フィンガー・スタイルのアルペジオ奏法[記事公開日]2026年2月13日
[最終更新日]2026年07月3日

指弾きでアルペジオを弾いてみたいけれど、右手のどの指でどの弦を弾けばいいのか分からない――そんな方に向けて、この記事では右手の運指ルール(PIMA)から、Cコードで弾く基本のアルペジオ、そしてスリーフィンガー(Travis picking)までを、順を追って解説します。
TAB譜が読めなくても分かるように、図と手順で進めていきましょう。

アルペジオ(分散和音)とは

アルペジオ(分散和音)は、コードの構成音を一音ずつ分散させて鳴らすギター奏法のひとつです。
全弦を一度にかき鳴らすストロークとは違い、和音をばらして順に響かせることで、やわらかく粒立ちのある音色を作れます。
ピックで弾く方法と、指で弾く方法(フィンガー・スタイル)の両方がありますが、この記事では指弾きのアルペジオを扱います。

アルペジオは、押さえている弦がひとつでも浮いていると、その音だけがきれいに鳴りません。
指弾きに入る前に、まずはコードをしっかり押さえてストロークする練習をやりましょう。
左手の押さえが安定してから右手の運指に進むと、遠回りに見えて結局は近道になります。

指弾きアルペジオの右手 ── 指の名称と担当弦(PIMA)

指弾きでは、右手のどの指でどの弦を弾くかがあらかじめ決まっています。
これを表す記号が「PIMA(ピマ)」です。
スペイン語の指の呼び名が由来で、p=pulgar(親指)、i=indice(人差し指)、m=medio(中指)、a=anular(薬指)を指します。

担当する弦は、親指(p)が6・5・4弦の低音弦、人差し指(i)が3弦、中指(m)が2弦、薬指(a)が1弦、というのが基本です。
低音側を親指がまとめて受け持ち、高音側の3本を人差し指から薬指へ順に割り当てる、と覚えると分かりやすいでしょう。

右手の指と担当弦(PIMA)の対応図

右手のフォームは、手首と手の甲の位置を動かさないのがコツです。
指の付け根から大きく振るのではなく、第1・第2関節を軽く曲げて、指先で弦をはじきます。
まずは下の表で、それぞれの指の担当を確認しておきましょう。

記号 語源(スペイン語) 担当弦(フォーフィンガー) 担当弦(スリーフィンガー)
p 親指 pulgar 6・5・4弦(低音弦) 5・4弦を交互に刻む
i 人差し指 indice 3弦 3弦
m 中指 medio 2弦 2弦(曲により1弦も)
a 薬指 anular 1弦 使わない

基本のアルペジオを弾いてみよう(フォーフィンガー)

まずは4本指を使う、基本のアルペジオから始めましょう。
コードはCを使います。
下のダイアグラムのとおり、5弦3フレット・4弦2フレット・2弦1フレットを押さえ、6弦は鳴らさない(ミュートする)形です。

Cコードの押さえ方(コードダイアグラム)

Cを押さえたら、p→i→m→a の順に、低音から高音へ一音ずつはじいていきます。
親指(p)で5弦(ルート音のド)、人差し指(i)で3弦(開放弦のソ)、中指(m)で2弦(1フレットのド)、薬指(a)で1弦(開放弦のミ)、という流れです。
TAB譜が読めない方は、下の図の右手の指(p・i・m・a)を左から順にたどって弾く、と考えれば大丈夫です。
下の譜例は、この p→i→m→a を2回くり返した形になっています。

Cコードの基本アルペジオ(p-i-m-a)のTAB譜

上昇の形に慣れたら、次は折り返すパターンです。
p→i→m→a と上ったあと、そのまま a で止めずに m→i と下りてくる、p-i-m-a-m-i の6音を1つのまとまりとしてくり返します。
上って下りる動きが加わることで、ぐっと伴奏らしい響きになります。

上昇下降アルペジオ(p-i-m-a-m-i)のTAB譜

最初は音の粒がそろわなかったり、隣の弦に指が触れて音が濁ったりしますが、これは後半の「上達のコツ」でまとめて対策します。
ここではゆっくり、順番どおり確実に弾くことだけを意識しましょう。

スリーフィンガー(Travis picking)に挑戦

スリーフィンガーとは ── アルペジオとの違い

スリーフィンガーは、親指・人差し指・中指の3本を使う指弾きの奏法です(薬指は使いません)。
日本で定着した呼び名で、源流をたどると、アメリカのカントリー歌手 Merle Travis(マール・トラヴィス)の親指弾きに由来する「Travis picking(トラヴィス・ピッキング)」に行き着きます。
トラヴィス自身は主に親指と人差し指を使い、これを親指・人差し指・中指の3本へ発展させたのが Chet Atkins(チェット・アトキンス)でした。
バンジョーのサムピッキングなどを源流のひとつとしながら、カントリーやフォーク、ロックのギターへと広まっていきます。
Chet Atkins や Paul Simon など、多くの名手がこの系統の奏法を用いています。

ここで大切なのは、スリーフィンガーは基本のアルペジオから「指を1本減らした簡単版」ではない、ということです。
肝になるのはオルタネイトベース(親指が低音弦を一定のリズムで交互に刻み続ける動き)で、その上に人差し指・中指で高音を差し込むことで、独特のリズムとグルーヴが生まれます。
和音を順に鳴らすアルペジオとは別系統の伴奏スタイルだと考えてください。
使う指の本数は少なくても、親指の刻みと高音を合わせる、という別種の難しさがあります。
焦らず、基本のアルペジオが安定してから取り組むと良いでしょう。

スリーフィンガーの基本パターン(オルタネイトベース)

コードは引き続きCで練習します。
まず主役になるのは親指です。親指が5弦3フレットと4弦2フレットを、タン・タン・タン・タンと交互に刻み続けます
この一定の低音がオルタネイトベースです。

その親指の刻みの合間に、中指(m)で2弦、人差し指(i)で3弦を差し込んでいきます。
下の図では、親指の音(5弦・4弦)を土台にして、高音がのっていく様子を確認できます。
習得のコツは、はじめに親指だけで5弦→4弦→5弦→4弦の往復を安定させてから、高音を足していくことです。

スリーフィンガー(Travis picking)基本パターンのTAB譜

応用:ロール/シンコペーション

基本形に慣れたら、リズムに変化をつけた応用パターンにも挑戦してみましょう。
下の図は、1拍目で親指の5弦3フレットと中指の2弦1フレットを同時にはじく(ピンチ)ところから始め、そのあと指を順に転がすフォワードロールへつなげる形です。

親指の裏拍に高音を先取りして差し込むと、「タン・タタ・タン」というシンコペーションの効いた、前へ進むようなノリが出ます。
ここまで来ると、ぐっと曲の伴奏らしくなります。
うまく転がらないうちは、まず1拍目のピンチと親指の交互ベースだけを取り出して、ゆっくりくり返すと良いでしょう。

スリーフィンガー応用パターン(シンコペーション)のTAB譜

上達のコツとつまずきポイント

指弾きは、速く弾くことよりも、まずリズムを安定させることが大切です。
クリック(メトロノーム)を使い、ゆっくりしたテンポで繰り返し練習して、身体に動きを覚え込ませましょう。
つまずきやすいポイントを、対策とあわせて挙げておきます。

  • 音の粒がそろわない:指ごとに音量がばらつくときは、テンポを落として、一音ずつ同じ強さで弾く意識を持ちましょう。
  • つい右手を見てしまう:弾くたびに手元を確認すると動きが不安定になります。
    指の担当(PIMA)を覚えて、なるべく見ずに弾けるようにしましょう。
  • 隣の弦に触れて音が濁る:指先を立て、第1・第2関節で弾くと、余計な弦に触れにくくなります。
  • 弾く弦を間違える:どの指が何弦かが曖昧なうちは、上の担当表に戻って確認しましょう。
    「ゆっくりなら正確に弾ける」速さまでテンポを落とすのが近道です。
  • スリーフィンガーで親指がもつれる:高音を足す前に、親指のオルタネイトベースだけを単独で安定させておきましょう。

まとめと次のステップ

指弾きのアルペジオは、右手の担当(PIMA)を覚える → Cコードで基本のアルペジオを1パターン弾く → スリーフィンガー(Travis picking)に広げる、という順で練習すると、無理なくステップアップできます。
まずはひとつのパターンをゆっくり確実に弾けるようにして、そこから曲へ応用していきましょう。

奏法 難易度 練習時間の目安 向いている場面
基本のアルペジオ(フォーフィンガー) 入門 数日〜1週間 バラードの弾き語り、指弾き入門
スリーフィンガー(Travis picking) 中級 2〜4週間 フォーク・カントリー調のリズミカルな伴奏、ソロギター

練習時間はあくまで目安です。
日数にこだわらず、「ゆっくりなら正確に弾ける」状態を作ることを優先しましょう。

コードの押さえ方やストロークにまだ不安が残る方は、先にそちらを固めておくと、指弾きの上達も早くなります。
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