Martin(マーチン)のアコギについて[記事公開日]2015年4月15日
[最終更新日]2022年03月31日

マーチンのラインナップは多岐にわたるリーズで構成されており、それぞれにコンセプトが設定されています。「どのギターに対しても神経を研ぎすませてしっかり製作するのがマーチンのポリシー」だといわれるように、グレードの高いモデルでも価格を抑えたモデルでも、等しく丁寧にしっかりと作られています。価格に反映されるのは「どんなマテリアルが使われているのか」、また「どんな構造なのか」のようです。それでは、膨大なマーチンのラインナップをシリーズごとに見ていきましょう。


Neil Young – Full Concert – 10/19/97 – Shoreline Amphitheatre (OFFICIAL)
テクよりハートでギターを弾く漢(おとこ)として有名な大物シンガーソングライター、ニール・ヤング。殴るように弾いてボロボロになったマーチンがトレードマークでした。ロックな人物で知られており、9・11直後のグランド・ゼロにグランドピアノを持ち込み、当時放送が自粛されていた「イマジン」を熱唱したと言われています。

Standard Series / Special Editions

「スタンダードシリーズ」はマーチンを代表するD-28、トップグレードのD-45、エリック・クラプトン氏の使用で知られる000-28など往年の名機の現代版で、マーチンラインナップの標準機種となっています。
「スペシャル・エディション」は仕様変更を施した特別モデルで、現社長マーチンIV世が考案した「CEOシリーズ」も含まれます。

style18 D-18、000-18

D-18、000-18など「スタイル18」では、

  • I)シトカ・スプルーストップ
  • II)マホガニーサイド&バック
  • III)セレクテッド・ハードウッドネック
  • IV)エボニー指板&ブリッジ

という仕様で40万円台前半の価格帯、

martin-standard-series 左から:D-28、D-35、D-45,000-28、000-42

D-28、D-35、D-45,000-28、000-42など上位機種では、

  • I)シトカ・スプルーストップ
  • II)インドローズサイド&バック
  • III)セレクテッド・ハードウッドネック
  • IV)エボニー指板&ブリッジ

という仕様で40万円台後半以上の価格帯。ゴールドパーツ、べっ甲柄ピックガード、豪華インレイを施したトップグレードD-45では150万円を上回ります。

martin-hd35 HD-35

ボディのバインディングにヘリンボーンをあしらい、またブレーシングを伝統的なスキャロップド・ブレーシングにしているアップグレード版のHD-28、HD-35などは50万円台からになります。

martin-ceo6 CEO-6

現社長マーチンIV世の発案した「CEO-6」はD-28をベースに、

  • i)ボディトップをアディロンダック・スプルースに変更
  • ii)スキャロップド・ブレーシング

といったアップグレードを施し、さらに後述する「パフォーミング・アーティスト・シリーズ」譲りのマイクシミュレータを搭載した最強のエレアコになっています。

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Marquis Collection

ヨーロッパの爵位で第一位のDuke(公爵)に次ぐ第二位、公爵(=Marquis/マーキス)の名を持つグレードの高いシリーズで、ヴィンテージ、ゴールデン・エラ、マーキス、オーセンティックといった高級シリーズを統合したものです。

d-45s-authentic1936 D-45S Authentic 1936

D-45S Authentic 1936、000-18 Golden Era 1937など、年代ごとのヴィンテージギターを再現したモデルが中心で、

  • ブレーシングをえぐるように削った「スキャロップド・ブレーシング」
  • Xブレーシングの交差するポイントをサウンドホールに近づけた「フォワードシフト」
  • サドルがブリッジを横断する「ロングサドル」
  • 初期のスペックであった「Vシェイプネックグリップ」

など、往年の設計を再現しているもので占められ、12フレット接続仕様を再現したモデルも含まれています。VTSが施されているものが多く、新品の状態でありながら弾き込まれたかのような豊かな鳴りとレスポンスの良さがあります。価格帯は50万円台以上で、90万円台や100万円以上など目の保養になる高額モデルが多くあります。

d28-authentic1931 D-28 Authentic 1931

D-28 Authentic 1931、D-28 Authentic 1941など100万円を超えてくるモデルでは、

  • マダガスカル・ローズサイド&バック
  • マホガニーネック

という仕様にアップグレード、また通常プラスチックが採用されているナットで「Fossilized Ivory(=化石化した象牙)」すなわちマンモスの牙が使われています。象牙はヴィンテージで使用されており、ナットの素材として最高のものですが、現在では自然保護の観点から手に入れることができません。人工素材で「TASQ(タスク)」が象牙にかなり接近していますが、当時のスペックをできるだけ再現するため、天然素材にこだわっています。

d45s-authentic1936 D-45S authentic 1936

最高グレードのD-45S authentic 1936、D-45 authentic 1942は、

  • アディロンダック・スプルーストップ
  • ブラジリアン・ローズウッドサイド&バック

といった更なるアップグレードでこれ以上ない最高のグレードとなり、価格も700万円を上回ります。

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Limited Editions / Custom Signature Edition / Customshop Edition




D-100 Deluxe

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  • D-100 Deluxe
  • D-100 Deluxe ピックガード
  • D-100 Deluxe フレット・インレイ
  • D-100 Deluxe バック
  • D-100 Deluxe ヘッド

「リミテッド・エディション」は年二回行われる世界最大規模の楽器ショウ 「NAMM Show」で発表されるアニバーサリーモデルや特別なアーティストモデルのラインナップで、上述のマーキス・コレクションが爵位でいう第二位を表すのなら、第一位はこちらのシリーズになります。ほとんどがオープン価格の中、価格が判明しているD-100 Deluxeはマーチンの通算生産数100万本を記念した、贅を尽くした50本限定生産のドレッドノートで、1,400万円にもなります。

「カスタムシグネイチャー・エディション」はリミテッド・エディションから派生したシリーズで、マーティンギターに貢献したアーティスト達のモデルをリリースしています。ジョン・メイヤー氏やママ&パパスなどのラインナップの中、フォーク・クルセターズとサディスティック・ミカ・バンドの活動で名高い加藤和彦氏とアルフィーの坂崎幸之助氏のユニット「和幸(KAZUKOH)」のシグネイチャーモデル「D-45SM KAZUKOH 」が作られたこともありました。


No Such Thing – Sao Paulo (John Mayer)
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「カスタムショップ・エディション」は日本向けの特別仕様で、アディロンダック・スプルースやマダガスカル・ローズウッドといった高級な木材に加え、カルパチアンスプルース、スイススプルース、ココボロ(=ニカラグアンローズウッド)といったプレミアム度の高い木材を採用、ブレーシングにまでアディロンダック・スプルースを使用する深いこだわりのあるシリーズで、80万円台が中心になっています。

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Performing Artist Series / Retro Series

dcpa3 DCPA3

「パフォーミング・アーティストシリーズ」は現在マーチンが最も力を入れているともいわれる、カッタウェイ付きのエレアコモデルのラインナップです。型番は「CPA(=カッタウェイのある、パフォーミング・アーティスト)」を基本とし、その前にボディ形状を表す記号が、また後ろには最高のグレードを1とする5までの数字が充てられ、価格帯には10万円台から60万円台までの幅があります。
このシリーズはライブステージでの使用を想定しており、若干スリムになったこのシリーズ専用のネックグリップ、また指板とブリッジに環境変化に強いリッチライト、また全モデルにスキャロップド・ブレーシングが採用されています。CPA4はHPLバック&サイド、CPA5はネックがストラタボンドになります。

CPA1から3までは、レコーディングスタジオで定番となっているマイクで録音したサウンドを再現する「マイクシミュレータ」が装備されており、このシリーズ最大の特徴となっています。ライブはもちろん、高品位なマイク録りのサウンドがライン録りで得られるためレコーディングでも頼りになります。CPA4と5にはマイクシミュレータがありませんが、チューナーも内蔵したFishman F1 Analogピックアップシステムにより、高品位なエレアコサウンドをアウトプットすることができます。

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d18e-retro D-18E Retro

「レトロシリーズ」はスタンダードシリーズをベースにスキャロップドブレーシングとフォアードシフトでアップグレードした上、エレアコ部分からは当時のマイクで録音した「あの時のサウンド」をシミュレートしてアウトプットできる最強のエレアコで、シミュレーションの内容はパフォーミング・アーティストシリーズとは異なるものとなっています。それぞれベースとなっているモデルより10万円程アップチャージをしています。

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15 Series / 16 Series /17 Series

Martin 15 Series D-15M 15 Series D-15M

「15シリーズ」は現代では贅沢仕様となった、ネックもボディもマホガニーの「オールマホガニー」モデルで、赤茶けたボディは女性に人気があります。ボディ形状はD、00、000の3種類があり、指板とブリッジはローズの代替材モラド(=ボリビアンローズウッド)が使われていますが、エボニー製のブリッジピンなど随所にこだわりが光るシリーズで、価格帯は25万円〜30万円近辺です。

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martin-d16gt 16 Series D16GT

「16シリーズ」と「17シリーズ」はスタンダードシリーズにおけるスタイル18の廉価版という立ち位置で、16は指板とブリッジがリッチライトで25万円近辺、17は指板がモラド(ボリビアンローズウッド)になっており30万円近辺になっています。トップ材をアディロンダック・スプルースにアップグレードするなど、こだわりの仕様のものもあります。

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Road Series / X Series

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「ロード・シリーズ」はマホガニーの代替材としてサペリを使用、またネックはストラタボンド、指板とブリッジはリッチライトという構成で、Fishmanの「Sonitone」を搭載したエレアコになっています。また新開発の「Aブレーシング」により、20万円を下回る手に入れやすいシリーズでありながらしっかりとマーチンサウンドを得ることができます。
ラインナップは、オールサペリボディの「DRS1」とトップにシトカ・スプルースを使用した「DRS2」があります。

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Martin-DXMAEDXMAE

「Xシリーズ」はロード・シリーズをベースにサイド&バック材をHPLにして、更に低価格化を実現させたモデルです。ボディ材変更に伴い、このシリーズ専用のブレーシングが開発されています。10万円台前半でマーチンサウンドが手に入る驚異的なコストパフォーマンスを誇りますが、DXMAEに至ってはトップ材までHPLが採用されて全マテリアルが人工素材となり、脅威の12万円台という価格を実現しています。

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自然保護への取り組み

「Sustainable Woods(=サスティナブル・ウッド)」は、森林保護団体が植林しながら管理しているチェリー材をサイド&バック及びネック材に使用し、指板とブリッジにエボニーの代替材「Katalox」を使用した、総天然素材のシリーズで、27万円のSWDGTとSWOMGT、40万円台のOMCGTE Cherry、OMC Cherryがあります。

また、「カスタム・シグネイチャー・エディション」にラインナップされているジェフ・トゥイーディ氏のシグネイチャーモデル「00-DB Jeff Tweedy」は、森林保護団体FSCが認可したマホガニーでボディ&ネックが作られています。