アコースティックギター初心者向け入門講座

アコースティックギターに用いられる木材の特徴

アコギ材の特徴

アコースティックギターは木がメインの楽器なので、木材が変わることで音の特徴は変わってきます。このページではギターに用いられる木材の特徴について解説しています。どのような材があるのか見ていきましょう。

トップ材

アコギの音のほとんどはトップ板が弦によって振動することで作られています。このためトップは音のキャラクターに大きく影響する一番重要な部分です。良く振動するためには、なるべく軽くしなやかな材が良いのですが、70kgほどある金属弦の張力もトップにかかるため、強く丈夫な材であることも必要です。このふたつの条件をクリアする代表的な材がスプルース(松)とシダー(杉)です。スプルースと言っても色々な種類があり特徴も微妙に違います。おもなトップ材の種類を見ていきましょう。名前の後にある(比重)はその種の平均的な数値で、数値が大きいほど重く硬い木であることを、小さいほど軽く柔らかい木であることを表しています。

スプルース

マツ科。北米、ヨーロッパなどに分布する針葉樹。色は白色から淡黄褐色。主に 建築材、パルプ材、家具材などに利用されていますが、すぐれたものは「ミュージック・グレード」と呼ばれ、ピアノの響板やバイオリン用材に向けられているものもあるそうです。
ギターでは主にトップ材に使用されています。トップ板は「スプルース」とだけ表記されている場合がありますが、産地などの違いによって詳しく分けられ表記される場合もあります。

シトカ・スプルース(比重:0.46)

シトカ・スプルースの木目

アラスカ・カナダ・アメリカ北部の西海岸側が主な産地。スプルースの中でも非常に強く丈夫で、昔は船のマストや飛行機のプロペラの材としても使われていました。やや硬めでくせのない音質になる傾向があり、力強い演奏に向いています。アコギのトップとしては現在最も使用されているスプルースでもあります。

アディロンダック・スプルース(比重:0.42)

アディロンダック・スプルースの木目

アメリカ東部、アパラチア山脈周辺が産地。 レッドスプルースとも呼ばれる、ねばりがあり高音も低音もよく出るバランスの取れた音質になる傾向があります。ヴィンテージのマーチンやギブソンによく用いられていましたが、最近は良い材が少なくなっており、貴重な材として扱われています。

イングルマン・スプルース(比重:0.39)

イングルマン・スプルースの木目

エンゲルマンとも言います。スプルースの中では比重が小さい種類です。良く振動しますがパワーがあるという感じではなく、どちらかというと優しく広がる音・柔らかめな音になる傾向があります。弾き語りやフィンガーピッキングなどに向いています。

ジャーマン・スプルース(比重:0.44)

ジャーマン・スプルースの木目

ヨーロピアン・スプルースとも呼ばれるヨーロッパ産のスプルースです。シトカに比べて芯があり、輪郭のはっきりとしたサウンド。スプルースの中でも硬めで弾力があり、倍音が多く、上品できらびやかな音になる傾向があります。クラシックギターやハイエンドモデルのアコギなどに使われています。

シダー(比重:0.37)

シダーの木目

ヒノキ科。カナダからアメリカ北部にかけて広く分布している材。レッドシダー(米杉)がよく使われます。比重がスプルースより小さく、スプルースよりも音の立ち上がりが早く、音量がありレスポンスの良い丸みのある音になる傾向があり、明るく鋭いサウンドが特徴。クラシックギターやフィンガーピッキングに適したアコギに使われています。

バック材

 次にバック板についてお話します。バックはトップよりも比重の大きい材が使われることが多く、音の伸びやサスティンに影響します。バックは音のキャラクターに影響する、トップの次に重要な部分です。適度な硬さと重さがあり、優れた振動性能が要求されます。ギターに良く使われるバック材をあげてみましょう。

ローズウッド

マメ科。指板、ボディのサイドやバック材などギターの様々な部位で使われる木材です。ローズウッドとだけ表記されていれば、インディアン・ローズウッドを指す場合が多いと思います。名前の由来はこの木のもつ香りからきていると言われています。ギターになってからもかすかに良い香りが残っていたりします。

ブラジリアン・ローズウッド(比重:0.86)

ブラジリアン・ローズウッド

ブラジルのバイア州周辺にしか生息しない非常に希少な樹木で、ハカランダ又はジャカランダとも呼ばれています。木目の美しさから高級家具や建材に使用され、乱伐がすすんだため1970年代に輸出規制されました。比重が大きいため、パワーのある重厚な音になりますが、中低音だけでなく高音成分もバランスよく発生し、倍音も豊かになる傾向があり、バック材としては非常にバランスが取れています。
しかし、1992年に絶滅危惧種としてワシントン条約のレッドリストに登録され、ギター材として上質な柾目の板の新たな入手はほぼ不可能になってしまいました。現在は、ごく一部の制作家やメーカーが条約規制以前から保有しているものしか無いのが現状です。

インディアン・ローズウッド(比重:0.84)

インディアン・ローズウッド

ブラジリアンロースウッドが輸出規制され、その後ワシントン条約により非常に手に入りにくくなりました。その代用材として現在、最も使用されているバック材です。バック材としては比重は大きい方で、この数値もブラジリアンローズウッドに近いものがあります。このため、インディアンローズウッドも重厚で、中低音がしっかりとした音になる傾向があります。
主にインド、インドネシア、ミャンマーなどの東南アジアに分布。バランスの取れたサウンドのため、高級機にも使用されています。ギターの他には高級家具や装飾などに使用されます。現在では良いものは少なくなっており、希少とされています。

マホガニー(比重:0.55)

マホガニー

東南アジア・南アメリカ・アフリカほか世界に広く分布し、その産地により特性もやや異なります。ギターの材としてはホンジュラス産マホガニーが古くからヴィンテージのマーチンやギブソンに用いられてきましたが、これも乱伐がすすみ、ワシントン条約により規制されています。このため、ホンジュラス・マホガニーの入手は難しく、現在はアフリカン・マホガニーなどが使われています。ローズウッドにくらべて比重が小さく、音は軽快で明るくなる傾向があり、ローズウッドとはまた異なる魅力があります。

メイプル(比重:0.70)

メイプル

カエデ科の落葉広葉樹。比重はローズウッドとマホガニーの中間にあり、比重の割には硬い材です。このため、アタックが強くサスティンが短めの音になる傾向があります。リズムを重視する歯切れの良いストロークに向いています。木目も美しく、線状の木目をもつカーリー・メイプル/ウロコ状の木目をもつキルテッド・メイプル/小島の目のような小さな玉粒が一面にあるバーズアイ・メイプルなどがあり、エレキギターのボディにもよく使われる材であるほか、高級家具やバイオリン、ビリヤードのキューなどに古くから利用されたり、樹液を加工するとメイプルシロップとして食用にもなります。

ハワイアン・コア(比重:0.64)

コア

ハワイの木で、ウクレレの材料としてもよく使われます。しかし、木目の美しさから家具などにも人気があり、これも良材は少なくなってきているようです。比重はマホガニーとメイプルの中間で、音も両方の良さである、カラッとした明るさと歯切れのよさを併せ持った傾向があります。


ここまでトップとバックの材の種類と特徴をお話ししてきましたが、材の音の特徴はギターの音を作る一部の要因であり、同じ材であってもギターが違えば、トップとバックの組み合わせ/単板か合板か/経年変化/弾き方/ボディサイズや板の厚さ/設計やメーカー/弦やピックなど、さまざまな要素によって音は変わってきます。アコギは奥が深いですね。

その他の材

エゾマツ

エゾマツ

マツ科。その名の通り北海道でとれますが、樺太・中国・朝鮮にも分布しているようです。主にパルプ材などに使用されますが、ピアノ響板、ヴァイオリンの甲板としても使用されます。かつてヤマハのアコースティックギターのトップ材として利用されていました。

ウォルナット

ウォルナット

クルミ科オニグルミ属。アメリカ合衆国、カナダの他にヨーロッパにも分布。ギターではボディのサイド・バックに使用されますが、楽器よりは高級家具材としての方が有名で人気があります。
マホガニーの音とローズウッドの音の中間という表現をされています。北アメリカに生育しているのがブラックウォルナット、クラロウォルナットで、南アメリカに生育しているのがオリーブウォルナットです。

オヴァンコール

オヴァンコール

マメ科。アフリカ、東南アジアなどでとれる広葉樹。ギター材としてはあまり聞かない名前の材だと思います。
粘りと暖かみのある音質。サウンドはマホガニーやローズウッドに似ているのが特徴。

ブビンガ

ブビンガ

マメ科。西アフリカの熱帯雨林でとれる広葉樹。最大クラスの大径木で、その大きさから日本の巨大な和太鼓の製作にも使われているのではないでしょうか。

エボニー

エボニー

カキノキ科。アフリカ・南アジア・東南アジ アなどに分布する広葉樹。黒檀とも呼ばれます。ギターでは主に指板、ブリッジなどに使用されます。ペグやブリッジピンなどの高級ギター用品やネックの強度を上げるためのロッドなどにも使われます。現在では希少な樹木とされています。

ジリコーテ

ジリコーテ

テイラーのギャラリーシリーズ“グレート・ホエール”のサイド・バックとして使われた木材。

シカモア

シカモア

カエデ科の落葉広葉樹。ホワイトシカモアはヨーロッパ中部、西アジアが原産と言われています。ストラディバリウスなどのバイオリンの裏甲板としても使用されました。そのほか高級家具などにも使用されます。サテンシカモアはアフリカに分布しています。
ギターでは主にエレアコなどのサイド・バック材に使用されます。トラ目が美しい材です。

ナトー

ナトー

アカテツ科の広葉樹で、東南アジアが原産です。建築材や家具材として使われますが、ギターではマホガニーの代替材として、比較的安価なモデルのサイド&バックやネックに使われます。