
「K.Yairi(K.ヤイリ)」は、株式会社ヤイリギター(以下ヤイリ)が展開しているアコースティックギターのブランドです。
ヤイリは「高品質より我ら生きる道なし」という社訓を掲げ、その通り高品質なギターを生産しています。
木材を吟味することから始まるギター製造は、あくまでも「手作り」と「メイドイン・ジャパン」にこだわっています。
生産ラインには人間の手で行なうことのできる作業が極力残されており、30人の職人たちの卓越した製造技術が一台一台のギターに注がれます。
【訪問インタビュー】淀みの無い作業と温かい雰囲気に、ヤイリのクラフトマンシップを見た
《移り行く時代、変わらないヤイリ》ヤイリギター訪問取材~レギュラーライン編~
1: K.Yairiブランド沿革 1.1: 「現代の名工」矢入一男とヤイリの軌跡 1.2: もうひとつの「ヤイリ」との関係 2: K.ヤイリ・ギターの特徴 2.1: 手作り/国内生産/高品質/永久保証 2.2: イージーオーダーシステム/カスタムショップ 2.3: 工場見学 3: K.ヤイリ・ギターの特徴的なスペック 3.1: HQ(High Quality Processing/ハイクオリティ・プロセッシング) 3.2: All Solid(オールソリッド/総無垢、オール単板) 3.3: Clear Pickguard(クリア・ピックガード) 3.4: Direct Coupled Bridge(ダイレクトカップルド・ブリッジ) 3.5: Airy Bracing(エアリー・ブレーシング) 3.6: Extra Support Neck Joint(エクストラサポート・ネックジョイント) 4: ラインナップ 4.1: 代表的なボディシェイプ 4.1.1: LO 4.1.2: RF 4.1.3: YW(=DY) 4.1.4: BL 4.2: フォークギターのラインナップ 4.2.1: Angel Series(エンジェル・シリーズ) 4.2.2: ISM Series(イズム・シリーズ) 4.2.3: Smart Series(スマート・シリーズ) 4.2.4: Old Style Series(オールドスタイル・シリーズ) 4.2.5: Compact Series(コンパクト・シリーズ) 4.2.6: Highend Series(ハイエンド・シリーズ) 4.2.7: 一五一会(いちごいちえ) 4.3: エレアコのラインナップ 4.3.1: KYF 4.3.2: YD-88 4.3.3: WY 4.4: 混同しやすい型番 4.4.1: YWとWY 4.4.2: YFAとYFとKYFとYFP
故矢入一男氏
ブランド名「K.ヤイリ」の「K」、故矢入一男氏(1932-2014)は、30歳の時に本格的なギター製作を学ぶべく渡米、帰国後33歳で矢入楽器製造所を引き継ぎ、社名を現在の「株式会社ヤイリギター」に改めます。
転機は38歳の時で、このときアメリカの商社と契約、輸出用ブランド「Alvarez Yairi(アルバレツ・ヤイリ/A.ヤイリ)」を設立します。
アルバレツ・ヤイリはポール・マッカートニー氏をはじめとする海外の有名ミュージシャンに高く評価され、フォークブームに湧く日本国内でも「K.ヤイリ」の存在感を増していきます。
常に高品質と手作り、そしてメイドイン・ジャパンにこだわり続けてヤイリを世界的なメーカーに成長させた功績から、73歳の時、厚生労働大臣より「現代の名工」として表彰されました。
高齢になっても買い付けや製材などで現場に立ち続けるバイタリティと、アーティストや工場の見学者など誰とでも気軽に話ができる朗らかな性格から、矢入一男氏は全てのヤイリファンに愛される存在でした。
現在ヤイリは矢入賀光(よしみつ)氏が代表取締役を務め、以前と変わらない高品質のギターを生産し続けています。
「S.Yairi(S.ヤイリ)」のブランド名でギターを生産していた「矢入楽器製造」は、ヤイリの前身「矢入楽器製作所」を設立した矢入儀市氏の親族にあたる矢入貞夫氏が設立した別会社です。
S.ヤイリは谷村新司氏、井上陽水氏ら著名アーティストが愛用しましたが1982年に倒産。
現在ではキョーリツコーポレーションの保有するブランドとして廉価モデルは中国で生産し、グレードの高いモデルは寺田楽器が生産しています。
創業者が血縁だったことから同じ「ヤイリ」の名が使われますが、「S.ヤイリ」はヤイリの国内向けブランド「K.ヤイリ」及び海外向けの「A.ヤイリ」とは異なる会社の異なるブランドです。
BEGIN/島人ぬ宝
BEGINは、TBSの「TV番組三宅裕司のいかすバンド天国」で勝ち抜きメジャーデビューした、沖縄県石垣市出身の3人組。「涙そうそう」、「島人ぬ宝」で紅白歌合戦にも出場しています。ヤイリと共同開発したオリジナル楽器「一五一会(いちごいちえ)」のほか、ヤイリのギターを愛用しています。
出典 owarizukan.blog122.fc2.com
K.ヤイリのギターは、全て岐阜県可児市にある自社工場で生産されます。
職人の手作りと国内生産は、どんなに注文が殺到してもくつがえすことなく、高品質を維持するためにかたくなに守られてきた生産スタイルです。
このため一日に出荷できるのは20〜25台と、世界的なメーカーとしてはスローなペースでの生産が続けられています。
所属する30人の職人の中には、全ての工程をマスターしている職人も、ネックグリップの成形や塗装など専門分野に特化した職人もいます。
半世紀のキャリアを持つ熟練工もいれば入社したばかりの若手もいますが、それぞれがセクションごとに同じ空間で作業することで、技術の伝承がしっかり行なわれています。
他のメーカーに先駆けて1972年から始まった「永久保証」は「自社製品に対し、永久に責任を持つ」、すなわちどんなに古いギターでも、パーツが無いとか規格が違うなど「会社の都合で修理や調整を断ることはしない」、また「どこまで酷く壊れても完全に修理する」という意味で、震災で破壊されたギターを新品同様に復元したこともあります。
調整が永久に無償という意味ではありませんが、格安で引き受けてくれるので、大変手厚いアフターサービスだと言えるでしょう。
ヤイリでは、「カスタムをより身近に」をコンセプトに、
など、カタログモデルの仕様変更を受け付ける「イージーオーダーシステム」を用意しています。
カタログモデルもオーダー品も同じ生産ラインで手作りされるので、価格もそれほど高額にならず、気軽に「オーダーメイド」を手にすることが出来ます。
ギターショップが製品を仕入れる代わりにオーダーする、ということも多くあります。
さまざまなパターンのインレイを選ぶことができる
一方、カタログモデルの生産ラインと独立した「カスタムショップ」では、展示用のショウモデルや完全オーダーメイドのギターを生産しています。
ヤイリの誇るクラフトマンがどんな注文にも応え、クライアントの夢を実現します。
ヤイリにはこれまで製作したギターの展示室がありますが、レギュラーモデルの他に、豪華な装飾やプレミアムな木材、特殊なボディ形状やダブルネック/トリプルネックなど特殊な仕様までさまざまなギターが並んでいます。
本当に何でも作ることができるということが、この展示室に来るとよくわかります。
ヤイリでは工場見学を受け付けており、予約すれば無料で工場内を見学できます。
製材からシーズニング(寝かせ)、木材加工、組み込みと塗装まで、ギターが出来上がるまでの工程を順番に追うことで、ヤイリがいかに丁寧な仕事をしているのかを知ることが出来ます。
この工場見学は製造業の組合が研修に利用することもあり、作業効率を熟慮した各セクションの配置や職人の働き方など、多くの企業のお手本となっています。
石野真子氏自身がギターを弾く「詩生活」 – Youtube
石野真子は日本テレビ「スター誕生!」出身の女優/歌手で、デビュー当時のキャッチフレーズは「100万ドルの微笑」。長渕剛氏との結婚を機に一時引退しつつも離婚と同時に復帰、積極的な活動を続けています。動画ではカスタムショップの職人小池健司氏謹製のオーダーギターをガンガン鳴らしています。
ヤイリのサイトやカタログで上位機種に使用される「HQ」というスペックアイコンは、「各工程においてさらに高品位な処理を施し」ていると説明されます。
これはマテリアルやパーツの選定はもとより、木材の個体差に応じてブレーシングの削り方や貼り方を変えるなど、随所に高度な加工技術を傾注しているという意味です。
製品として合格している水準を超えた、職人の粋を感じることが出来ます。
オール単板の上位機種
カスタムショップ、及びカタログモデルの上位機種は、ボディが単板(Solid)で作られます。
昔ながらの製法を大事にしているため、ボディの貼り合わせにはニカワが使われます。
ニカワの融点は摂氏70度以上ですが、炎天下の車内はこの温度に達することがあるため、ヤイリのギターを車内に放置するとニカワが解けて分解してしまうことがあります。
車内放置はやめましょう。
エレキギターのボディ構造にも「ソリッド」と言う言葉が使われますから若干紛らわしいですが、アコースティックギターの場合はボディを作る板が単板だという意味です。
エレキギターの場合は分厚い板をボディにしているという意味で、合板が使われる場合にも「ソリッド」と言われます。

パっと見ただけでは確認しにくいステルス性の高い透明のピックガードが、塗装の内側に仕込まれます。
ボディをピックから保護する働きをしながらトップ材の美しさを損なわせない、ヤイリ独特のピックガードで、一見ピックガードが貼られていないように見えるほとんど全てのモデルに採用されています。
塗装面でピックガードを封じ込めるには、高度な塗装技術を必要とするのはもちろん、長期的に使用しても剥がれてくることのない、きっちりとした貼り合わせの技術を必要とします。

「K.ヤイリ」ではエレアコの「WY」シリーズで採用されている、ブリッジとテールピースを分離させたヤイリオリジナルのブリッジで、ギブソン・レスポールなどで見られる「チューン・O・マチック」を彷彿させます。
サドルからボディへの角度がきつくなることで弦のテンションを稼ぐ構造で、通常のブリッジに比べてサウンドの張りとコードの分離感が強化されます。
サドルも6分割されているので、削り分けることでシビアなオクターブ調整にも対応しています。
輸出ブランド「アルバレツ・ヤイリ」ではこのブリッジが基本スペックになっています。
出典 yairi.co.jp
現在のラインナップでは「ISMシリーズ」の「K7」で採用されている、サウンドホールの真下で交差するブレーシングに穴を開ける構造です。
サイド/バックが合板でできている重い楽器を軽量化させるとともに、楽器自体の鳴りを向上させる効果もあり、特に中高域が豊かに響きます。
ごく一部のモデルを除くほとんどのギターで採用されている、ネック/ボディの接合部分を大きくとったジョイント法です。
ジョイント部での剛性が上がり、ハイポジションが極端に順ぞりしてしまう「腰折れ」が起こる可能性を大幅に引き下げました。
振動の伝達する効率を上げる効果もあり、採用された1970年代から「ヤイリの音」を構成する重要な構造です。

K.ヤイリのラインナップは多岐に及んでいます。
型番も多いため全てを紹介するのはなかなか困難ですが、ここでは要点を絞りつつ可能な限りまとめて紹介していきます。
なお、ラインナップは折に触れて再編されており、かつての「K Series」や「Standard Series」といった呼称は、現在「ISM Series」「Old Style Series」といった名称へと改められています。
K.ヤイリのフォークギターは、
というスペックになっており、マーチンがマホガニーを始めとする良質なマテリアルの確保に苦労している現状と比べると、非常に大きな違いがあります。
この違いは木材を確保する企業努力の成果もありますが、30人の職人による一日の生産量が20〜25本という少量生産体制により、木材の消費が比較的ゆるやかだからでもあります。
フォークギターは複数のシリーズに整理されており、最上位の単板・希少材モデルから、合板を用いた求めやすいモデルまで、グレードによって素材が段階的に切り替わります。
まずは各シリーズの位置づけを整理しておきましょう。
| シリーズ | 位置づけ | 素材傾向 |
|---|---|---|
| Highend(YS) | カスタム級の最上位 | 単板+希少材 |
| Angel(RF/LO/BL/BM) | 主力ライン | グレードで単板⇄合板 |
| ISM(DR/K7/GF) | 世代を超える定番 | DR=単板上位/K7=エアリー・ブレーシング |
| Smart(NY/FK/RAG) | コンパクト発想の新シリーズ | 単板中心 |
| Old Style(DY/YW/YF) | マーチン/ギブソン系の王道 | オール単板中心 |
| Compact(Nocturne/YFP) | プレミアムな小型ギター | 単板ミニ |
| 一五一会 | BEGIN共同開発の独自楽器 | 4弦の独自構造 |
K.ヤイリのエレアコは、フォークギターと異なりオール単板モデルがありません。
これはグレード的に低いということではなく、豊かに鳴る単板ではハウリングに悩まされるリスクが多くなるからです。
またリードプレイも想定してカッタウェイを備えているのが基本となっています。
K.Yairiのギターを…
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