アコースティックギター初心者向け入門講座

《初心者から一流のプロフェッショナルまで》Morris訪問インタビュー

Morris訪問インタビュー

巨大施設「モーリス松本工場」見学60分

マスタールシアー森中さんに、モーリスの工場を案内していただきました。松本工場はたいへん大きな施設で、全てを見せていただくのに1時間を要しました。

1) 商品流通センター編

商品流通センター

ギター検品

MORRIS(森中) 運び込まれたギターを箱から出して、一本残らず検品する部屋です。検品専門のスタッフが2名、午前中のみヘルプでさらにもう1名という体制ですが、修理/調整などの手直しをしながらなので、毎月600本くらいのペースで進行しています。

検品中

パフがけ

塗装面にキズを見つけた場合はここでバフがけを行ないます。検品が修了したものは、再び同じ箱に収めて出荷します。安価なギターだからといって、決して手は抜きません

2)「Hand Made Premium」編

morris-staff1

MORRIS(森中) 海外から入荷してきたものの中で特に修理が必要なものや、お客様から修理/調整を依頼されたものがここに運ばれます。ウチは工場なので、他社製品の修理まではお請けしておりません。

ギターブリッジ圧着

Performers Editionのギターの修理で、ブリッジを圧着しています。

ギターボディ成形

同じ建物内の反対側ではボディの成形をしています。

内輪取り付け

ボディサイドになる板材を曲げて組み合わせ、「内輪(ないりん)」というじゃばらを内側に貼付けます。

出荷前Morrisギター

同じものがたくさん並んでいますが、月ごとに出荷する分をまとめて作っています。

ボディ曲げ機械

サイド材はローズウッドでもマホガニーでも、同じ機械で曲げます。材に熱を加えてから圧力をかけるんですが、圧力のかけ方は手動と圧縮空気の二種類あります。マホガニーは柔らかいのでシワが寄りやすいところが難しいところなんですが、ローズウッドは堅いので割れやすくて、ちがった難しさがあります。Sシリーズのベネティアン・カッタウェイは一続きのサイド板を複雑に曲げるので、とても神経を使います。先端が鋭角なフローレンタイン・カッタウェイは頂点部分で分割できるため、比較的加工しやすい構造です。

ギザギザライン

ギザギザが刻んであるライニングは、愛知県の業者からまとめて仕入れています。

材木保管庫

材木の保管庫です。空気が通るように、板材同士の間には棒材を挟んでいます。

Morris工場

Morris工場2

この建物は、機械加工専用です。奥までいくつもの工作機械が立ち並んでいますね。NCルーターもありますが、モーリスではヘッドの形を切り出すのに使用しています。均一に仕上げる精度を求めているというよりは、音に比較的関係がない工程で人間の仕事を減らすのが目的です。ペグを収める穴を6つ一気に空けるドリルもあります。

ブレーシングを貼付けるのにも専用の機械を使います。電子レンジの容量で高周波をかけ、熱を均等にかけて一気に固めてしまいます。一台あたり15分ほどで仕上がりますが、それから手作業で小さなブレーシングを貼付けて完成です。

Morris工場3

高度成長期の名残ですが、工場内はかなり広いですね。職人一人一人に作業用のテーブルがあり、それぞれの作業をしています。

塗装乾燥部屋

塗装を乾燥させるための部屋ですが、途中まで進めたものを一時的に保管するスペースでもあります。

研磨

ここは最終の研磨を行なうところです。バフがけを行なう機械がずらりと並んでいますね。

ギターパーツ類

ここではパーツの取り付け、調整、検品を行なっています。今はS-106のナットを削っているところですね。スピーカがあるのはエレアコのチェック用です。このセクションを通過したものが、いよいよ出荷されます。

3)「Luthier Made Premium」編

木材置き場

マダガスカル・ローず、ハカランダ

MORRIS(森中) 木材置き場は機械加工工場の一角にあり、Hand Madeとは区別されています。

マダガスカルローズウッド

このマダガスカルローズウッドなんかは、面白みのある木目になっていると思います。マダガスカル産は赤っぽくなる傾向にありますね。

ルシアーメイド作業場

ルシアーメイド:作業場2

作業場は最終セットアップを行なう小部屋と、通常の作業全般を行なう大部屋の二つです。道具は全て定位置が決まっていて、壁一面を埋めています。

小刀の装飾

この小刀の装飾は、遊びで入れてみたものです。

ルシアーメイドギター:模様

このような模様の入った線は、専門の業者から取り寄せています。印刷したシートではなく、着色した木材を束ねて作った「金太郎あめの薄切り」のようなものです。

工場にはブレーシングを貼付ける機械がありましたが、こちらで作るギターの場合は寸法が合致しないので、昔ながらの板バネを使用する工法をとっています。基本的には一定の圧力がかかるようにするんですが、場合によっては板バネの調節で圧力の強弱を調節することができます。圧力が弱すぎるとうまく貼り付かないんですが、強すぎるとトップ材を痛めてしまいます。

指板材

指板材だけは他の木材とちがってここに保管しています

ロゴマークの埋め込み

ヘッドに埋め込むロゴマークは割れやすいため、ハンドルーターで型抜きした木枠に収納します。ロゴマークはメイプル材が多いですが、ウォルナットなど他の木材でもテストしています。

フレイムメイプルの踏み台

これは、無垢のフレイムメイプルを使用したぜいたくな踏み台(非売品)です。メーカーだからこそできる贅沢中の贅沢ですね。

楽器フェア出品予定のギターを触らせていただきました!!

SC-171

SC-171

── Sシリーズの派生モデルで、若干ボディの薄いタイプですね。立体的な作りのブリッジといい、各所の上品な装飾といい、たいへん美しいギターです!

SC-171サウンドホール

SC-171:ボディ

── バインディングは黒白黒そして付き板という4層を成していますね。Sシリーズのネックは確かに広くて薄くて平らで、クラシックギターの影響を強く感じます。大変澄んでいてまとまりのある、とても美しい音色なんですが、やはり「モーリスの音」というものを意識して作るんでしょうか?

SC-171バック

MORRIS(森中) モーリスのギターを作っているつもりではありますが、モーリスの音という意識があるわけではありません。しかしここで作っているギターの設計や音色が「Hand Made Premium」や「Performer Edition」に反映されます。このギターに関しては、家紋や武士が背負う旗に見られるデザインを参考にした「和風」に、西ヨーロッパの「ケルト」の風味を混ぜたイメージです。指板にはハカランダを使用しています。

SJ-727Baritone

SJ-727Baritone

MORRIS(森中) 7弦のバリトンギターで、想定しているチューニングは、A,D,G,C,E,A,Dです。通常のギターを5度下げたのが従来のバリトンギターなんですが、これに高音弦を1本追加したものです。弦はエリクサーの8弦ギター用を流用しています。

SJ-727Baritone:サウンドホール

── これは私の知らない世界です!確かにローA弦を積極的に使いやすいチューニングで、低い音がズンズン響きますね。弦長が確保されているためか弦の張りが良く、一つの楽器として完成されている印象です。しかしコレを弾きこなそうと思ったら、ちょっと研究が必要ですね。

SC-171 Bevel

SC-171 Bevel

SC-171 Bevel:サウンドホール

── コレは抱えた瞬間に感動できます!アコギのボディに「優しさ」を感じる未体験の抱え心地です。フィット感といい、右手のラクさ加減といい、虜になってしまいます!これ自体はSのネックではなくスタンダードなクセのないグリップになっていて、音色も耳に優しい丸くて柔らかい印象です。これは確実に指で弾きたいです。

SC-171 Bevelバック

SC-171 Bevel:コンター

MORRIS(鈴木) 「Hand Made Premium」の価格帯でリリースしたくて営業サイドからも検討をお願いしているんですが、なにしろ作るのが大変なので難しいところです。いまのところ販売価格は¥70~80万くらいで、これほどのギターだと置いてくれる販売店さんもそれほど多くありません。しかし今年の楽器フェアに出展するので、ぜひ会場でこの弾き心地を味わってほしいです。

── ありがとうございました。


ナビに従って辿り着いた場所には「MORRIS」のロゴを冠する巨大な建物があり、私たちを驚かせました。とてつもなく大きな工場だと思っていた建物は商品配送センターだったのですが、親切な所長さんに事務所まで案内して頂きました。事務所の扉には「歓迎 アコースティックギター博士様」と張り紙されており、再びびっくりしました。玄関をくぐると、人懐っこい印象の支配人さんと事務員さんに温かく迎えていただきました。こんなに温かな支配人さんがいる工場だからこそ、多くのギタリストの心をつかむ楽器が作られるのではないだろうかと感じました。

実際に目の当たりにしたモーリスは、安価なモデルにも一切の手を抜かず、国産モデルは工程を効率化させて価格を抑えつつも品質が高く、ルシアーの作品は新しさや面白さをとことん追求する、「攻め」に徹したブランドでした。モーリスが提唱した「ソロギター専用機」は、デビューから15年の時を経た今や競合するブランドも参入するほどに普及しています。「老舗」の名に居座ることなく、これからまたどんな新しいギターが生まれるのか、とても楽しみにさせてくれるブランドでした。

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