
自分を売り込むのに一番手軽なライブ方法といえば(動画配信もありますが、それは別の機会に)、ストリートライブ。練習にもなりますしステージ度胸もつきます。歌を伝えるということを確認できる機会でもあります。静かな場所であればアンプを通さないアンプラグド演奏でも音は届きますが、駅前や街中の喧騒の中で弾き語りをする人ならギター・アンプは必需品です。そんな都会の街中で演奏したいストリートミュージシャンにオススメのエレアコ・アンプを、現行ラインナップから紹介します。
弾き語りは「歌+ギター」あるいは「歌+キーボード」と、いずれにせよ同時に2系統の入力が必要です。ほとんどのストリート用アンプは2チャンネル以上の入力を備えていますが、まずここをクリアしていないと話になりません。また、カラオケやリズムトラックをバックに流して歌う場合、AUX IN端子があると便利です。最近のアンプにはBluetooth機能が付いているものもありますが、屋外では接続が不安定になることもあるため、あくまでも補助的に考えておくのが無難でしょう。
歌と楽器の音を別々に調整できるよう、EQ(ベース、ミドル、トレブル)がチャンネルごとに個別に付いている製品ほど使いやすくなります。エフェクトについてはコーラスやディレイなどはスタイル次第ですが、リバーブだけは確実にほしいところ。野外での生音は残響が掛からないため、素の状態では声もギターも痩せて聞こえてしまいます。
このほかの機能は運用スタイル次第です。移動が多い人なら小型軽量を、広い場所での演奏が多い人なら大出力をと、自分の動き方に合わせて選びましょう。

ヤマハの「THR30IIA Wireless」は、ギターとボーカルで独立した入力を持ち、両方の音質にしっかりこだわることのできる弾き語りに最適なアコースティックギターアンプです。

アコギの音は「TONE SELECT」と「TONE BLEND」の2つのツマミを操作することで、立ち上がりの鋭いエレアコのサウンドと、オーガニックなマイク録りのサウンドとをブレンドできます。EQもエフェクターも備わっており、ユニークな「STEREO IMAGER」によってギターの音像を広げたり狭めたりすることで、ボーカルをより際立たせることも可能。アンプだけでレコーディング品質のギターサウンドを作ることができます。

ボーカル入力端子には、アコギの音とちょうど良く馴染む音になるように設計されたマイクプリアンプ「D-PRE」が搭載されています。手軽にちょうど良い感じのボーカルサウンドが作れるほか、専用アプリ「THR Remote」(無料)を使えばボーカルにもEQやHPF(ハイパスフィルター)がかけられます。またギターと別系統のリバーブを備えているので、ボーカルの音作りも我慢しなくて済みます。マイク入力部はコンボジャックになっているので、ボーカルマイク以外に別の楽器のライン入力も可能。こちらにギターを入れてツインギターで演奏することもできます。
出来上がったギターとボーカルの設定は本体に5セットまで保存できます。スイッチ長押しで保存、ポチッで呼び出しの簡単な操作で、曲や楽器ごとに設定を分けたり、ライブなら出演者ごとに良好な設定を作っておいたりと、便利に使えます。ライン出力端子はライブで特に有用で、PAに信号を送りつつ自分用のモニターとして本体を使うことが可能。専用キャリングケース(別売)もあるので、持ち出しも安心です。
モデル名が示すワイヤレス機能もポイント。ヤマハ純正の「YW10T」やLINE6「Relay G10T/G10TII」を使ったギターワイヤレスにとどまらず、スマートデバイスとのBluetooth接続で音楽再生やTHR Remoteアプリでのサウンドメイキングが可能。さらに充電式バッテリーが内蔵されているので電源ケーブルからも解放されます。なお出力はAC接続時の30W(15W+15W)に対し、バッテリー駆動時は15W(7.5W+7.5W)になる点は覚えておきましょう。
《ただものではないデスクトップアンプ》YAMAHA「THR30IIA Wireless」
単三電池などで駆動できるタイプ。電源確保を考えなくて良いため、気軽にセッティングできすぐにライブに入れます。デメリットは、どうしても出力ワット数が低くなりがちで大音量を得にくいこと、駆動時間を気にしなければならないことです。しかし最近では電池だけでもかなりの音量を出せるモデルもあり、通常ライブを6時間以上ぶっ通しでやることはほぼ考えにくいので、いずれも致命的なデメリットとは言えません。外でのパフォーマンスでは、まず候補に入れたいタイプです。

ローランドの電池駆動アコギ用アンプとしては最もよく知られた製品。単三電池8本でアルカリ約8時間/ニッケル水素なら約9時間の駆動が可能で、インプットはギター用とマイク(または他楽器)用の2チャンネルに加えてAUX INの計3系統。アコースティックギターに特化した美しいサウンドには定評があり、ギター用のエフェクトやアンチフィードバック、最大約40秒のルーパーも装備しています。5インチカスタムスピーカー2発でステレオ30W(電池駆動時は20W)を実現しており、音量的にも十分。木製の外観も高級感を醸し出し好印象です。値段もさほど高くなく、ギターでの弾き語りや独演の最初の1台として、無理なく導入できるでしょう。
Roland AC-33 – Supernice!ギターアンプ

斜めにスラントした特徴的な外観でロングセラーとなっていた「CUBE Street」は販売完了となり、後継機としてBOSSブランドの「CUBE Street II」がラインナップされました。単三電池8本でアルカリ駆動時間は最大約8時間/ECOモードなら約11時間、6.5インチカスタムスピーカー2発で5W+5W=10Wのステレオ出力に強化。XLRコンボ入力+楽器入力の独立2チャンネル仕様で、ギター用のエフェクト、マイク用ディレイ/リバーブ、最大45秒のルーパー、3バンドEQ、3バンドのアンチフィードバックを搭載します。ブラックとレッドの2色展開で、街中で映える存在感も健在です。
Roland CUBE Street EX – Supernice!ギターアンプ

AC-33などで培われたACシリーズの音を、よりポータブルな形で実現すべく開発された製品。CUBE Streetシリーズの系譜を引きながらも、アコースティックギターに特化したサウンド作りが行われており、エフェクトもギター用に調整されたものが使われています。独立3チャンネル仕様、単三電池6本で約15時間の駆動が可能、出力は2.5W+2.5Wの計5W、重量は約2.5kgとCUBE Street系の約半分なので、手持ちで運ぶには絶好の製品。地面に置いてフォーカスして弾き語る用途であれば、エフェクトの種類や使い勝手で勝るCUBE Street IIに分がありますが、ギター以外の楽器を持ち出すことも多いなら本機が便利です。
Roland Mobile AC – Supernice!ギターアンプ

電池駆動も可能な練習用アンプ、という位置づけで登場したVOXの製品。様々なエフェクトやPC/スマートフォンとの連動による音色調整など、現代風の機能が全て詰まった1台です。AUX INからの入力こそ可能ですが、商品のウリでもある50W出力(25W+25Wステレオ)は電池駆動時には5W(2.5W+2.5W)になり、複数の楽器入力には対応していないなど、野外ライブ用としては機能不足を感じることも。あくまで「持って行けるエレキギター用アンプ」という立ち位置で考えるなら、このサイズで50W出力は他にはない魅力です。
VOX Adio Air GT – Supernice!ギターアンプ

イギリスLaneyのオーディオ・ハブ系コンパクトアンプ。複数の楽器とマイクをまとめて鳴らせる多目的小型機で、4インチ×4のスピーカー構成だった旧「Freestyle 4×4」から、8インチカスタムドライバー1発・3チャンネルへとリファインされました。単三電池6本または12V DCで駆動でき、各チャンネルに独立ゲイン+2バンドEQ+ディレイを搭載。出力5W・約7kgと控えめながら、路上での弾き語りやアコースティックなセッションをサッと立ち上げるには十分です。
コンセントが必要なタイプは、大出力が得やすいのが最大の利点。反面、電源確保には大いに悩まされるところで、野外で電源がない場合は発電機やバッテリーを持ち込む対策が必要になります。いずれも荷物が増えて運搬が難しくなり、機材費も上がります。電源確保ができる現場では電池切れの心配もなく、非常に良い選択肢となるでしょう。また100W以上の大出力を必要とする場合、電池駆動アンプではもとより難しいのは言うまでもありません。

エレアコやジャズギターでの定番アンプ。長年愛されてきた「Compact60」シリーズの第4世代で、約7.3kgの軽量ながら60Wの大音量と8インチのツインコーンによる広いレンジ感を実現。CH1=3バンドEQ、CH2=2バンドEQ+XLRコンボ入力+48Vファンタムの2チャンネル仕様で、ボーカル用のマイクインプットも内蔵しているため、これ1台で自在なパフォーマンスが可能。リバーブ/ディレイ/コーラスを含む4種のデジタルプリセットエフェクト、Pre/Post FX切替式のDI Out、3.5mm AUX INも装備します。音質はAERだけあり、まさに最高峰のもの。電源が確保できるのであれば、音質的にもっとも妥協を排した選択肢となります。

Laneyのアコースティック用アンプ。長く現行だった「A1+」は終了し、現在の「A-SERIES」では「A-SOLO(60W)」「A-DUO(120W)」「A-FRESCO 2(バッテリー駆動60W)」の3機種展開となっています。A-SOLOは2チャンネル仕様、8インチコアキシャル・スピーカー、各チャンネルに独立した3バンドEQ+リバーブ+コーラスを搭載し、約6.7kgとかなりの軽量。AUX IN、センドリターン、XLRライン出力も備え、ミッドの細かな追い込みからフィードバック対策まで一通りこなせる、機能的に非常に優れたモデルです。

アコースティック用としては初となる、新世代の極小真空管「Nutube」を搭載したアンプ。約4.1kgの軽量で50Wのハイパワーを実現し、弾き語りに対応する2チャンネル仕様としたアコースティックギター専用アンプです。マイクインプットには+15Vのファンタム電源が付いており、+15Vで駆動するエレクトレットコンデンサーマイクなら接続可能。AUX INやライン出力に加え、エフェクトはリバーブ/コーラスを搭載し、必要十分な装備と真空管特有の温かみのある音色が魅力です。VX50シリーズはアコギ用のほかベース用「VX50-BA」、キーボード用「VX50-KB」も用意されており、いずれもエレキギター用に比べてモニターアンプ的なクセの少ない音色を目指した製品です。
Acoustasonic 15
フェンダーのアコースティック用エントリーアンプ。出力ごとに2機種があり、いずれもマイクとギターの同時入力が可能な2チャンネル仕様です。15Wモデル(6″フルレンジ)にはAUX IN端子がないため、外部音源を一緒に鳴らす際は注意。40Wモデル(6.5″×2)になるとEQがチャンネルごとに独立し、デジタルホールリバーブも搭載してライブ用としても申し分ない装備となります。フェンダーらしいツイード調の外観に似合わぬ安価で、導入しやすいのも嬉しいポイントです。なお上位機の「Acoustasonic 90」は生産完了となっており、Acoustasonicブランドの現行はこの2機種に集約されています(より大出力が必要な場合は後述のAcoustic Junior/Junior GOへ)。
Fender Acoustasonic 15
Fender Acoustasonic 40
Acoustic Junior
Acoustasonicシリーズの上位に位置するモデルがこの「Acoustic Junior」と、リチウムバッテリー駆動の「Acoustic Junior GO」。出力は両機種とも100W、スピーカーは8インチクロスサラウンド・ウーファー+ハイファイ・コンプレッションツイーター。完全独立2チャンネル仕様で、各チャンネルに3バンドEQ+8系統のスタジオクオリティ・エフェクト(ホール/ルームリバーブ、ディレイ、コーラス、ビブラトーン、複合エフェクト)と、90秒のルーパーを搭載します。Bluetoothによるオーディオストリーミングや録音用のUSB出力、XLRバランスのライン出力(2系統)など現代的な機能もしっかりカバー。Junior GOは内蔵リチウムバッテリーで最大音量5時間/中音量12時間の駆動が可能で、地面置きしやすいチルトバック・キックスタンド付き。同シリーズには2スピーカー+サイドラジエーターでステレオ感を生む「Acoustic SFX II」も用意されています。
FENDER ACOUSTIC 100
FENDER ACOUSTIC 200
Acoustic Singer Live(ACS-LIVE)
RolandではなくBOSSブランドで送り出されている弾き語り用アンプ。BOSSのプリアンプ兼エフェクター「VE-8 Acoustic Singer」にパワーアンプとスピーカーを装着し、完全なるコンボアンプとしていち製品に昇華させた、他に類を見ないコンセプトで作られた製品です。マイクとギターの同時入力に特化した設計に加え、非常に優れたハーモナイザーを装備。コード進行を分析して自動でハーモニーを付けてくれるこの機能は、まさしくVE-8ゆずりの代物で、本機の特徴を決定づける機能となっています。VE-8ゆずりのルーパーも搭載。LIVE(60W:50Wウーファー+10Wツイーター)とPRO(120W:100Wウーファー+20Wツイーター)に大きな差はなく、出力差のみ。ラインナップにはハーモナイザー/ルーパーを省いた廉価版「Acoustic Singer Live LT」(60W、約10.2kg)も加わり、シンプルな弾き語りニーズにも応える3機種展開です。
キーボード等のモニター用に使うアンプは”クセ”が少なく、アコースティックギターの本来の音を忠実に再現してくれるので、野外演奏にも向いています。なかでもPAシステムは複数チャンネルの入力に特化し、ミキサー機能を兼ねているものが多く、複数の楽器やマイクをつないだり、複数人でのアンサンブルにも適した製品が多く見られます。バッテリーや電池駆動に対応したものが多いのもこのカテゴリーの特徴で、今回は電池駆動可のものを集めてみました。

バッテリー駆動式のPAシステム。出力は15Wながら、8インチのウーファー+25mmドームドライバーによる音圧はそれを感じさせないほどで、広大なスペースでは不足するものの、2〜30人程度の規模であれば十分に音を聴かせることができます。マイクゲインを持った入力2系統にLINE IN端子、SDカードからのMP3読み込みやUSB端子、Bluetooth 5.0にも対応し、入出力は十分な量を確保。リチウムイオン内蔵で、フル充電時8〜10時間の駆動(実使用4時間程度)が可能なので、ストリート1回ぶんの駆動時間に困ることはまずないでしょう。内部にケーブルを収めるスペースがあったり、キャスター+ハンドルの剛性も十分で、持ち運びに至るまでよく考えられた製品です。

ステレオ15W+15W=30W出力を備えたRolandのPAシステム。単三電池8本でアルカリ駆動時間は最大約8時間、ECOモードなら約12時間、ニッケル水素で約10時間、専用充電池パックなら約13時間の連続駆動が可能。6チャンネルという入力数はまさに簡易ミキサー並で、3-4、5-6チャンネルはステレオ仕様。完全独立ではないものの、電池駆動で30Wクラス+このチャンネル数は驚異的です。これだけの入力数をフルに使うとなれば、複数人でのアンサンブルが最も適当。2〜3人程度のアンサンブルまでなら十分に対応できるでしょう。6.5インチウーファー4基+ツィーター2基というスピーカー構成は音質的にも不足無く、Rolandブランドに恥じない高音質を実現しているので、多チャンネルを使わずとも音質だけで導入する価値は大いにあります。
ストリートパフォーマンスが広がるにつれて、このジャンルのアンプ・スピーカーも多岐に渡る製品が送り出されてきました。大きく分けて電池式か否かで分類できるので、まずそこを決めた上で、自分の楽器や演奏スタイルに合った音質や機能を持つものを選んでいくと良いのではないでしょうか。自分のスタイルに合ったアンプをしっかり選び、良い音楽を演奏するための助けとしたいものですね。
