アコギ用ピックアップの種類と選び方[記事公開日]2025年12月26日
[最終更新日]2026年05月8日

アコギ用ピックアップ L.R.Baggs / M1 Active

ライブなどでアコースティックギターを演奏する際、マイクで集音するのではなく専用のピックアップを装着してライン出力すると、ハウリングに強く安定した音量が得られます。現在ではアコギ用ピックアップも各メーカーから多種多様な製品が発売されており、選択肢には事欠きません。
本記事では4つの方式の特性と代表的な定番モデル、演奏スタイル別の選び方までを順を追って整理していきます。読み終わるころには、自分のギターと演奏スタイルに合うピックアップの方向性が見えてくるはずです。

そもそもアコギ用ピックアップとは?

アコースティックギターの音を外部に出力するために取り付けるデバイスです。アコギはそもそもの音量が限られているため、マイクで集音・増幅しようとしてもハウリングに悩まされたり、バンドの音量に埋もれてしまったりすることが少なくありません。
とくに大音量を必要とするバンド演奏では不可欠な存在であり、現在のステージではピックアップを介したライン出力が主流となっています。

エレアコのサウンドに満足できない人は…?

エレクトリックアコースティックギター(エレアコ)は、最初からピックアップを内蔵しており、ライン出力を前提に設計されています。通常のアコギにはピックアップが付いていないため、外部出力が必要な場合は後から取り付けることになります。
ピックアップを単体で購入するケースの多くはこの後付けですが、手持ちのエレアコのサウンドが気に入らない場合に、あえて別のピックアップへ換装するという選択もあります。

アコギ・ピックアップの種類

ピックアップは集音の原理によっていくつかの種類に分かれます。それぞれ順番に見ていきましょう。

ピエゾ・ピックアップ

ピエゾ・ピックアップはアコギ用として最も広く普及しているタイプです。ギターの振動を電気信号に変換して出力します。
大きくは、ブリッジのサドル直下に敷く「アンダーサドルタイプ」と、ボディの内外に貼り付ける「コンタクトタイプ」に分かれます。

アンダーサドルタイプ

L.R.Baggs Element

ブリッジサドルの直下に細長いセンサーを敷いて振動を感知するタイプです。ハウリングへの耐性が高く、音色バランスに優れ、脱落トラブルも起きにくいことから広く普及しています。
デメリットとしては、サドルと本体の間にセンサーが挟まることで原音がわずかに変化する点と、取り付けに本体への穴開け加工が必要な点が挙げられます。また、いわゆる「ピエゾ臭い」と表現されるエレキギターのクリーントーンに近い不自然な音色になりやすい傾向があります。
ただし、この音色の偏りはマイクシミュレーター搭載プリアンプで大幅に補正できるため、トータルでは他のタイプと遜色ないサウンドを得ることも十分可能です。

⭕️ 向いている人 バンド演奏で安定した音量がほしい、加工をいとわず本格的に組み込みたい人。
🔺 向いていない人 原音重視、自分で着脱して試行錯誤したい人。

コンタクトタイプ

貼り付けピエゾ

ボディにセンサーを貼り付けて振動を感知するタイプで、俗に「貼り付けピエゾ」とも呼ばれます。外側に貼るものと内部に固定するものの2種類があります。自由に着脱できるため、最適な取り付け位置を探す試行錯誤が必要になるケースもありますが、それ自体をセッティングの楽しみとして捉えることもできます。
外側に貼るタイプは貼り付けるだけでセットアップが完了するため、ライブの機会がそれほど多くない場合に向いています。内部貼り付けタイプは2つ以上のセンサーがセットになっているモデルも多く、複数箇所で音を拾う設計になっています。

アンダーサドルタイプに比べてハウリングの影響を受けやすく、センサーが剥がれるリスクもゼロではありませんが、高域の歯切れが良くアコースティックらしい煌びやかな音色が大きな魅力です。
パッシブタイプが多く構造もシンプルなため、比較的安価に入手できるのも特徴。他のピックアップと組み合わせてデュアル構成の補助側として使われることもあります。

⭕️ 向いている人 弾き語りや小編成、自然な音色を重視する人、加工を最小限に抑えたい人。
🔺 向いていない人 大音量のバンド環境で常用したい人。

マグネティック(マグネット)ピックアップ

L.R.Baggs M1 Active

エレキギターと同じ原理で、ポールピースと呼ばれる磁石によって弦の振動を感知するタイプです。サウンドホールに差し込むだけで音が出るため、ピックアップの中でも特に導入しやすい部類です。アクティブタイプでもピックアップにプリアンプが一体化している製品が多く、アンダーサドルピエゾのようにボディ内部に電池ボックスやプリアンプを設置する加工が不要なケースが多いのも利点です。

サウンドはアコギとエレキの中間的な独特の傾向を持ちますが、高品質な製品であれば生音に迫る美しい音色を出せるものもあります。バンド演奏においては、そのサウンドの性質がかえってアンサンブルに馴染みやすいというメリットにもなります。エレキギターと同じ原理のため、ハウリング耐性は最も高く、大音量の環境でも安心して使えます。

マグネティックタイプ最大のデメリットはやはり見た目です。サウンドホールを塞ぐ外観はどうしても不自然で、後付けモデルではケーブルがピックアップから直接垂れ下がるため、ルックスは相当損なわれます。
それでも導入のしやすさとコストパフォーマンスはトップクラスであり、外観を許容できるのであれば十分に選ぶ価値があります。

⭕️ 向いている人 とにかく加工を避けたい、ハウリング耐性を最優先したい人、バンド演奏が中心の人。
🔺 向いていない人 ルックスにこだわりたい、原音そのままを再現したい人。

コンデンサーマイクタイプ

L.R.Baggs / Lyric

ボディ内部に小型のコンデンサマイクを内蔵し、そのまま集音するタイプです。通常のマイク録りと近い構造のため、音色の自然さはすべてのタイプの中でトップクラス。アコギ本来の音色や楽器の個性を最大限に活かしたいときの唯一の選択肢と言えます。
ただし、共鳴する内部空間に敏感なマイクを配置するという構造上、ハウリングには非常に弱く、大音量環境での使用はほぼ不可能です。バンド演奏には適しませんが、弾き語りやソロギター、ギターデュオなど小音量の演奏スタイルでは極めて魅力的な選択肢です。
現在このタイプの選択肢はL.R.BaggsのLyricがほぼ唯一の存在で、多くはデュアルタイプの片翼として補助的に組み合わせて使われます。

⭕️ 向いている人 ソロギター、宅録、弾き語りなど小音量で音質最優先の人。
🔺 向いていない人 バンド・ステージ中心の人。

デュアルタイプ

L.R.Baggs / Anthem L.R.Baggs / Anthem

複数のピックアップを組み合わせ、それぞれの長所を活かす方式です。コンデンサーマイクはハウリングに弱い反面、音色の自然さが際立っているため、他のピックアップの弱点を補う形で補助的に組み合わせると非常に効果的です。
コンデンサーマイクとアンダーサドルピエゾをブレンドし、その割合を調整できるシステムも市販されています。また、2つのピックアップをステレオで出力し、外部プリアンプやミキサーでブレンドするという方法もあります。
デメリットとしては、価格が高くなりやすい点と、取り付け工程が複雑になる点が挙げられます。

⭕️ 向いている人 音質に妥協したくない、予算と取り付けの手間を許容できる中〜上級者。
🔺 向いていない人 シンプル・低価格に抑えたい人、初めての1本を選ぶ人。
項目 音質 音量 ハウリング耐性 取り付け加工 アクティブ/パッシブ その他の特徴
アンダーサドルピエゾ いわゆるピエゾ臭いといわれる不自然な音色 アクティブが主流 原音が若干変化する、音色はプリアンプでの矯正に適する
コンタクトピエゾ 自然な音色、高域が強くなる 内部貼り付けはやや難、外部貼り付けは簡単 パッシブが主流 価格が安いものが多い、外れる事故が起きることも
マグネティック アコギとエレキの中間のような音 簡単 アクティブ/パッシブ両方あり 見た目が不自然になりやすい
コンデンサーマイク 極めて自然 × やや難 アクティブ 製品数が少ない
デュアルタイプ 組み合わせ、ミックス度合いによる 同左 同左 かなり難しい アクティブが主流 価格が高くなりやすい

表:ピックアップタイプ毎の特徴

アクティブとパッシブって何?

以上、アコギ用ピックアップの種類について紹介しましたが、これらのピックアップ(コンデンサーマイク・タイプを除く)はさらに「アクティブ」と「パッシブ」に分類されます。

アクティブ:ピックアップとともにプリアンプがセットになっているもので、ギターから出力された信号は一定以上の強さをもって伝達されます(ローインピーダンス)。
パッシブ:ピックアップのみのもので、出力される信号は振動を電気信号に変えただけの微弱なものです(ハイインピーダンス)。
アクティブは電池が必要ですが、ギターから出た時点である程度の強さを持っているため、外部のノイズなどの影響を受けにくく、安定した信号を供給できます
パッシブは電池が要らない代わりに信号が微弱でやや不安定です。長いケーブルなどを使用すると音の劣化は顕著に感じられるはずです
自分のギターに付いているものがどちらか分からない場合は、電池が必要かどうかで判断すると良いでしょう。

後付けの場合、コンタクトピエゾタイプを除けばアクティブが主流です。ただし、プリアンプと電池ボックスの設置スペースが必要になるため、取り付けの難易度が上がります。パッシブは手軽ですが、安定した音質を得るには外部プリアンプ(パッシブ対応)を別途用意するのが望ましいでしょう。

用途別おすすめのピックアップ選び

「どのピックアップを選べばいいか分からない」という方は、まず自分の演奏スタイルや使用環境を整理してみましょう。用途によって最適なタイプが変わります。

バンド演奏・大音量ステージ

ハウリング耐性が最優先です。アンダーサドルピエゾまたはマグネティック型を選びましょう。前者はプリアンプとのセットで音作りの幅が広く、後者はサウンドホールに差し込むだけで使え、導入のしやすさも抜群です。ピエゾ独特の音色が気になるなら、マイクシミュレーター機能付きのプリアンプと組み合わせることで大幅に改善できます。

弾き語り・小編成アンサンブル

音の自然さを重視するならコンタクトタイプがおすすめです。外部貼り付けタイプであればギターへの加工が不要で、試しに使ってみるのにも最適です。ある程度の音量を確保しつつ自然な音色を求めるなら、アンダーサドルピエゾと組み合わせたデュアルタイプも有力な選択肢です。

ソロギター・宅録・音質最優先

音質にこだわるならデュアルタイプ、とくにL.R.Baggs Anthemのようなコンデンサマイク+ピエゾの構成が最高水準の再現性を発揮します。宅録ではハウリングを気にせず使えるため、コンデンサマイク単体タイプ(L.R.Baggs Lyric)も選択肢に入ります。

まず手軽に試してみたい

加工不要で導入できる外部貼り付けコンタクトタイプマグネティック型がおすすめです。費用対効果の高いモデルも多く、ピックアップの世界への入門として最適です。本格的なシステムへのアップグレードは、使いながら自分の好みを把握してからでも遅くありません。

定番のアコギ用ピックアップ

上記の定番モデルに加え、ほかにも注目の製品を紹介します。

アンダーサドルピエゾ

コンタクトピエゾ

マグネティック

コンデンサーマイク

デュアルタイプ

取り付け加工について

ピックアップによっては本体への加工が必要です。自分で行う場合は専用工具が必要となり、自信がなければリペアショップのクラフトマンに依頼することになります。工賃は決して安くないため、ピックアップ購入時には取り付け費用も含めた予算を組んでおくのが賢明です。

各タイプの取り付け難易度

  • 外部貼り付けコンタクトピエゾ/マグネティック(差し込み式):加工不要、もっとも手軽
  • 内部貼り付けコンタクトピエゾ:エンドピンジャック化など軽度の加工が必要
  • マグネティック(穴開けタイプ):サウンドホール周辺に小さな穴開けが必要
  • アンダーサドルピエゾ:ブリッジへの穴開け+プリアンプ・電池ボックス設置で手間がかかる
  • デュアルタイプ:上記の組み合わせとなり最も複雑

エンドピンをジャックに改造する場合は、ストラップピン穴の拡張加工が別途必要になります。加工難易度の高いタイプを選ぶ場合は、リペアショップへの依頼を前提に動くのが安全です。


アコースティックギター用ピックアップは、ソロギター人気の高まりとともに急速に製品数が増えてきました。現在では選択肢が豊富すぎて何を選べばよいか迷いやすい状況です。
各タイプのメリット・デメリットをしっかり把握し、自分の演奏スタイルと用途に合った要素を絞り込んで選んでいきましょう。