2011年に、ロックの殿堂入りを果たした孤高の天才音楽詩人、シンガーソングライター。ギターだけでなくジャズを通過したピアノプレイにも精通し、場末のキャバレーや裏通りのバーにうごめく人間模様・夢や挫折をセンチメンタルに描き出すような作曲能力にも長けていて、なんといっても彼のあまりにも個性的なしゃがれた声に魅了された人も少なくないと思います。
大ヒットしたアルバムはありませんが、彼のライブはいつも満員。新作まで何年かかろうともファンは待ち続け、会場へ足を運びます。個性の強いミュージシャンとの競演も多く、ジャズ色の強いセンチメンタルなバラードの名曲の数々はイーグルスやエリック・アンダーソン、ロッド・スチュアート、ブルース・スプリングスティーンなど名だたるアーティストによってカバーされています。
また役者としてスクリーンデビューも果たしており、脇役としての演技にも非常に高い評価を得ています。
Biography
1949年12月7日 米カリフォルニア州ポモナ
10歳の時に両親が離婚。高校を中退し、昼間働きながら歌手としての活動を始める。
フランク・ザッパ、キャプテン・ビーフハート、アリス・クーパーのマネージャー、ハーブ・コーエンが彼の才能を認め、1973年アルバム「クロージング・タイム Closing Time」でデビュー。その後1974年にアルバム「土曜日の夜 Hearted of a Saturday Night」を、1975年に「娼婦たちの晩餐 Nighthawks at the Dinner」、「スモール・チェンジ Small Change」(1976年)、「異国の出来事 Foreign Affairs」(1977年)、「Blue Valentine」(1978年)、「Heart Attack & Vine」(1980年)と着実にキャリアを伸ばしていきます。
1978年にはシルヴェスタ・スタローン主演映画「パラダイス・アレイ」にピアニスト役として出演。俳優業を開始しています。
Tom Waits(トム・ウェイツ)の使用アコースティックギター
アサイラム・レコードからアイランド・レコードへと移籍した1983年、アルバム「ソードフィッシュ・トロンボーン Swordfish Trombones」をリリース。このアルバムから以前のようなジャズ色は影をひそめ、よりアバンギャルドな音楽性へと変化していきました。
次作「レイン・ドッグス Rain Dogs」(1985年、キース・リチャーズが参加)、「Frank’s Wild Years」(1987年)を含め、この時期のアルバム3枚はアイランド3部作と呼ばれています。
その後も1998年までアイランド・レコードからトリビュートアルバム、映画音楽などをリリースします。
1999年、エピタフ・レコード傘下のアンタイ・レコード(Anti-)に移籍し、アルバム「ミュール・ヴァリエイションズ Mule Variations」で初の全米トップ40入り。以降もコンスタントにリリースを重ね、2011年10月にキース・リチャーズ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーなどが参加したアルバム「バッド・アズ・ミー Bad as me」を発表。
使用しているアコースティックギター
ギルドのアコースティックギターを使用
Biography
クロージング・タイム Closing Time
1973年リリース作品。ワルツ、ララバイ、ブルース、ジャズ、ドライヴ・ソング、酒宴の歌、カントリー・チューンと様々な音楽性をジャズのエッセンスで濾過させ、社会からあぶれた人達の悲哀を描いたトム・ウェイツの一番初めの作品。名曲「オール’55」はイーグルス、イアン・マシューズらがカバーし、最高傑作と名高いアルバム。
土曜日の夜 Hearted of a Saturday Night
1974年リリース作品。初期の代表作であるタイトル曲、「New Coat of Paint」、「Diamonds on My Windshield」、「San Diego Serenade」など悲しみに沈みこんだセンチメンタルな名曲を多数収録した、ファーストアルバムと並ぶトム・ウェイツの最高傑作のうちの1枚。
ソードフィッシュ・トロンボーン Swordfish Trombones
1983年リリース作品。ビート詩人のイメージを払拭させた8作目。ジャズ色は影を潜め、ブラスバンドや様々なパーカッション等を楽曲に取り入れた意欲遺作。アイランド3部作のうちの一枚。
レイン・ドッグス Rain Dogs
1985年リリース作品。ザラザラとした質感と異国風の演奏が印象的な、後期トム・ウェイツの代表作。サーカスを喚起させる音、キースリチャーズの名演で送る、アイランド3部作のうちの一枚。
Bad As Me
2011年リリース作品。7年間のブランクを経てリリースされた2011年のアルバム。マディー・ウォーターズのような泥臭いブルースと、咬みつくようなトム・ウェイツのボーカル、4曲参加したキースリチャーズのギター、フリーのベースと、間違いがないロック・アルバム。