アコースティックギター初心者向け入門講座

Taylor(テイラー)ギターの構造的特徴

Taylor(テイラー)のアコースティックギター

ギターメーカーの売り文句に「熟練した職人による手作業」というものがありますが、テイラーの売りはその逆、「コンピュータ制御による高い加工精度」にあり、この点で高く評価されています。もちろん製造には人の手が多く介在しますが、高い精度が求められる加工は最先端のマシンで自動化しています。テイラーが製造にマシンを利用するのは生産性を高めるためではなく精度を上げるためで、中には人間の手では実現が不可能だと思われる加工まであります。ここではそんな高精度の作業で作られるテイラーギターの特徴を、特にネックとピックアップシステムに注目して紹介していきます。


Jason Mraz – “Love Someone” (Live @ Mraz Organics’ Avocado Ranch)

Taylorギターのネック構造

「弾きにくいギターは弾けないから音も良くならない。
演奏しやすいネックがなければ、望ましい音にはできない。」
マスタービルダーのアンディ・パワーズ氏はこう語ります。弾きやすいネック、弾きやすい調整にどう持っていくのか、テイラーのネックには多くの工夫が施されています。

NT Neck(ニューテクノロジー・ネック)

Taylor Guitar NT Neck引用 www.taylorguitars.com

テイラー社は全モデルに対し「NTネック・ジョイント」を採用しています。これは新品の段階からボディとネックの間に木製(サペリ製)のスペーサーを挟み、ボディ内部からネジで固定するジョイント法です。ギター製作ではあまり良く思われていませんが、工業生産の世界ではスペーサーはポジティブなイメージで積極的に使われます。スペーサーを正確に使うことで、微妙な調整を更に追い込んでいくことが可能になるからです。このスペーサーを精密に加工する事で、プレイスタイルやプレイアビリティに応じてネックの仕込み角度を僅かずつ調整することができるのがNTネックの最大の特徴です。

ギターの構造上非常に高い精度が求められる箇所であり、また形状が複雑になりますので、ジョイント部とスペーサーはCNCルータによって正確に削り出されます。

ネック本体

Taylor Guitar NT Neck2

一般的なギターのネック本体は14フレットまでの長さですが、テイラーは指板の先までネック本体が伸びています。サウンドホールからネックの根元を覗き込むと、NTネックのジョイント部分に加えて指板の端までネックが伸びていることが確認できますから、テイラーの構造が如何に独特かが理解できます。

一般のギターの場合は、ネック材の端である14フレットあたりからネックが起き上がってくることが珍しくありません。テイラーのネックはこの部分をネックの延長で補強しているので、状態が安定しやすく安心ができます。またネック本体が指板と一体化しているため、低く均一な弦高にする精密なセッティングがしやすくなっています。

ネックグリップも、コンピューター制御で成形されます。木材は刃物との摩擦で熱を帯びて変形するので、いかに正確に加工できるマシンでも急いで削ると木材の発熱で精度を損なってしまいます。発熱を抑えるため、木材の加工はのんびりとしたペースで行ないます。この作業は全ラインナップ共通で、どのギターも精度を上げるためにゆっくり削られます。

ヘッドの接合

taylor-scarf-joint引用 www.acousticguitarforum.com

「スカーフジョイント」は他のメーカーでも採用されているヘッドのジョイント法で、一般的にはネック先端を斜めにカットした部分でヘッドを接合します。テイラーのスカーフジョイントは接合部分をスカーフが風でたなびくかのような立体的な曲面にしていますが、曲面同士が隙間無く接合できるという人間離れした加工精度は、やはりコンピュータ制御のマシンがあったればこそです。

サウンドを考慮したシンプルなトラスロッド

メンテナンス性を重視しているテイラーらしくないように思えますが、テイラーのギターに仕込まれるトラスロッドは伝統的なスタイルのもので、機能は起き上がってきたネックを真っすぐに直す「順ぞり矯正」のみです。テイラーではしっかりとシーズニングさせた動きの少ない木材が使われているので、弦の引っぱりに逆らってまで逆ぞりするようなことはほぼありません。両効きのトラスロッドはロッド本体の体積と重量が増し、サウンドに影響があるためテイラーでは採用されていません。

機械打ちのフレット

テイラーではフレット打ちもマシンの仕事で、圧力をかけて押し込まれます。ハンマーで打ち込むと、その衝撃でネックの状態が変化してしまう懸念があるという考えからです。マシンがフレットを押し込む圧力に負けないために、非常に硬いことで知られるエボニーが指板にセレクトされます。

Taylorギターの塗装

UV フィニッシュ

UVフィニッシュは、紫外線により塗料をすみやかに硬化させる技術です。これにより塗膜をできるだけ薄くすることができ、楽器のトーンを邪魔しにくくなるほか、作業時間や仕上がりまでの時間を短縮することができ、生産性を上げる事ができるようになります。塗膜の厚さは6ミル(=0.006インチ=0.1524mm)が基本で、800シリーズなど高級グレードでは3.5ミル(=0.0035インチ≒0.089mm)になっています。

また安定性が高く、変色してしまったり溶けてしまったりという変化が起きにくいようになっています。経年変化で色合いが移りゆくのも楽器の楽しみという考えのユーザーは多いのですが、「数年や数十年で退色してしまうような塗装では恥ずかしい」というのが多くのメーカーの考えです。

エクスプレッションシステム・ピックアップ

Taylorエクスプレッションシステム・ピックアップ

「NTネック」が可能にしたもうひとつの特徴的な構造に、テイラー独自の「エクスプレッションシステム(ES)」があります。ESではブリッジ側で弦の振動を直接拾うピエゾピックアップ(テイラーでは「センサー」と言います)に加え、ボディ/ネックのジョイント部分にネックの鳴りを狙うピエゾピックアップが仕込まれます。ジョイント内部にピエゾを仕込むのは一般的なセットネックのギターではほぼ不可能で、ボルトオンジョイントのNYネックだからこそできた事です。弦の鳴りとネックの鳴りをミックスすることで、ライン録りでもエレアコ臭くない、自然でバランスのとれたアコースティックトーンを得ることができます。


Ben Lapps – Phunkdified
イベントの合間の演奏ですが、15歳だという彼のサウンドは会場を魅了しました。

さらに進化した「エクスプレッションシステム2」

Taylor ES2

ブリッジ側のピエゾを改良した「エクスプレッションシステム2(ES2)」のサウンドに対し、テイラー社は「ピエゾ・ピックアップがどのような音だったのか忘れてほしい」とまで言い切りました。ES2ではダイナミックレンジ(強弱の幅)がこれまで以上に広がり、奥行きのあるトーンが得られるようになります。

弦を受け止めるサドルは縦に振動するものと考えられており、一般的にピエゾピックアップはサドルの真下に設置されます。テイラー社は研究により、サドルはむしろ前後に振動しているということを突き止め、サドルに横から接するピエゾピックアップを開発しました。ES2ではブリッジに3つのピエゾが埋め込まれ、サドルの前後の振動をピックアップします。またそれぞれの感度をネジで調節することが出来ます。

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