
フェンダーの「California(カリフォルニア)」シリーズは、ストラトキャスターでおなじみの6連ヘッドや、エレキギターでおなじみのカラーをまとったアコースティックギターです。
エレキはずっと弾いてきたけれど、アコギは持っていない。
弾き語りや曲作りのために一本ほしいけれど、何を選べばいいのか分からない。
そんなエレキ・ギタリストにとって、手に取るきっかけを作りやすいのがこのシリーズです。
今回は California シリーズの特徴とラインナップをチェックしましょう!
California シリーズは、2018年1月の Winter NAMM 2018 で発表されました。
フェンダーはこのシリーズを「ブランドの南カリフォルニアのルーツを祝う、鮮やかで目を引くカラーと、プレイヤーに優しい仕様を備えたライン」と説明しています。
大胆で冒険心あふれるプレイヤーのために進化を続け、時代を超えたオリジナリティー溢れる魅力を放ちながら、Fenderならではのエッセンスを備えたアコースティックシリーズです。
発表時のボディは Malibu(マリブ)/Newporter(ニューポーター)/Redondo(レドンド)の3種、グレードは California Classic/Special/Player の3つでした。
その後、2023年8月には California Vintage(King/Malibu/Palomino)が、2025年6月には California Standard シリーズが加わっています。
Malibu、Newporter、Redondo、King、Palomino といったモデル名は、どれも1960年代のフェンダーが実際に作っていたアコギの名前です。
フェンダーのアコギ作りが本格的に始まったのは1962年初め、リッケンバッカーにいたロジャー・ロスマイスル氏が加わってからです。
最初の4機種(King、Concert、Classic、Folk)は1963年夏に登場しました。
ボルトオンネック、ストラト型のヘッド、ネジ留めのピックガードと、アコギでありながらエレキの特徴をたっぷり持っていました。
さらにボディ内部には、1インチ径のアルミ棒を通す構造が採られていました(ごく初期を除く)。
その後は1964年12月に Palomino、1965年4月に Malibu と Newporter、1965年7月に12弦の Villager、1968年夏に Redondo が登場します。
現行の California Vintage の King/Malibu/Palomino は、この1960年代の実機からボディ形状を複製したものです。
いっぽう Player の Newporter/Malibu は、60年代のモデルを洗練させて現代的に進化させたもの、となっています。
エレキのメーカーが作る、エレキっぽいアコギ。
California シリーズは、60年代にフェンダーがやっていたことの現代版だといえます。
左から ストラト型(Newporter Playe)、ジャズマスター型(California Standard Redondo)、マスタング型(California Standard Monterey E)、Vintage のヘッド(Palomino Vintage)
California シリーズのギターは、6連ヘッドです。
形はモデルによって違い、Player、Redondo Mini、Sonoran Mini、Monterey Standard はストラト型、California Standard の Redondo と Redondo Classic はジャズマスター型、Monterey E はマスタング型です。
California Player は、ヘッドもボディと同色に塗られたマッチングヘッドで、フェンダー・エレキでやっていることをそのままアコギに持ち込んでいます。
6連ヘッドなら、チューニングの時にペグの位置で迷うことがありません。
エレキと同じ感覚で扱えるので、エレキ・ギタリストが持ち替えた時に違和感がありません。
ちなみにアコギでストラト型の6連ヘッドを採用するのは、ほかのメーカーではちょっと見当たりません。
見た目の上でも、これはフェンダーでなければ作れないアコギなのです。
Newporter Player(Tidepool)の背面
California Player のネックはスリムな “C” シェイプです。
これはフェンダーのエレキギターにインスパイアされたもので、薄いネック厚と丸みを帯びたネックエッジにより、優れた手触りを実現します。
一般にアコギはエレキよりネックが広く太く、弦高も高いので、押さえるのに力が要ります。
ですがこのネックなら、普段エレキを弾いている人でも違和感なく演奏できるでしょう。
上から Player II Stratocaster、California Standard Redondo
ここで、エレキの基準として Fender Player II Stratocaster と数字を並べてみましょう。
| モデル | ネックシェイプ | 指板R | ナット幅 | スケール |
|---|---|---|---|---|
| Player II Stratocaster | Modern “C” | 9.5″ | 42mm | 25.5″(648mm) |
| California Standard | “C” | 12″ | 42.86mm | 25.5″(648mm) |
| California Standard Redondo Mini | “C” | 9.5″ | 40.6mm | 22.75″(578mm) |
| California Player | スリム “C” | 15.75″ | 43mm | 24.1″〜25.6″ |
| California Vintage | Modern “V” | 16″ | 43mm | 25″〜25.5″ |
表:Player II Stratocaster と California シリーズのネックまわり
ナット幅は42.86mm〜43mmで、ストラトの42mmとの差は1mm前後です。
握った時の幅の違いは、それほど大きくないでしょう。
指板Rはストラトの9.5″に対し、California Standard は12″、California Player は15.75″と平らになっていきます。
Rの数字が小さいほど丸く、丸い指板はコードが楽、平らな指板は単音やチョーキングがやりやすくなっています。
California Player では単音フレーズが弾きやすいはずです。
California Standard Redondo Mini では、指板Rはストラトと同じ9.5″、ナット幅は40.6mmとストラトより狭くなっています。
握り心地だけならシリーズでいちばんエレキに近いモデルといえます。
フェンダーの出荷時の弦は、エレキの多くが .009-.042、アコギの多くが .012-.052 です。
ネックがエレキ寄りに作られていても、弦がこれだけ太くなるので、押さえる力はエレキより必要になります。
とくにアコギ弦は3弦が巻き弦なので、エレキと同じ感覚でチョーキングするのは難しいでしょう。
指の負担を減らしたいなら、スケールの短いモデルを選ぶのも手です。
スケールが短いほど弦の張りが弱く、押さえやすくなります。
左から Malibu(Malibu Player)、Newporter(Newporter Player)、Palomino(Palomino Vintage)、Monterey(Monterey E)、Redondo(Redondo Player)。大きさは揃えていません
California シリーズには、大きさの違うボディがそろっています。
ボディの大きさは、音の特性と抱え心地を大きく左右します。
一般的な傾向として、パーラーのような小さいボディは低音が控えめで高音が強調され、弦ごとの分離がよいので録音で他の楽器に埋もれませんが、単体で弾いた時の迫力はドレッドノートのような大きいボディに比べて弱くなります。
コンサートは澄んだ高音と明瞭な中域を持ち、フィンガースタイルや録音に向きます。
オーディトリアム/オーケストラは、音の飛びと温かさのバランスがよく抱えやすいボディです。
ストロークにもフィンガーピッキングにも、録音にも作曲にも向く、いわば万能型です。
ドレッドノートより低音の膨らみが抑えられ、輪郭のはっきりした音になります。
ドレッドノートは豊かな低音と迫力のある音が特徴で、コード・ストロークや弾き語り、アンサンブルで音量が必要な場面に活躍しますが、ボディが大きいのでしっかり弾く力が要ります。
ここからはグレードごとにラインナップを見ていきましょう。
左から Redondo(Natural)、Redondo CE(Fiesta Red)、Monterey E(3-Color Sunburst)、Redondo Mini(Black)。
2025年に登場した California Standard は、トップ、バック、サイドのすべてに合板を使うオールラミネート仕様です。
合板は単板ほど音が前に飛ばず、倍音や余韻も単板には及びません。
そのかわり丈夫で、湿度の変化に強く、乾燥による割れの心配も少なくて済みます。
部屋に出しっぱなしにして気軽に弾く、スタジオやライブに持ち出す、といった使い方で気をつかわずに済むのは合板の強みです。
はじめてのアコギで、まずは手入れのことを考えずに弾き始めたい人に向いています。
音の傾向は一般的に、スプルーストップは明るく歯切れのよい方向、サペリトップは温かく中域の豊かな方向になると考えられます。
アンプにつなぎたいなら、プリアンプとチューナーを内蔵する Redondo CE か Monterey E を選ぶことになります。
上から Newporter Player(Surf Green)、Malibu Player(Olympic White)、Redondo Player(Candy Apple Red)。
California Player は、フェンダーのエレキギターのアイコニックなデザインにインスパイアされたラインナップです。
シリーズの顔といえるグレードで、全モデルにピックアップが付いています。
トップにシトカスプルースの単板を使っているのが、Standard との大きな違いです。
シトカスプルースは歯切れがよく明瞭で、ダイナミックレンジの広いトップ材です。
軽いフィンガーピッキングから強いストロークまで、タッチの強弱が音によく反映されます。
しかも単板トップは、年月と弾き込みで鳴りと反応がよくなっていきます。
バック・サイドが合板でも、トップが単板ならこの変化は起こります。
バック・サイドのサペリは合板なので、ボディ全体としては湿度変化に強い作りです。
単板の鳴りと合板の扱いやすさを両立させた、いいとこ取りの構成といえます。
ピックアップの Fishman Flex は、アンダーサドル・ピエゾのみのシステムです。
アンダーサドル・ピエゾはハウリングに強く、大音量のバンド編成でも使いやすいタイプで、位相切替もハウリング対策として有効です。
上から Malibu Vintage(Aged Natural)、Palomino Vintage(Sienna Sunburst)、Limited Edition California Vintage King(Antigua)。
2023年に加わった California Vintage は、60年代のフェンダーアコースティックの起源をそのまま引き継ぎ、レトロなビジュアルを持ちながら、21世紀のパフォーマンスと豊かで洗練されたアコースティックトーンを備えたモデルです。
オール単板は、合板を使ったモデルより響きが豊かです。
バック・サイドのオバンコールはローズウッド的なアフリカ材で、帯域が広くバランスがよく、パンチのある中域から明瞭な高域まで出る材です。
シトカスプルースの明瞭さと合わせて、きらびやかでレンジの広い音が想像できます。
プリアンプの Presys VT Plus は、アンダーサドル・ピエゾとボディ内部のトランスデューサーをブレンドできます。
ボディ・トランスデューサーはトップの動きを拾うので、ピエゾだけの音よりウッディで、ボディを叩くようなパーカッシブな音も拾いやすくなります。
ネックシェイプは Player のスリム “C” と違って “V” です。
ヴィンテージのストラトや、V ネックのエレキに親しんでいる人なら、むしろ手になじむかもしれません。
ただし単板は割れやすいので、湿度管理には気をつかう必要があります。
ハードシェルケースが付くのはありがたいところです。
「最初のアコギだけれど、長く付き合える本格的な一本がほしい」という人の候補になります。
上から Malibu Special(Natural)、Redondo Special(Honey Burst)。
California Special は、フェンダーのエレキの象徴的な弾きやすさを、オール単板の構造と組み合わせたグレードです。
オクメはマホガニーに似た、温かな中低音に富む材です。
トップまで同じ材で統一しているので、スプルーストップのモデルより、温かく落ち着いた音にまとまると考えられます。
いっぽう指板のパーフェローは硬質で、立ち上がりが早くアタック感の強い材です。
温かい胴鳴りに、輪郭のはっきりしたアタックが乗る、という組み合わせになりそうです。
Redondo Classic(Aged Cognac Burst)
Redondo Classic は、ジャズマスター型ヘッドのオール単板モデルです。
マホガニーは基音が強く倍音が少ない、乾いたウッディな音の材です。
音に自然なコンプレッションがかかったようにまとまり、中域寄りの温かさがあります。
ドレッドノートのボディと合わせて、歌の伴奏でコードをかき鳴らすのにうってつけの一本でしょう。
プリアンプに Bass と Treble が付いているので、ライブでの音作りもしやすくなっています。
California Traditional Acoustics | Fender Acoustics | Fender
左から Redondo Mini(Sunburst)、Sonoran Mini(Natural Mahogany)、Monterey Standard(Black Top)、Kingman Bass(Shaded Edge Burst)。
小さなギターも充実しています。
ミニギターは小さいぶん低音が控えめです。
そのかわりスケールが短くて弦の張りが弱く、持ち運びも楽なので、ソファで弾く、旅行に持って行く、といった使い方に向いています。
ほかのアコギと比べて California シリーズの立ち位置を確かめておきましょう。
フェンダーには California シリーズ以外にも、エレキ弾きを意識したアコギがあります。
上から Dreadnought(Spruce)、Dreadnought(Natural/オールマホガニー)、Parlor(Spruce)
Highway Series(Dreadnought/Parlor)は、チェンバー加工したマホガニーのボディに単板トップを貼った、ボディ厚57mmの薄いアコギです。
ボルトオンのマホガニーネックに12″R指板、Narrow Tall フレットと、抱え心地も握り心地もエレキにぐっと寄せています。
Fender Highway Series|エレキの弾き心地のアコギ – エレキギター博士
上から Shadow Burst、Brushed Black
Acoustasonic Player Telecaster はさらにエレキ寄りで、ボディ厚44.45mmのテレキャスター型ホローボディに、アンダーサドル・ピエゾとマグネットの2つのピックアップを積んでいます。
Fender Acoustasonic Telecaster:アコギとエレキの融合 – エレキギター博士
Highway Series や Acoustasonic に比べると、California シリーズはヘッドやカラー、ネックでエレキらしさを出しながら、ボディはふつうのアコギの形を守っています。
抱えた時の大きさはアコギそのものですが、そのぶん生音でしっかり鳴るアコギらしさが期待できます。
「エレキっぽいアコギ」ではなく「エレキ弾きになじむアコギ」がほしいなら、California シリーズが合っています。
上から Black、Natural
CD-60S はフェンダーの Classic Design のドレッドノートです。
単板スプルーストップにマホガニー合板のバック・サイド、指板エッジを丸めた ‘Easy-to-Play’ ネック、12″R指板、ナット幅43mm、スケール25.3″という仕様で、ヘッドは伝統的なフェンダーのアコギの形です。
プリアンプはなく、エレアコ版の CD-60SCE には Fishman CD-1 が付きます。
ストラト型ヘッドやエレキ由来のカラーにひかれるなら California、見た目は王道でいいならCD-60S、という分かれ方になるでしょう。
最後に、目的別に候補を整理しておきます。
以上、フェンダーの California シリーズを見てきました。
エレキのメーカーならではの6連ヘッドとカラー、エレキ由来のネックを持ちながら、ボディはアコギの王道の形を守っている。
エレキ弾きが「アコギの世界」に入っていくための入り口として、よく考えられたシリーズです。
楽器店で見かけたら、まずはいつものストラトと同じつもりで手に取ってみてください。
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