アコースティックギター初心者向け入門講座

Fender(フェンダー)のアコギ徹底分析

Fender(フェンダー)のアコースティックギター

「フェンダー」といえば、エレキギターやベース、アンプといった電気系のイメージが濃厚で、最近ではオーディオ市場にも参入しています。そんな中でアコギもリリースしており、随所に「フェンダーらしさ」が発揮された個性的な設計は、アコースティックギター界でもひときわ異彩を放っています。エレキギターで世界的に有名なブランドだということもあり、ネックの太さや弦高などエレキギターからの持ち替えに違和感を感じない、エレキギターの感覚でプレイできるモデルが特徴的です。

フェンダーのエレキギター – エレキギター博士
フェンダーのギターアンプ – Supernice!ギターアンプ

今回は、このフェンダーのアコギを追跡してみましょう。


新山詩織「絶対」MV
持ち前のリズム感と歌声、そしてギターの腕前から「音楽が天職の人」とまで言われるシンガーソングライター。高校在学中にメジャーデビューを決めた華々しいスタートは、東京各地でストリートライブを重ねるなどの修行の成果だと言われています。動画で使用しているカポタストは「G7th」のもので、着脱が容易でエリック・クラプトン氏も愛用しているのだとか。

アコギはフェンダーの黒歴史?

フェンダーは1960年代から、アコースティック市場への参入を目指して斬新なアコギを開発してきました。しかしながら売れ行きは振るわず、1971年には全てのアコギの生産が一旦終了します。フェンダー公式サイト(英語)で語られる「フェンダーの歴史」では、テレキャスターストラトキャスタープレシジョンベースジャズベースなど定番機が紹介されながらアコギの記述は一切ないことから、フェンダーにとって当時のアコギは「無かったことにしたい」黒歴史だったようです。

愛用する有名アーティストも多くはいないため、ヴィンテージ市場では希少性(売れなかったから)とは裏腹に価格がそれほど上がらず、「ヴィンテージとしての価値はない」とまで言われてしまう事もあります。では、60年代当時のフェンダーのアコギはどんなものだったのでしょうか。

フェンダーに移籍したギターレジェンド

リッケンバッカーに在籍している間に、後年モズライトを立ち上げたセミー・モズレー氏にギター製作を手ほどきし、また3シリーズなど多くの名機を開発したロジャー・ロスマイル氏(Roger Rossmeisl。1902-1975)が、1962年にヘッドハンティングによりフェンダーに入社します。ロジャー氏はドイツに帰国する1973年までに、近年復活したコロナドをはじめとする多くのホロウボディ、またアコースティックギターを開発しました。しかし当時はどれもヒットに繋がる事がなく、氏の開発した楽器は70年代初頭に全て廃盤になってしまいます。

近年コロナドやアコギが再生産される事になり、ロジャー氏の名誉は回復されつつあります。これがなかったら、フェンダー社におけるロジャー氏の業績はジョージ・ハリスン氏が愛用した「オールローズのテレキャスター」だけになるところでした。

60年代のフェンダー・アコースティックギターの特徴

当時のフェンダーのアコギは、エレキギターで培ったノウハウと新たなアイディアをじゃぶじゃぶと注ぎ、アコースティックギターの常識に真っ向から挑戦するような野心的な設計でした。いかにもこの時代風な外観と相まって、先述したロジャー氏の「やりすぎ」感が否めない斬新すぎたラインナップは、残念ながら商業的には大失敗しました。しかし、その際立った個性に魅せられたファンの「マニア心」をくすぐる希代の逸品でもありました。

ストラトを彷彿させるネックと、まさかのボルトオンジョイント

fender-headフェンダーのエレキギターと
同様のヘッド・スタイル

アコギといえばギブソンでもマーチンでも、両側に3つずつペグの付いたヘッドデザインが常識的です。ところがフェンダーでは同社の代名詞でもある「クローシャン・ヘッド(片側6連ペグのヘッド)」が採用されており、一目で「フェンダーのギターだ」と分かります。また、

  • ヘッドに角度は付けられず、ナットからの弦落ち防止にストリングガイドが使用される
  • ローズ(ハカランダが使用される事も)を貼ったメイプルのネック
  • ネックはボディにネジ留め(ボルトオンジョイント)される

といった形でエレキギターの工法をアコギに転用しており、モデルによってはオクターブ調整まで可能です。グリップ、弦高ともにエレキギターに近いセッティングを前提としており、エレキギター同様の弾き心地で演奏ができます。

ボディ内部をパイプが通る

サウンドホールから視認できる個性的な構造です。ネックブロック(ボディ&ネックの接合部分)からボディの末端まで、縦にパイプを通しています。これはボディ全体に振動を効率よく行き渡らせる役割と共に、強力な弦の張力に対抗する補強の役割も果たします。

ピックガードが、ネジ留め

設計ミスを疑われるポイントですが、本来なら貼り付けられるべきピックガードが、ネジ2本で留められています。緩んでしまうとノイズの発生源となり、また柔らかいスプルースのトップに対して思い切りネジを締め込むとネジ穴を破壊してしまう可能性がある、悩ましい設計です。しかしサウンドのためには分厚いピックガードは振動の邪魔にしかならないため、「嫌なら取り外す事ができる」というところがポイントだったのかもしれません。


Tim Armstrong Performs “Black Lung”
パンクロックバンド「ランシド(Rancid)」のギターボーカル、ティム・アームストロング氏は、エレキではグレッチ、アコギはフェンダーからシグネイチャーモデルをリリースしています。

現代に甦ったフェンダー・アコースティックギターの特徴

現代のフェンダーは60年代の失敗を活かし、アコギの常識に挑戦する設計をやめた、スタンダード感のあるラインナップを展開しています。かつての雰囲気を残した個性派モデルの復刻版や、それをヒントに新開発されたニューモデルも発表されていますが、ネジ留めピックガードは貼付け方式に、またボディ内部を貫通しているパイプは廃止に、そして最大の特徴であったボルトオンジョイントまでセットネックに変更されています。これらの修正により、現代でもまだ斬新すぎると感じる個性をいくぶんマイルドに抑えた、多くの方に受け入れられやすいギターに仕上がっています。

では、現代のフェンダーのアコギにどんな特徴があるのかをチェックしてみましょう。

合板サイド/バックを基本とする頑強なボディ

どのモデルも一貫して、

  • ボディのサイド/バックは合板
  • 手入れが簡単なウレタン塗装

になっています。合板のボディは多少重たくなる代わりに頑丈で、変形しにくく安定しています。ウレタン塗装はキズが付きにくく、ケアを怠っても白濁したり変質したりしません。ストラップピンのネジを受け止める部分は内部から補強されており、さらにメイプルネックの場合、たとえ転倒させても折れないのが普通です。以上の事からフェンダーのアコギは少々荒っぽく使っても大丈夫な剛胆な作りであり、「ステージでガンガン使用するためのギター」であると言えるでしょう。ハードコア/パンクのアーティストが使用する事があるのも納得です。

ボディトップとナット/サドルの組み合わせ

ボディトップのスプルースには単板と合板がありますが、

  • 単板のトップにはボーン(骨)ナット&サドル
  • 合板のトップにはタスクやNuBone(人工素材)のナット&サドル

と組み合わせが決まっています。ナット&サドルには天然素材を使用するのが、伝統的なアコギのスタイルです。安いものにはプラスチックが使われるのが一般的ですが、ここでタスク(人工象牙)やNuBone(人工牛骨)をセレクトするところがフェンダーのこだわりです。

順反り、逆反り両面に利くトラスロッド

「デュアルアクション・トラスロッド」が全モデルに採用されており、順反りでも逆反りでも調整ができます。四季の変化に富み気温や湿度の変動が激しい日本では、季節ごとにネックが動く事もあります。どちらにも調整できるトラスロッドは、引き換えに重量が増しますが嬉しい機能だと言えます。

シンプルかつ高性能なFISHMANピックアップシステム

エレアコに搭載されるピエゾピックアップとプリアンプは、この分野の老舗「フィッシュマン」のものが搭載されます。3バンドイコライザにより積極的なサウンドメイクができ、またクロマチックチューナーも付いていて便利です。

フェンダーらしい明瞭なトーン

モデルごとにそれぞれのキャラクターがありますが、低音が膨らみすぎないよう整理されており、中高音の存在感がある明瞭なトーンを持っています。これはフェンダー・エレキギターのイメージである「シャキっとした音」をアコギの分野で発揮しているかのようです。アンサンブル内でも聴きやすいサウンドなので、ロックバンドでもストレスなく演奏できます。エレキギターからアコギに持ち替えるというユーザーだけでなく、アコギをメインに演奏するという方々も納得できるギターになっています。

フェンダー・アコースティックギターのラインナップ

フェンダーのアコギは大きく分けて、

  • メイプルネック:60年代のアコギのスタイル。一見してフェンダーと分かるヘッド。
  • マホガニーネック:一般的なスタイル。ヘッドのロゴを見たらフェンダーだと分かる。

という分け方ができます。本国アメリカにはアコースティックのカスタムショップもありますが、現時点では日本に輸入されていないようです。

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