位が1なら6弦仕様でソフトウッドのトップ、6なら12弦仕様でハードウッドのトップ、というわけです。

左から、「2」で表示されるハワイアン・コア、マホガニー。
なお、1と5に象徴されるソフトウッドは、シトカ・スプルース、ウェスタン・レッド・シダー、ルッツ・スプルース、シンカーレッドウッドで、2と6で象徴されるハードウッドは、ハワイアン・コアとマホガニーです。

《百の位》サイド&バック材

「百の位」は1から9まであり、ボディのサイド&バックの材料を表示します。この番号がそのまま100から900までのシリーズ分けにも使用されています。「1(100)」と「2(200)」はサイド&バックにレイヤード・ウッドが使われ、「3(300)」以降に単板が使用されます。
1と2はレイヤード・ウッドのサイド&バック

左から、ウォルナット、ハワイアンコア、ローズウッド。

「レイヤード・ウッド」は、ウォルナット/ポプラ/ウォルナット、ローズウッド/ポプラ/ローズウッドというように、ポプラ材を中心に薄板を3枚貼り合わせた合板です。合板は価格を抑えられるとともに頑丈で、独特の鳴りを持っています。なお、テイラーのローズウッドは全て、インディアンローズウッドです。
114eなど1番台はレイヤード・ウォルナット、214eなど2番台はレイヤードのハワイアンコア、ローズウッド、メイプルが使われます。
3以降は単板サイド&バック

左から、サペリ(300)、ブラックウッド(300)、オバンコール(400)、マホガニー(500)、メイプル(600)、インディアンローズウッド(400、700、800、900)。

百の位「3」以降は単板サイド&バック仕様で、木材本来の持つキャラクターをしっかり楽しむことができます。おおむね番号順にグレードも上がっていきますが、若い番号でも特別仕様機では高いグレードとして扱われる例が多くあります。

左から、マカッサルエボニー、ハワイアンコア、ココボロ、アーバンアッシュ、アフリカンエボニー、コパフェラ。

このほかの木材については、「GT Urban Ash」や「Custom GAce-African Ebony」のように木材の名称が添えられたり、「K24ce V-Class(ハワイアンコア)」や「M12ce JPN LTD 2017(マカッサルエボニー)」のように頭文字が添えられたりします。

2ケタの番号はどう読む?

「Academy12e」や「K24ce V-Class」、「AD27」といった2ケタの番号を持つモデルもいろいろあります。こうしたモデルのサイド&バックは、「アカデミー」シリーズならば全モデルがサペリ製サイド&バック、「K」シリーズならば全面ハワイアンコアというように、属するシリーズの仕様に従います。
2ケタの番号については通常通りで、一の位はボディシェイプと弦長、十の位は弦数とトップ材を現します。

シリーズごとの特徴を見てみよう

テイラーは多くのシリーズを展開していますが、これらもそれぞれに仕様やコンセプトが設定されています。これらがだいたい把握できるよう、ざっと見ていきましょう。

ミニギター&小さめのモデル

「Baby」Series

Baby Taylor 左から、Baby Taylor、Baby Taylor Mahogany、Baby Taylor-e Koa、Taylor Swift Baby Taylor-e。

「Baby」シリーズは、ボディ幅12 1/2″、弦長22 3/4″という3/4サイズのドレッドノートです。サイズ感とは裏腹の迫力あるサウンドがあり、ピッチも正確なのでお子様向けのギターとしても最適です。15/16 サイズの「ビッグ・ベイビー」もリリースされています。

Baby Taylor:ジョイント部 14フレット地点でトップ側からボルトオンジョイントするという、実に大胆な構造。

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「GS Mini」Series

Taylor GS Mini 左から、GS Mini Mahogany、GS Mini Rosewood、GS Mini-e Koa、GS Mini-e Koa Plus。

「GS Mini」シリーズは、ボディ幅14 3/8″、弦長23 1/2″という絶妙のサイズ感が厚く支持され、2010年の発表以来35万台が出荷されました。グランド・シンフォニー(GS)を小型化しており、普通サイズに匹敵するサウンドが得られます。木材にバリエーションがありますが、共通してトップは単板、サイド&バックはレイヤードウッドです。

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「Grand Theater」Series

Taylor Grand Theater 左から、GT k21e、GT 811e、GT Urban Ash。

「グランド・シアター(GT)」シリーズは、グランド・オーケストラ(GO)を小型化させたオール単板ボディで、フルスケールに負けないサウンドを持つ高級コンパクトギターです。GS Miniとグランド・コンサート(GC)の中間にあたる弦長24-1/8を採用しており、新開発「V-Class」ブレーシングをさらに発展させた「C-Class」ブレーシングにより、小型のギターでは表現しにくい低音域を強調しています。

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エントリークラスや、比較的手に入れやすいモデル

「Academy」Series

Taylor Academy 左から、Academy12e、Academy10、Academy12e-Nylon。

「アカデミー」シリーズは「弾き心地の良さ=楽しい」をコンセプトに、ストレスなく楽しく弾ける理想のフルサイズ・ギターを目指して開発されました。ボディサイズこそ普通ですが、ネックはちょっと短めの弦長と細めのネックを採用しており、弦を押さえやすくなっています。また高級機にしか採用されないアームレストが特別に採用されており、右手が疲れにくくなっています。思い切り圧縮した価格と、バインディングのないウッディな雰囲気もポイントです。

アームレスト

アームレストは腕に優しいのがメリットですが、いちど作ったボディを斜めにカットして木材を埋めるという手間がかかるため、高額なモデルでしか実現できないと言われた仕様です。普及価格帯モデルでの採用を実現できたのは、テイラーが世界初だと言われています。

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「100」「200」「200DLX」 Series

Taylor 100/200シリーズ 左から、114e-Walnut、150e-Walnut、214ce-Koa SB、214ce DLX BLK。

「100」「200」および「200DLX」は、レイヤードウッドのサイド&バック、装飾の簡素化、アジア提携工場での生産など企業努力で価格を圧縮させた、ラインナップの中でも手に入れやすいシリーズです。これからギターを始める人に向けたモデルというコンセプトもあり、標準で1-3/4インチ(44.45mm)のナット幅を1-11/16インチ(42.86mm)へスリム化しています。複雑な運指でも隣の弦を邪魔しにくいという上級者向けの設計から、基本的なコードの握りやすさと押さえやすさを優先した設計へと、軌道修正しているわけです。
こちらは100、200、200DLXの順にグレードが上がります。

American Dream Series

左から、AD17e、AD27e、AD17e Blacktop。

「アメリカンドリーム(AD)」は、「コロナ禍のこういう時こそ、世の中には音楽が必要だ」という思いから、USAエル・カホン工場製の総単板ボディに新開発V-Classブレーシングを採用しながら、カッタウェイ非採用GPボディシェイプに仕様を絞り、また控え目な装飾とマットな塗装で手ごろな価格を実現させた、言わば逆境から生まれたシリーズです。
AD17、AD17 Blacktop、AD27の3タイプがあり、どれもピックアップの有無が選べます。「17」はシトカスプルーストップにオバンコールサイド&バック、「27」はマホガニートップにサペリサイド&バックです。

300~700がレギュラーモデル

Taylor 300/700シリーズ 左から、314ce、414ce、514ce、714ce、614ce。

300から700までの各シリーズが、テイラーのレギュラーモデルという扱いです。ボディは総単板で、シリーズごとにトップ&サイド&バックの標準仕様が決まっているほか、それぞれに装飾が設定されます。600のピックガードは、振動を邪魔しにくい木製です。グレードはおおむね番号順ですが、600シリーズは700シリーズの上位という扱いです。

「300」Series(シトカスプルース&サペリ)

「300」シリーズは、シトカスプルーストップ、サペリサイド&バックです。サペリはマホガニー的な中音域の押し出しを持ち、明るくクリアな迫力あるキャラクターです。

「Blackwood 300」Series(マホガニー&ブラックウッド/アーバンアッシュ)

もう1つの300シリーズ「ブラックウッド300」シリーズは、マホガニートップ、ブラックウッドサイド&バックを基本とし、サイド&バックにアーバンアッシュが使われることもあります。ブラックウッドはコア材やマホガニーに近いキャラクターがあり、ややドライで明瞭、かつ暖かみもある木材です。アーバンアッシュはヴィンテージの良質なマホガニーを思わせる中域がありつつ、バランスの良い鳴り方をします。

「400」Series(シトカスプルース&ローズウッド)

「400」シリーズはシトカスプルーストップ、ローズウッドサイド&バックというアコギの伝統そのものの組み合わせです。クリアーでバランスが良く、レンジが広いのが特徴です。

「500」Series(シダー/マホガニー&マホガニー)

「500」シリーズはシダートップ、マホガニーサイド&バックもしくは全面マホガニーが基本です。マホガニーは中域にパンチのある、明るいトーンを持っています。シダーのトップはレスポンスが良く、また音に温かみがあり、フィンガースタイルに良好です。全面マホガニーのボディは、さらにマイルドです。

「600」Series(シトカスプルース&メイプル)

「600」シリーズは、シトカスプルーストップ、メイプルサイド&バックです。メイプルは立ち上がりが早く、クリアに響きます。しっかり杢の入った木材が使われ、またヘッド裏にはインレイのデザインをあしらったローズウッドの化粧板が貼られます。ヘッド裏の化粧板には、この部分の共鳴をコントロールする役割もあります。
HEAD600
612ceのヘッド裏。

「700」Series(ルッツスプルース&ローズウッド)

「700」シリーズはルッツスプルーストップ、ローズウッドサイド&バックで、繊細さとパワー感の両立した、まさにアコギの王道を行くキャラクターを持っています。

800と900がフラッグシップモデル

左から、812ce、818e、912ce 12Fret、914ce。

「800」シリーズと「900」シリーズが、テイラーのフラッグシップです。いずれもシトカスプルーストップ、ローズウッドサイド&バックで、深く唸るような低音と明るく鈴のように輝く高音を持っています。ロゼッタなどに輝くアバロンが目を引くほか、多くのモデルでアームレストが採用されます。

《比較》400、700、800、900は、どう違う?

左から、414ce、714ce、814ce、914ce。

木材のグレードに差はあるようですが、スプルーストップ、ローズウッドサイド&バックという基本仕様は同じです。また、ピックアップシステムも共通しています。基本仕様を共通とする4シリーズの相違点を探してみましょう。

400~900それぞれの背面。

サイド&バック塗装膜の厚みは、400と700が標準の6ミル(約0.15ミリ)、800が4.5ミル(約0.114ミリ)、900が3.5ミル(約0.088ミリ)です。900のヘッド裏にはエボニー製の化粧板が付き、最高グレードのペグが使われます。各シリーズのサイド&バック材にはなるべく真っすぐな木目の材料が選ばれており、公式な情報はありませんがおそらくグレード分けがされています。

800と900はアームレスト付き

アームレスト

800と900にはアームレストが付いており、右腕への負担を軽減します。斜めにカットした箇所の埋め木には、800シリーズではローズウッドが、900シリーズではエボニーが使用されます。

ヘッド部の意匠

ヘッド面の化粧板は400がローズウッドで、700、800、900はエボニーです。いずれも指板インレイと同じコンセプトのヘッドインレイが施され、400ではアクリルが、700、800、900では真珠貝が使われます。800と900にはエボニー製のヘッドバインディングが施されますが、900にはその内側にコア材のパーフリングが埋められます。

サウンドホール周りの意匠

ボディバインディングは400のみセルロイドで、700はコア、800はロックメイプル、900はエボニーを使用するウッドバインディングです。900はこれに、宝飾としても扱われるパウア貝のパーフリングが加わります。
ピックガードは400と700がプラで、800はローズウッド製、900はピックガード無しです。
ロゼッタ(サウンドホール飾り)は、400では3重のリング、700ではヘリンボーン柄、800ではアバロン貝、900ではパウア貝です。


以上、テイラーのギターについてチェックしていきました。ボディシェイプと木材構成の組み合わせで、実に豊かなラインナップが展開されています。特別仕様機や限定生産機など、今を逃したらおそらく二度と手に入れられないであろうモデルも多くリリースしています。しかし今を逃しても、将来もっと良いギターを作ってくれるであろうと期待させてくれるブランドです。ショップで見かけたら、ぜひ手にとってみてください。